つつがなくわがままに








「赤也くん、学校でモテるんでしょ?仁王さんに聞いたよ」

急に何を言い出すかと思えば。
面白がっているのか世話を焼いてくれているのか微妙なところだが、あまり他人のことに関心を示さない仁王にしてはめずらしい。

「へ?あーまぁ多少ね」

「あれ、意外に謙遜するんだね。モテるからしっかり捕まえておけよって仁王さんにも言われたし、赤也くんも言うかと思った」

「俺の知らないとこで何言ってんだあの人…。そりゃ謙遜もするさ、先輩たちのモテっぷりを間近で見てれば自慢するほどでもねーし」

もちろん、モテて悪い気はしない。けれど大勢に好かれるよりたった一人の大事な人に愛される方が自分にとっては幸せなんじゃないかと赤也は思っている。

「そうなんだ?」

「ああ、毎日すげーぜ。しつこく待ち伏せる女子に真田副部長が怒鳴ってもキャーキャー喜ばれて逆効果だし。ああいう人たちってよくわかんねーよな」

「あははは、真田さんに悪いけど笑っちゃう」

「気合が足りなかったからなめられたんだとか言って次の日もっと怖い顔で一喝したみたいで、そしたら今度は副部長見るの楽しみに集まるようになっちまってさー。みんな苦笑いだよ」

「真田さん本人はそういうのがウケてるってわかってなさそう」

「さばくのが上手いのは仁王先輩と幸村部長だな。仁王先輩は塩対応で受け流し、幸村部長は微笑んでるけど有無を言わせぬ雰囲気で追い払い」

「なんとなく想像できる。赤也くんは?赤也くん目当ての子とかどうしてるの?」

「俺の場合は部室より教室とか廊下が多いからな。追っ払ってくれる先輩もいねーしけっこう大変なんだぜ」

「テニス部以外のところでも注目されてるんだね」

「あ、なに?もしかしてヤキモチやいちゃったり?」

「うーん、そういう時赤也くんどんな対応してるのか気になるかな…」

「どんなって…前はヘラヘラしてたかもだけど、今はちゃんと、好きな子がいるって言ってるぜ」

「そうなんだ」

「あれ、もっと喜ばねーの?」

「モテる彼氏ってやっぱりいろいろ心配だなぁと思って」

「いやいやちょっと待てよ。じゃあモテないようにするからさ、つき合うのやめるとか言うなよ?」

しまった、必要以上にモテ話なんかするんじゃなかった。
なんだかんだいって仁王も隙あらば…と狙って見えるし、あの真田でさえさりげなくつぐみをほめていた。だからいつも立海テニス部員が現れそうな場所を避けて待ち合せなければならない。先輩たちとつぐみのつながりをなくしてしまいたい。

「モテないようにするとか無理だし」

「毎日変顔して歩くとか。あ、それとも常にデビル化」

つぐみがくすくすと笑い出す。

「無理無理、何やったって赤也くん可愛いーって言われちゃう」

「それなんだよな!なんでみんな「可愛い」なんだ?「カッコいい」じゃねーの?」

中には可愛いで喜ぶ奴もいるかもしれないが、赤也としてはつぐみの前でかっこよくいたいのだ。

「もちろんいつも可愛いばっかりじゃなくカッコいいよ。でも私としては、真田さんに怒られるようなやんちゃで可愛い赤也くんが大好き」

「あー」

つぐみは無意識にやってのけるから本当に困る。

「大好きとかさらっと言わねーでくれよ頼むからさ」

「え?言っちゃだめなの?」

「俺こそあんたのそういう天然だかなんだかわかんねーとこ心配なんだよ」

「大好きなんて赤也くんにしか言わないんだからいいじゃない」

「ほんとだな?絶対だぞ?」

「うん、約束」

と、つぐみが小指を差し出したところで

「ちょっと待った。指切りよりいい方法思いついたぜ」

その唇にキスをした。

「ずーっと、俺の傍にいてくれよな?」

「もちろん。嫌がっても離れないから」




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20230402


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