15家族になろうよ


ふわりふわり。

またこの夢か…

ふわりふわり。

大勢の人達が戦っている夢。
私はその中を、真っすぐと駆け抜けている。
迷うことなく、一点を見つめ、ただただ必死に向かう先に見えたのは
鎖に繋がれた…
(エー…ス、さん…?)

ふわり、ふわり。

あぁ、もう少しで。手が届きそうなのに…。








「……はッ!!!ココドコダ!ってかスープうんまぁ!!」
「うぉっ!?急に覚醒しやがった!!」
やっぱ腹が減りすぎてアホになってたんだ!

そう言ってエースさんは私の口にスープをスプーンにすくい、
ほらもっと飲め!と近づけてきた。
あれ?どういう状況?

だんだん覚醒してきた頭で周りを見やれば、目の前にはおいおいと泣き崩れているサッチさん。
右側には、もっとくえ!とひたすら食事を食べさせてくるエースさん。あ、このリゾットもおいしい。
もぐもぐと租借しながら左を見れば何やら呆れ顔のマルコさんに
ゲラゲラと笑い声が聞こえ其方に目をやれば、向かい側のサッチさんの隣ではハルタさんが
目じりに涙をうっすらためながらひーひー腹抱えて爆笑していた。

私はと言うと何故かまたもや検査着を纏い車椅子に座っていた。

「あれぇ?もしかして私、アホみたいになってました?」
「おう!目も当てられねェくらいアホだったぞ!ほらこれも食え!」
「んぐ、おなはすふほわはひはほになふんへふほへー」
「何言ってっかわかんねぇから食ってから喋れよい」

もぐもぐごくん、と口の中の物を飲み込み
「私、エネルギー使い果たしてお腹すきすぎるとどうやらアホになっちゃうみたいで!」
てへぇ!と言えばエースさんが、「だよなー!!腹減るとアホになっちまうよな!!」と同意しながら
プルプルな茶わん蒸しを口に運んでくれ、ぱくりと食いついた。

「エースさんも?なんだ、私だけじゃないんだ!あ、もう自分で食べれます!」
おう!みんなそんなもんだ!気にすんな!そうエースさんの言葉に

「「「オメェらだけだわ!!!!!」」」
と、素晴らしいチームワークのツッコミを頂いた。

えー?そうかなぁー?とエースさんと二人、頭を傾げていれば
「あんた…ぶくくっ、いつもマヌケな顔してるけど、ププッ
女として終わってるよ…ブフゥッ、あーもう苦しっ…!笑い死ぬ…!」

そう言って腹を抱えながらテーブルをバンバンと叩き笑いこけてる王子様ことハルタさん。
こいついっつも突っかかってくるなぁ?おこですよ、おこ。
「じゃあ私が引導わたしてやりましょうか?」
「あ?なに?ぼくにケンカうってんの?」
「あ?やんのかコラこの童顔王子様?ん?」
「はぁあー!?なんなのこの女!!!ちょっとオモテでなよ!」
「らぁあコラ返り討ちにしてやんよクソコラワレェ!」

そうグッと車椅子から腰を浮かせれば、背後から両肩を押され車椅子に押し戻された。
「オメェは、またベットに手足拘束されてえかよい?」
大人しくメシ食ってろこのじゃじゃ馬が。とマルコさんに怒られてしまった。
そんな私をハルタさんは懲りずに笑い飛ばすもんだから
なんなんこの王子、煽りスキルたかすぎない?
むかついたのでベストジーニストさんの個性で検査着を少し分解しその繊維でハルタさんを椅子にぐるぐるに固定してやった!はっ!ざまあ!
「ちょっと!なにすんのさ!!」とぷんぷんなハルタさんに、べぇー!!と舌を出してやれば
「ガキかおまえらは!!」とマルコさんにゲンコくらった。解せぬ。

「うおおおんなまえちゃんよかった、元気そうでおらぁ安心したぜ
これからはぶっ倒れねぇようにサッチ様が直々に毎日なまえちゃんの食事管理してやるからなぁ!うおおおん」
「ねぇ!!どうでもいいからコレ解いてよ!!」

男泣きするサッチさんにドン引きしていれば、ハルタさんが椅子をガコガコしながら訴えてくる。
しーらね、と目の前のご飯を頬張っていれば、「朝っぱらから随分賑やかじゃねぇか」とドレッドヘアの人と
いつしかの時の紳士さんが声をかけてきた。

「あ、イジワル紳士の人」とつい声に出せば
「あの時は悪かったって、改めて、俺はビスタだ宜しくな」
そう言ってまた握手を求めるように手を差し出して来たから
「ご存じかと思いますが、なまえです」と手を伸ばし、手が触れ合う瞬間

ひょい。と、今度は私が手を逸らした。
「この前の仕返しです。」とビスタさんは拍子ぬけた顔でポカンとすれば、すぐさまアッハッハと豪快に笑い
「こりゃ一本取られたわ!なに?結構根に持つタイプだったか?」と愉快に笑う。

「おいおい、おめぇ何時ものへらへら気持ちワリィ顔はどうしたァ?
随分と人間らしくなったなぁガキンチョ!」そう言って私の肩をシバいて来るドレッドヘアの人が
俺はラクヨウってんだ!宜しくな!と自己紹介してくれた。

この船の人達、やたら私の肩シバイてくるよね!
「ところで、昨日の一本背負いは見事なモンだったぜ!
エース!おめぇまだ玉ァついてっか?ガハハハ!」
取られそうになってたもんなぁ!とゲラゲラ笑いながらエースさんに絡んでいるラクヨウさん。
それにつられて周りの人達もガハハと笑い
エース隊長!まだ男のままっすか?などとエースさんを揶揄っていた。

「う、うるせぇ!昨日は、その!ちょっと油断しただけだ!」
次は負けねぇ!!そうエースさんは言うので
「じゃあやります?昨日の続き。私、お腹いっぱい元気もりもりですけど。」
負ける気微塵もしないでぇす。と小バカにした様に言えばナニィイ!ちょっとオモテでろなまえ!
そう言って立ち上がるエースさんによっしゃ受けて立つ!と腰を上げれば
今度はエースさんも一緒にマルコさんのゲンコを仲良く頂いた。

「だからなんでそうケンカっ早いんだよい!テメェらは!」
「「だって、なまえ/エースさん が…」」

おまえら仲良しか!!!と気が付けば食堂に居た人たち皆がこっちを見ながら笑っていた。
約一名を除いて。「ねえ!ぼくの事忘れてるでしょ!!」



「いやぁ、しかし嬢ちゃんも仲間になった事だし賑やかになりそうじゃねぇか
なぁエース、オメェも脱末っ子だなぁ!ガハハ」
バシバシとエースさんの背を叩きながらラクヨウさんは楽しそうに言っているが。
おい、ちょっと待て

「え、いつ私が仲間になりました?」

「「「「え?ちがうの?」」」」と食堂に居る全員に一斉に見られた。

「なまえおめぇ!まだ言うか!」
「まだも何も!私は承諾した覚えないですからね!!」
「ダメだ!!お前は俺達と家族になるんだ!!」

もう昨日から平行線だな!!!!と一向に引かないエースさんにバンッと机を叩き立ち上がって
「じゃあ今から出ていきます!!」サヨウナラ!と言えば
「ダメだ!逃がさねえ!!」とガッチリ腰にホールドかましてきやがった!
こいつ!乙女に何てことしやがる!!!

「キィイ!!大体!その!家族家族って!!!何!?私!エースさんと結婚しなきゃならないんですか!?」
私だって相手は選びたいんですけど!!!!
そう叫ぶと、
「俺と…なまえが…けっこ、ん…?」

シン…と一瞬周りが静まり返り、あれなんか変なこと言った?と思った矢先
部屋中がドッと笑い声で満たされた。

「結婚!!!そりゃぁいいかもなぁ!エース!この嬢ちゃんモノにしちまえよ!ガハハハハ!!!」
「ラクヨウ!!!おらぁ!認めねぇぞ!!なまえちゃんをお嫁になんか!お兄ちゃん許しませんからね!!」

「いや!サッチさんの妹になった覚えないですけどね!!」
「まてよ、なまえちゃんの花嫁姿…クッ…イイ!!」
よかねぇわ!!!!!とその自慢のリーゼントにフォークを一本突き刺してやった。

エースさんは私の腰にしがみついたまま、なまえと…俺が…?ケッコン…?と顔を真っ赤にさせてブツブツ呟いている。
いや何照れてんだよ!!!!こっちまで恥ずかしくなるだろ!と
「え!いやだって!昨日から家族になる家族になるって…てっきり私、
こんなどこの馬の骨ともわからない海賊の嫁にされるのかとばかり…」

え、やだ、ちがうの?と真っ赤な顔を隠すように手で覆った。

「ダハハハ!嬢ちゃんよ、オヤジはこんなどうしようもねぇ俺達の事を
“息子”と呼んでくれる。だから俺達も“オヤジ”と呼ぶ!
この船の奴ら全員家族の様に接してくれる!だからよぉ俺達ァ“仲間”でもあり“家族”でもあるんだ!」

とラクヨウさんがビスタさんや、近くにいたクルーの方々と肩を組み
な!野郎共!と豪快に笑いながら言った。
ちげぇねぇ!とその人たちは笑い、他の場所からも俺達はファミリーだ!と嬉しそうに言う声が聞こえる。

なるほど、そういう事か。と納得していれば
「だからな!なまえ!仲間になろう!」シシシと何時ものお天道様みたいな笑顔で言うエースさん。

私はうーーんと顎に手をやり暫く考えたのち。

「うん!断る!」とにっこり笑いながら言えば

小娘てめぇ空気よめ!!!!!!!!!と総ツッコミされた。

「エースよい、おめぇの嫁さんは一筋縄じゃいかねぇようだねい」

だから嫁がねぇって!!!!!!






狐の嫁入り!

私にだって選ぶ権利はあります!!!と主張すれば

俺じゃ、いやなのか…?と信じられないような目でエースさんが言うもんだから
更に笑い声は木霊していくのであった。

「てゆうか!ぼくの事完全に忘れてるでしょ!!!」

あ。