無色透明色彩


18


 人は見る環境により姿が変わる…。

 いま目の前にいる青い目の子は…確かに天使のようだ…それが病院にいるとはなんとも言えないな…と感じる。

 透花ちゃん…は、イヤホンを返しその綺麗な目で何かを訴えかけているように感じた。なんとなく、羨望だとか、そんな悪いものじゃないんだろうなと、つい綻ぶけれど。
 伝わらないもどかしさに少し俯き、彼は慧を指差し首を傾げる仕草を見せた。

 ……めっちゃ可愛い〜〜!

「うん、そう。あんまり上手くないけど」

 首と手を振る彼につい「ありがと」とニヤケてしまうしついつい頭まで撫でてしまうし手を握ってしまうけど、まぁ、多分スキンシップはあった方がいい。

 握った手を見てあ、と気付いた。大変、自分の薬の時間かも…震えているのに少し、不安そうな表情をさせてしまった。

「あー、心配しないで!たまにあるんだ。殆ど治ったけど。握力もこっちの方が利き手なのにね、弱いんだ」
「……」

 腕に銃を突き付ける…というより「クスリ?」のジェスチャーをしてくるのが…なんというか凄い…打ち解けてくれたのだろか…?それとも不思議な子?

「あ、うん…。
 透花ちゃんと同じ……かな?多分。ガツッと打たれちゃいまして……」

 俯いて…手の震えを取るかのように握ってくれる透花は「…こう、なんだ…」と、大変だ不安を煽ってしまった。
 天使ちゃん、難しい!

「いやまぁ確かに、寛解って完全じゃないから…」

 首を振り「僕が…」と、始めより声は出るようになったらしい。

「ん?」
「……僕、わかって、なかっ、た。
 変なの、たくさん、あげちゃった、んです」
「あげちゃった?」
「…母の、仕事を、手伝って…。お金、ないと、お父さんが、帰って来ないって……で、も……悪い事、じゃないか、って…。
 僕のは……貴方と、違う。自分が悪いって、」
「………悪かったら、なんなの?」
「…何も、」
「うん。
 だけど、俺は君が…全部悪いと思えないよ。君はちゃんと、わかったのにね…」

 …周りの人間はどうだったんだろう。
 というか。

「お母さんやお父さん…おじいちゃんの為にこうなったなら…良くはなくても…その大切さを、今だけで良い、それを自分に向けてあげることは出来ない?
 …なんて、俺もなんだけどね」

 …捨て身って…。
 酷く自分勝手に見えてしまうんだな。人の振り見て我が振り直せ、なのかもしれないなら。

「…いま君を見て、勝手だと思ったけど…気持ち、わかるかも。俺も似てる。自分は明日でいいやって思っちゃうけど…。
 あぁ、愚痴ね?
 明日があるとは限らないから、やっぱりまずは自分から、なんだろうね」
「……そう、じゃなくて、」

 ゆっくり語ろうとする透花に合わせる。
 彼は、「僕は人に酷いことをしてきたんだ」と。

 あの衝撃映像が浮かぶ。少年だった彼は…大人の玩具にされていた。痛くて、苦しくて仕方なかっただろうに、それが一切今出てこないのは…。

 健忘?
 だとしたらかなり深刻だ。大人は、刺激を求めどんどん虐めを加速していくけれど、子供が大人の体力に勝てるわけがなく…。

 …そういえば、前に誠一せいいちが、“アドレノクロム”という麻薬について話していた。簡単に言えば「酸化したアドレナリン」らしい…精製方法は“子供の恐怖”。都市伝説や陰謀論みたいなものだと言っていたけど…。

 自分が見た何本かのスナッフ。

 彼がここに来てすぐ発した言葉「指」は……指を落とされたと錯覚したのだろう。
 実際は目隠し状態で拘束され、指に水を垂らしそこに刃物をあてるだけ。
 …見ている側はわかる。脳が錯覚し痛みまで感じたのだろうと…その中であれだけ陵辱をされていた…他にもあったが、思い出したくもない、こちらがトラウマになりそうだ。

 透花のそれは…実験か何かだったのだろうか?
 でも、まぁ…。

「僕は、たくさん…」
「…人にした事は確かに返ってくる…他の人も同じだよ?
 君に酷いことをした人にも返るし、君が酷いことをしたなら…だから、自分と向き合わなきゃ。
 大丈夫だと思うよ、俺は。透花ちゃん、優しいじゃん。俺の手、よくわかったね。ありがとう」

 ハッとした顔で見つめてくる。
 この子はいま、とても綺麗な眼をして…生きている。

「…ありがとう…?」
「うん。気付いてくれた。お薬飲んでこないとなーって思い出せたよ」
「…それ…。
 よく、アンジさんも、言ってくれる、んだ…」
「言ってあげるなんて、そんな施しみたいな…!違うよきっと、思ったから返してるんだよ?透花ちゃんに」
「……そう、」
「うんそう。だから受け取るというか…難しいけど、自分のものだと思っていいと思う」
「…そっか…」

 彼は小さく「ありがとう」と言った。大変だ超可愛い。

「…可愛」
「加賀谷くん、」

 のほほんとした中、珍しく慌てた多摩が病室のドアを開けた。

 そう言えばこの人なんで入ってこなかったんだろう…透花がビクッとし「あ、」となっている…あぁ、新さんに言いつけられたのかな…この人はあまりヤクザに見えないけどな…。
 と、一難去ればまた一難。部下の…柳瀬さんだったか…バリバリのヤクザが多摩の後ろから「慧さん、どもっす!」と元気に現れさらに「あっ、」となった。

「あっ…えっと会長に」
「…高田、」

 あ、高田さんだったか…と、多摩に制された部下を目にしないようにする透花に「あ、安心して」と取りなす。

 事前情報、透花は被害者ではあるが知らずにバイヤーをやっていた、だ。

「あの人見た目ああだけど怖くない方の人だから!」
「…す、すませぇぇん!」
「高田、彼は声が…取り敢えずボリュームは下げて欲しいと言われてて…」
「あ、ハイ…」

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