無色透明色彩


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 所には、所長の前に4人の男が座っている。一斉に視線を浴びた。

 髭面の難いが良い男…旧組対だろう、その隣には若いスーツの…恐らく現場担当ではない…諜報課等の事務っぽい男。
 そして、如何にも刑事臭がする目付きの悪い男と、それにくっ付いて来た、という雰囲気の二人。

 警察庁の組対サイバー課を使ったし、旧組対が出てくるのは…いや、正直どうかと出方は見ていたところだが、魂胆はまぁまぁ、互い様。

 意地はあれど、それで解決するなら安い。

 消えた裁判記録が引っ掛かったと考えるのが自然だろうけど…これに関してはこちらはわからない…いや、結局ウチの案件ではないが、組対も引っ掛かったのなら…予想通りの規模なのかもしれない。

 実態のないものを追っているのは皆同じ。流石ブラザー。どんな形でもトリガーになればいいのだ。

「捜査官の海江田と」
「坂下と申します」

 所長がうんと頷いたので、安慈と坂下はその隣に座る。

 髭面の難いが良い男がふっと笑い「はじめまして。警視庁組織犯罪対策部薬銃課の馬込うまごめと申します」と名乗る。

 馬込は隣の若い…かもしれないシャキッとした男を指し「諜報部の真島ましまと…」と紹介しつつ残りを見つめる。

 そう、気になるのはそっち。

 馬込が隣の隣…どう考えても刑事臭がする目つきの悪い男を指し「警視庁刑事部捜査一課の久部くべ警部と」バリバリの新人っぽい男を指し「長谷川はせがわ警部です」と紹介された。

 …これは…。

「早速ですが齋藤一海と美香夫妻について…」

 軽く頭を下げ先頭を切ったのは、捜一の久部だった。

「美香夫人については少し前に自宅の寝室で、“麻薬中毒による心筋梗塞による死亡”と方がついたというのは、お宅らもご存じかと思いますが」
「はい。提供した通りですが」
「こちらはそれから、行方不明になった夫、一海の身柄を追っていましたが…。
 昨日、福島の山奥で右足が発見されました」

 …福島か。

「まだ検死…も何もないのですが現地では捜査が進められています。
 ホトケが出たなら一課としては動かねばならないし、」

 …なるほど。

「組対のサイバー課に投げた海江田さんのパソコンの履歴も見させて頂きまして」

 やはり掛かったか。

 透花が日本にやってきた頃には既に日本人だった…遅くとも特別養子縁組時にはそうなっていて、それを了承したのは“日本”ということになる。

 撒いたところで微妙だったが、芽は出たようだ。

「そうです。是非とも捜査協力をお願い致したく…」
「…本日、海江田と坂下が捜査対象としていたその団地の2階下、202へ向かう予定でしたが…それではそちらも急ぎたいところですよね?」
「本星とバイヤーが潜伏しているのが昨日わかりました。恐らくそいつが美香に麻薬を売って」
「こちらからも。
 海江田さんが漁った…失礼、調べた裁判記録や渡航、密輸出の件に関しましても…情報があればと…流石にあれだけでは少々…ここまで繋げるのにも苦労しましたよ」

 ふさっと、馬込はまさしく海江田パソコンから消えていたデータのコピーを渡してきた。

 ふと所長を見るが、所長はこれを実は知っている。
 しかし顔色も変えずその書類を手にし「はぁ、多少なりとも貢献出来たようで何よりです」と言った。

「こちらは警察庁から、データが消えたと聞いていたので助かります」
「その点は申し訳ありませんでした。
 昔ながらに…印刷を掛けデバックをしようとしたらクラックされたと、サイバーから事情を聞きまして…。どうやらパソコン本体にウイルスがあったようで」

 …こちらに原本データを転送できたのはそのおかげだ。
 ファイルとしてデスクトップにわかりやすく鍵を掛け残しておいた。鍵を開け手を加えようとしたらまず、暗証番号が出る。
 わかるわけながいから、頭文字が違う時点で発動するよう「逆張り」をしておいた。案の定、そのデータ含めパソコンはデリートした。

 保存しっぱなしにしたUSBをわざわざぶっ刺したまま提出したのは、そのためだった。
 USBが先に帰ってきたのはつまり、警察庁から警視庁へ“一部データを印刷をした状態”で渡った、ということになる。

「…ということは…。
 薬銃も一課も、青木家については確証がない、という事ですかね?」
「はい。現状そちらが一番知っているかと」
「では、我々は青木家へ向かいます」

 …恐らく現場保存くらいしか、やることはない。
 いくらでも邪推が出来るからこそ、着々と進め現状証拠から推理し立証まで持ち込む、が、基本だろうに…こちらの特権を使いっ走りにされた気分ではあるが、まぁ、自分たちも随分使い走ったなと、少し反省する。

「こちらもこちらとて確証…全てを繋げるにはこじつけなんです。
 しかしどうせなら、薬銃課には青木忠恭の裁判記録…これを、こんな紙切れではなく、取り寄せて欲しい。USBにはありましたよね?
 民事か刑事かというところからでしょうか」
「……え?」
「こちらの聴取で青木唯三郎、忠恭の父であり透花の…まぁ、義祖父…としときます。その方が「死亡手当を病院から受け取った」と証言しています。我々はこの件については深追い出来ないでしょうが、組対なら国犯だってあるし…ねぇ?」

 それぞれ役割がある。
 だからこそ慎重でなければならないが…プロファイリングが間に合っていない。
 その鍵が青木忠恭にあるのは確かだが…下手を撃てば弾詰まジャムる。

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