無色透明色彩


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「あ、センセー、この人サトイにPTSD級のどエロいクソみてーなスナッフフィルム見せてイジメました〜」
「寛解は完治じゃないんだよこのファッキンサディストが!だから使えないんだよオマエ!」
「は…はぁぁ!?なんだよそれぇ!」

 引っ掛かったなと部屋から出れば、並木がつい、というように「ふはっ、」と笑ったので、「っはははウケるよな!」と笑い飛ばしてやった、聞こえるように。

「〜っパネェ!あの闇医者マジパネェ!流石っすよカイチョ…っは、ははは!生贄作戦っすね…っ!は、腹痛っ〜」
「見たかあのクソメガネ。べ、ベッドバディだってよ!笑えるよな!」
「まーでも会長、あんたやらかしそうなんで言いますよ?無茶しねーでくださいね、マジで」
「まぁ、日陰からならお天道様見れるようになったと思って」

 さて。
 まだまだやることはある。

「一度事務所に戻るぞ並木」
「え、あ、はい…でも」
「あー大丈夫大丈夫。シャブはお前らに任せた。こっちは別件がある。ちゃーんとデスクワークだ」
「……えぇっ、」
「いーからいーから」

 並木は多摩より硬くない分、扱い易い。
 疑問顔の並木が車を走らせるので仕方なく「お前はあの…なんだっけ風俗の女をどーにかしろ」と仕事を与えておいた。

「あ、」
「あ、じゃねぇよ。あの女もうキツイだろ、金のアテもあるしさっさと切れ。他でバレたらそれこそパクられんぞお前」
「……確かに、始めは強姦次に中絶、さらに中絶中絶で金引っ張ってますからね…」
「男いたよなあいつ」
「はい」
「あながちホス狂いじゃねーの?借入キツくなった頃に来るよなぁ。最後飛ばれないよう慎重に」
「はい、わかりました」

 この様子だと、なんとなくは掴んでいそうだ。どうせこのパターンはホストに騙されヒモに近い状態で飼っているんだろう。

「お前も無理すんなよ。ヤクとかやってそうなら飛ばれる前に回収な。あとは恐喝、詐欺であの女が持っていかれたら面倒臭ぇ」
「…確かに…。
 どーなんでしょ、裁判って」
「やってるわけねーだろこんな短期間で!あの女3ヶ月で何回来てんだよ!
 まぁ、多分絞りカスにしてからおっさんを捨ててるんだろうが、そうなると今度は妻だのなんだの資産家に当たったら…それこそ貸さねーかんな」
「なるほど…」
「…多分あの女そろそろ自分が茶引きだってわかって貯めてんだよ、いや、貯めてたらマシだな、どーせ男で溶かしてやがるよ」
「…一応住所は洗ってあります。そうっすね…やらかされる前に押さえますわ」
「よろしく。そろそろトゴでいーわ、良い加減。勿論契約書には小さく書いとけな?どーせ中身読まねぇだろうから」
「はい」

 …あのパケ用偽ロレックス…柳瀬と高田でやらせるのか…でもきっと今日はこの感じ、また現場仕事になりそうだな…と頭を回す。
 いや、パケックスの手伝いにまわ…皆許さないだろうな…。あのマトリ案件はほぼ単独でやるか…。

 事務所に着くまで考えた。
 着けば律儀にドアの前で高田と柳瀬と多摩が言われた通りマスクと雨合羽姿でパケックスを丁寧に処理している。

「…会長っ!」
「うっす。悪いな多摩。柳瀬と高田もご苦労さん、いま何個?」
「…89っす」

 箱を見れば…まだ1箱目の…2/3はありそうか。
 心配そうに見る部下たちに「イカレ闇医者に一発キメられてきた」と言っておく。

「平良を生贄にしてきた。
 悪ぃ、多摩、そんなわけでこっち手伝って欲し…」

 ふいに見えたレシート裏の正の字にふっと笑ってしまった。

「っははは!いいなお前らその調子その調子!」
「…会長、機嫌いいっすね…」
「んー?まぁ並木に聞いてくれよマジ面白かったから。つっても並木にはあの風俗嬢に取り掛かって貰うんだが。
 悪いな、2人で今日中に郵便局まで行けそうか?」
「あー、なんか慣れてきましたわ…」
「…最早これかき集めて売りたいくらいっすよ…多摩さんから聞いたらインフルエンサーとの偽コラボなんっすよね?」
「あ、なるほど…。
 じゃ、多摩借りるわ。適度に休めよ。あとやんなよな」

 へい、と聞き多摩と並木と事務所に戻るついで、「玄関でいーから、あとで掃除すりゃ」と中に入れてやる。
 勿論躊躇うのだが「てめーらがそれやって更にアッパラパーになったら困るんだわ」と説得した。

 入れれば自然と多摩が窓を開けて換気。少し申し訳ない。

「…悪ぃな、マジで」
「いや、謝らないでくださいよ」
「そうですよ。会長のせいじゃ」
「ないけどさ………」

 考えそうになれば多摩が「これです」とパソコンを開く。

 …良い部下でよかった。
 自分の弱点だ、しかも、これで反旗を翻しても自然な殺し方なのにな。

 覚えているのは母親が蒸発する前だ。何か…飲み物を飲んだ、それは誤飲だったらしい。
 身体にゾワゾワと変な感覚がした。それを見てから母親は出て行ったのだ。今思えば母はよくビールだかなんだか、缶に錠剤を入れて飲んでいた。

 逃げた後に来たヤクザから聞いた話では、ガキには早い、とだけ。
 しかし酒は飲める。実際に盃すら強い日本酒だったから。この世界にいて時間が経った頃、一度薬物関連で抗争があった。その時どうやら3日ほど意識混濁に陥ったらしい。

 それで答え合わせが出来た。自分は薬物が合わない体質だと。

「会長、これが青木透花の…いや、青木忠恭の妻、紀子の投稿です」

 見てみた。
 なるほど?あたかもロレックスだしデザインもこれだが…。

「…リンク切れってことはこれ、削除か案件が流れたか、だよな?」
「ええ。ダークウェブに落ちてました。恐らくサーフェイスと同時です」
「…あ、ホントだ、商品名が最早“meth”って…海外向けか、こっちは」

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