簪の段 三
追い出される形になった流は店に来、「花さん、すみませんでした」と謝り変わろうとする。
「いえ、私も言わなかったので」
「変わりますね。しかし…時間を変えても現れましたか…。
先程少し聞いたのですが、遊び人のような男だと…」
「はい…サイホウさんにそう」
「少し早めましょうかね…、私の外仕事なら、ただ竹を斬れば良いだけなので、花さんには丁度良いかもしれません」
「…流さん」
「はい?」
「…流さんは、あのご婦人とは…」
やはり、止まらず。
とても不思議そうな表情を浮かべた流に「いえ、なんでも…!」と、花は俯く。
「ご婦人…」
「あぁ、花には先程言うたんやけど、」
話し途中、真庭が装身具屋と話をつけたらしい。流と花が自然と入れ替わろうとしたが、真庭が権平に「花を連れてこい」と言うのを聞いた流が「店主、いや…」と間に入ろうとしてしまった。
「すみません私が少々…縁側で話し込んでしまって」
「お前は良いんだ、大事な取引だから」
「……店主、おいらもそれは少々と…」
「…じゃあ佐助、今夜はお前が立て」
「はい」
「花、」
「はい…」と怯えた花を見た流はさり気なく「いえ、私が聞きます」と…たどたどしいがいつもより遥かに男らしいと感じた。
「…私の責任です」
「口答えするのか?そんなに暇ならお前は今から装身具で話を詰めてこい」
「……お言葉でありましょうが、真庭店主」
流石にこの厄介には入らなければなるまいと、権平ですら間に入った。
「…なんだ?
そもそも貴様が」
「左様です。そんでも聞いてくださるんでしたら、流が装身具屋に行くんはそうとしても、花に関してはただ、不届き者から無理矢理簪を押し付けられただけの事です。業務も滞っておりますし、花には作業をして頂きとう思います」
「そうか。貴様が来るか」
…そう言われては仕方あるまいと思う間もなく蹴飛ばされるのに「て、店主っ!」と流が止めに入るのも払われ、尻もちをついていた。
「…お前は今からあっちに行け」
「店主!ごめんなさい私がこれをお客さんから」
「花さんはこれを押し付けられ」
権平が流れと花に首を振り頷けば、二人とも少し戸惑ったので「早く!」と権平が念を押す。
どうとも出来ない若者二人に見せつけるように…はぁ、と息を吐いた真庭は、裏口に置かれている鎌を持ち出す。
「ま、待ってください店主様、私が、私が…」
「…花、」
去れと言う間もない、躊躇いもない真庭は権平の半身を足蹴にし自由を奪い鎌を足を掴んでサッと一本…傷を入れた。
「ひっ、」と怯える花を無理矢理、引き摺るように取り敢えず店に戻した流は、悔しそうに歯を食いし縛っているのがわかる。
意図を組み裏口を閉めてくれた。
花の癪り声が聞こえ権平の方は声を潜め二本、三本と切られて終わる。
這い蹲る権平を見下ろした真庭は長屋に戻っていった。
それを感じた花は腰を抜かしつつ裏口を開け…恐怖で泣いて動けない花の背を流が撫でていたが、小声で「…サイホウさんっ、」と小声で言い、寄ってきた。
…入口側で、慌てたように店を閉める佐助が見える。
「…肩を、貸してくれ。
縫えば大丈夫…酒も佐助から…」
腰を抜かしていた花だったが、慌てて裏口にさっと酒を取りに行く。
わての足は、こういう経緯でこうなりました。
ただ、それだけです。あとは、朧ろ自ら足を縫った、しかし上手い処置でもなかったようで、今に至ります。自業自得やったんやろうと思います。
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