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 海江田さんがケータイをいじるとまたドアが開き「もう来たって!?」とこいちゃんが旅行のバッグを持っていた。

「あ、どーも…えっと茜さん」
「あ、さーせん、どもっす…は、早くねぇですかハイエナさん…まだ15時…」
「海江田です…あ、これやめましょうね間違えそうなんで…平良です」
「あっ、そうだったダ…ダンナよ」
「……いつもメガネって呼んでるんでしたっけ…あっちは茜って呼んでいる…と。俺メガネ買ってきますかね…」
「……それ逆にどーなんですか、お宅ら的に」
「逆にいいかもしれませんよ?俺もツラワレしないというか逆にワレて間違えられて敵が混乱」
「いや、ないね。顔が違すぎる」
「……おと、さん、あの」
「あ、今周りいないからいい…いや、逆に慣れとこうか…なんだい学よ」
「ツラワレって、顔バレ…的な?」
「そうそう教わったのかな、メガネ…くんに」
「ねぇねぇ」
「なんだい学よ」
「……逆に不自然でびみょーにキモイっすよハイエナさん」
「もーそれでいいや…逆に自然かも」
「天使?げ、元気?」
「トーカね。元気だよ。君と同じく、勉強中」
「漢字?」
「いや、英語と料理」
「スゴい…」
「てゆうか茜さん、学くんの漢練スゲーっすよ。賠償請求って何事…」
「あー…」

 荷物を側に起き「学はなんというか記憶力良い時があって…」と机を見て「マジか」と言った。

「……スゲェなこれ、多分今日聞いた内容でわからなかったことイチラン」
「……マジっすか…IQテストとかヤバそう」
「やろうかケントウ中。
 ギターは聴けば一撃で譜がわかる」
「…天才じゃん……」
「多分事故の後遺症か何か。昔頭打って話せなくなったことがあって…。
 で、発声練習とか趣味とか…そーゆーの教えてくれた人が現役バリバリのミュージシャン達。
 最初は大きな音がダメでどうしたもんかなと相談した人の娘…当時…8歳だったかな、それが動画をとってくれた由亜ちゃん。由亜ちゃんの父親がドラマーで、由亜ちゃんが8歳にしてバリバリにドラム叩いていた動画を見て今にいたる的な」
「……なるほどそんなことが…」
「あと、今回の幸村くんは由亜ちゃん父バンドのセンパイ。3人で…小学校でバンドを始めた。クラブ申請とか、頑張ってたんすけどね…」
「………そっか」
「あたしがバンドとか、やめた時に」

 ガラガラガラっ、バシッとドアが開いた。
 知らない、なんだか大きい男の人が「あんたが平良さんか」と怒ったように言う。

「……そうですが」

 ハイエナさんがこいちゃんにふっと手をやり立ち上がる。

「ジダンしに来たんだが、ダンナも一緒か」

 ハイエナさんはこいちゃんをにらむデカイ人からこいちゃんを隠すようにスッとより「ジダンですか…」と言った。

「…佐藤さんでお間違いはございませんか?」
「そうだ」
「はじめまして、平良と申します。
 息子さんが無事退院されたということで、安心しました。
 で、ジダンということですが、それはどういった内容で?」
「ウチのセガレもケガはした。そちらは入院しているようだが元気そうだな。今日は退院かな?」
「……入退院についてはまだ言えませんが」
「オオゲサにして金を取られる前に、金はお互い様ということで」
「は?」

 こいちゃんが言うと「茜待ちなさい」とハイエナさんが言う。

「……ツラをおがもうと思ったら兄ちゃん、なんだ」
「病院はマスク、ヒッスなんですがどうやってここまで来たんです?受付通りましたか?」
「だからジダンに来たんだ、通ってるわけ」
「学、ナースコールを押しなさい」
「待て」
「まだ領収書も診断書も出ない段階でいくら払おうと言うのかわかりませんが、現時点でアナタのこの行為は直談判です、示談交渉ではありません。
 貴方は見たところ法の方ではない。法の方だとしたらもっと…良くないですがそもそもそういう人は普通に受付に行くでしょう、受付に行けば面会拒否としているのがわかります。
 まぁどちらでもここに来て金銭の話を、そんなに高圧的且つ誠意を感じ取れない…貴方、旦那も一緒かなんてほざきましたがある程度、普通、世間一般からすれば女性と子供を前に男が単身で来るなど…ちょっと、どうかと思いますね、いてよかった」
「なっ、」
「で、示談ですか。今この状況で示談書はお持ちですか?本当にいいんですか?そんな事を言ってしまって」
「示談したいから来ただけだが?難しい話じゃないだろーよ」
「難しい話ですよ。世の中甘くありません」
「あぁ!?なんだ若造がっ!」
「あ、恫喝する気ですか?
 先程申し上げましたが貴方は、面会を拒否したのに、押し掛けてきた加害者、という認識になりました。言質も動画もありますしナースコールではなく、警察を呼んでもいいんですけど、どうしますか?示談とか言ってる場合ですかと……。
 煽り散らかしてすみませんねぇ、はい茜、これ」

 ハイエナさんがポケットから…四角い何かを出すとこいちゃんは「ふぁっ!?」と言った。

「は?」
「世の中ボイレコは必須です。
 で?どうしますか?原刻にてこちらは恐喝と捉えましたので…お宅、示談なら弁護士か法書士等がいらっしゃいますよね?
 こちらとしての方針はお宅の保険会社に医療費と賠償請求の手続きを行いますので次からは会うことはないでしょう。法律には被害者と加害者それぞれの安全を守るものがある」
「…んだてめぇ…なんだ、お前、まさか旦那じゃねぇのか!?」
「学の父であり茜の夫ですが何か」
「ウソつけ!お前らニセの親子だと」

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