死んでも言えない魔法の言葉 R18
多少のえろありです
もうすぐ午後2時になる。
切原と海堂が出て行ってしまえば日吉と二人きりだ。待ち遠しいようなそうではないような。財前が自分から言い出したことなのに、落ち着かない気持ちになる。
「おい」
呼ばれて、寝転がっているベッドから仰向けに見上げる。どうやって声をかけるか考えあぐねていたから、助かったとばかりにホッとした。
不機嫌というより不本意だという顔で日吉が立っている。
「…どうすればいいんだ」
言われたので、腕を引っ張ってベッドへ引き込んだ。どうするかなんて財前にも予想がつかない。行き当たりばったりだ。
日吉が胸に倒れ込んできたのを、体勢を入れ替え組み敷いた。
「わからんわ」
首筋に顔を埋め、Tシャツの裾から手を突っ込む。女のような柔らかさや弾力はなく、筋肉で引き締まった身体は硬かった。平らな胸を確かめるようにまさぐると、小さく主張している突起に指が引っかかりその瞬間身体がびくんと跳ねる。
「——ッ」
財前の手から逃れるように身体を捻るのを押さえつけ、Tシャツをたくし上げると胸が露わになる。指で触れていたところに舌を這わせた。
「や、ちょっ…待て」
身体を震わせながら吐く声が甘く響いて、不覚にもぞくりと快感が走った。
「……なんなん?」
「余計なことしてないでさっさと挿れろよ」
「それでもよかったんやけど、今ので気ぃ変わったわ」
財前は再び胸に唇を押し付ける。それを押し退けようとする手を掴まえるが、腕力に大差がなく振り払われそうになる。おとなしくさせるために突起を強く吸い上げた。
「っ…く、やめろ…っ」
男が相手でも抵抗なくできてしまう自分に内心驚く。そればかりか日吉の反応ひとつひとつにぞわぞわと興奮を覚えている。しばらく忘れていた気がする情動だった。
財前を押し退けようとしていた手は、今は自身の口を塞ぐのに必死だ。
どんな声を出すのか聴きたい気持ちはあるが人に聴かれてはまずいので仕方がない、がもちろん悪戯はする。
片方は舌で、もう片方は指で、しつこく追いかけると耐えきれないというようなくぐもった声が響いた。
「よわよわやんな?」
もともと快楽に弱いのか、慣らされたからなのか。
腹の下でジャージ越しにお互いの硬いものが当たるのを感じる。
「も…、いいから早く…」
日吉は重なる下半身に手を伸ばした。
早く終わらせたがるのをあえて無視していたが、財前の方もあやしくなってきた。
「……想定外やったわ」
反応を示しているのは日吉だけじゃない、財前も同じだった。皮肉のひとつでも言われるかと思ったが、いっぱいいっぱいで余裕がないらしい。
「ほな、手でしてもらおかな」
「わかった」
躊躇う様子もなく、文句も言わず、真顔で頷くので笑ってしまう。
「何笑ってんだよ」
「いや。ふざけるな!とか言わへんの?」
「それじゃいつまでたっても終わらないだろうが」
「……せやけど、嫌そうな顔しながらしてもろたらおもろかったな、と」
「悪趣味な奴め…」
身体を横にずらしてジャージをずり下げると、硬く勃ち上がったモノが飛び出す。男にされたことはないが、力加減もポイントも心得ているだろう男の手はとりあえず心配はない。
他人の手の感触は知らない快感を呼び起こす。上下に扱かれ尖端を捏ねられると腰が自然と動いてしまう。くびれを強く刺激されて声が漏れる。
「……うッ」
「ふん。お前だってたいして強くないじゃないか」
「うっさいわ。そこ弄られたらどうしようもないやろ。てかなんで真顔やねん」
多少の羞恥はほしいと思う。
まさか反撃の機会を窺っていたのだろうか。
財前は悔しまぎれに日吉のジャージを下ろす。自分がされているのと同じように、硬くなっているモノを握った。
「だから俺はいいって言ってるだろ…っ」
「えろ。触らんうちからこれってどないやねん」
ドクンと脈打ってさらに硬くなったそれは、すでにぬるぬるとぬめりを帯びて敏感になっているようだった。軽く動かすだけで震え、荒い息遣いに小さな声が混じる。
「やめ…っあ…っ」
「……なぁそれ、煽っとる自覚あるん?」
まあないだろうなと思いながら。
お互いのモノを添わせて手を重ねる。
男同士という知識は多少あるが実践経験はない。なんとなくのノリでそうしてみただけだが、どうやら日吉にとっても初めての行為だったらしい。
「さっきの続き、してや」
日吉の途惑う眼差しを受けながら言った。
促されて指先がゆるりと動き出す。財前ではなくまるで自分を慰めるかのように、感じるところを辿る手つきで扱かれるとたまらなく欲を掻き立てられた。重ねた指は日吉に合わせて動く。いつの間にか財前も自分の好きな感覚で動かしていて、一人でしているのを見せ合っているような不思議な興奮が芽生えた。
「手ぇ止まってんねんけど」
「っ……」
ともすれば快楽に溺れてしまいそうに浮かされた表情を見ていると、こんなに流されやすいのではあいつが心配するのもわかる気がした。
『誰かに奪われるんじゃないかって』
あの時の言葉を思い出す。
財前に言われて意識を取り戻したように動く手は追い立てに激しくなった。
「う…、——ッ」
間もなく達してしまったが、ほぼ同時に日吉も果てた。
本人たちより欲に正直なモノは一度ぐらいじゃ収まらないと天を仰いでいる。しかしそろそろ後始末をしないと二人が戻って来てしまう。
乱れた呼吸でベッドに突っ伏す財前の横で、日吉の息遣いが聴こえる。
余韻に浸る間もなく起き上がる日吉の腕を掴む。
「…忘れもん」
若干の名残惜しさを抱えながら、キスをした。
「…なんかお前そればっかりだな」
「ええやろ別に。ついでやついで」
(だからその感情の読めん真顔はやめろて)
言われてみれば確かに、なんのかんのとキスしている気がして柄にもなく焦ってしまった。
2024.8.2
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