ゴリラ脱走劇


「いや流石に寒くなって来たな???」

無骨なコンクリートは太陽の温かみを受けつけないかの如くひんやりしていた。



時刻は昼。

お天道様はてっぺんから見下ろしてるのに。
下界の我々は何となく肌寒いのである。頑張ってくれ、紫外線。温めておくれよ、紫外線。

「ふぃ〜〜、そろそろ木枯らし野郎のお出ましかもなぁ〜」
「会長、風のイタズラで舞い上がるスカートのため、弊校の女子制服スカート丈改善を要望します。」
「却下します。」
「つれねぇ〜〜〜〜!」

なんだ?貴様は、むっつりと見せかけてのオープン野郎か?

「きみ、それ全校女子が泣くよ」
「案外、喜んで見せてくれる奴がいるかも知れねぇぜ?」
「おまえほんとサイテーだな」
「そもそもなぁー、女子生徒の制服にスラックスの選択肢があるのが許せねぇ。愚策にも程がある」
「いやそんな仇を見るみたいな目で訴えられても会長、こまっちゃう」







「いやなんか言えよ」

「わりぃ、つい、腕のいい医者を脳内で探してた。」
「んんっ天誅!!!!!!!!!」

「あぁ!?おれのから揚げ!!!!!!」


へへ!ゴリラ包囲網を潜り抜け、我、から揚げ誘拐に成功!!

「ん〜、うま。ゴリラのくせに、うま。」
「頭握りつぶすぞ」
「こっわ。ねぇ、おかわり」
「ねぇよ」
「うるせぇ、まだ2つはあるだろ、よこせ」
「チンピラかよ」
「じぇーけーだわ、華のティーンだわ。」
「華なら、制服変えちまえよ。」

「…なんかあった時、逃げやすいだろ。うん。」

「じゃぁ...、今から、逃げちまうか。」





思いっきり、走れそうだしな。





そうだね、。


そうだね。








「って、そもそも〜、きみ、私にあのお嬢様制服が似合うとでも?」
「……ねぇな」


秒で否決された。




から揚げは食われてた。






「わたしは空っぽだ」

「ああ」

「次は病院とかぶちこまれたらどうしよー」

「おまえ…、実は”そっち”とか?」

「バカ言えぃ!花も恥じらう、オンナノコだわ。それより!!」
「ん?」


「次のから揚げの日!私の分も!」
「おいおい、おれは一体何キロ肉を揚げればいいんだぁ?」







きみが、しがらみから解放される日



「兄弟が、好きなんだよ。肉。」

そう言って笑ったきみは、わたしには届かない所に居るんだなぁ、って。

現実を突き付けてくる…悪いゴリラだ。



攫って、逃げてよ。と、私達はいつも誰かに縋ってるのか。

それとも...、


「いいね、兄弟。」

「ああ、おれの宝だ。」