無色透明色彩


3


 イヤホンを付ける。

 君に会えてよかったよ、心底。訳聞かれても答えらんないけれど。いつかきっとわかるんだろう。

 だなんて。良い歌詞かも。

 そんな日常の裏側を見る。
 それはそれ、と昼休みにメッセージを見れば「卵焼き」と来ていたが…あぁ、何日か前の日記にあったな……「アンジさんが卵焼き?を作ってくれたよ」と…。
 あれ、オムレツだったんだよなぁと、少し苦い思いな気はするが、何故か嬉しくもある…ちゃんとオムレツを作ろう…。

 ついでに、今日はとても良い日だからと、ついつい、出勤中に聴いたロックバンドと曲を返信に添えておいた。

「懐かし…くもないのか?少し前まで活動してたらしいが…」

 タバコ休憩。
 平良が「慧んとこは二人して泣いたらしいが…」と口ごもったので「食道癌でしたっけ」と普通に対応する。

「お前も世代っちゃぁ世代か…ミッシェル」
「これはその後のバンドの曲ですけどね。なんか好きなんすよ」
「わかる…どっちもいいけど歳食うと断然こっちよなぁ…ちなみに俺は嫁にバレることなく泣いたよ訃報。嫁も衝撃は受けたらしい」
「……やっぱ意外と人情派ですよね平良さん」
「まぁな。俺が去ったらそう広めといてくれ」

 何を言っているんだか。

 いつも通り仕事を終えて買い物に行き帰ると、透花は案の定寝ていた、イヤホンを付けたまま…。

 どうやら聴いてくれたらしい…テーブルに「とても好きかもしれないです」と、歌詞が書かれたメモがある。

 このしゃがれ声でよく眠れたな…と思いつつも、表情は穏やかでつい、頬に触れてみた。

 ぼんやりと起き、何かを話す前に「ただいま」と言えば、寝ぼけたようにその手をスリスリしまた目を閉じてしまった。

 ……朝と逆だ、なるほど気持ちがわかった起こしたくないなぁとは思うが、ふっと頬をピタピタし、暫くそのまま眺めてみる。

 暖かいけれど、君は俺より少しだけ体温が低いらしい。

 俺は今、1人ではないと、当たり前になりつつある日常につい「俺もそう思う」とメモに書き足しておく。

 手と頬が同じくらいの温かさになってくる。太陽が夕方から夜に溶け込むような微睡みに浸る頃。

 寝そうになりハッと起きると、透花もハッと起き「卵焼き!」「オムレツ!」とハモり、ついつい顔を見合せ二人でなんとなく、笑いあった。



[完]

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