よんななみ

ともだちがほしかった。

仲間外れにされた


ヒトには見えないものがみえた。

気色悪いと押し入れに閉じ込められた

おかあさんにすてられた

父親から酒の空き瓶でたくさん殴られた

ともだちがほしかった

みんなーー…いいのに。







小学校は楽しかった事はちょっとあった

中学校は楽しくなかった

楽しい事が欲しかった

痛い事はたくさんあった

ヒトとは違った

ヒトとは違うからおかあさんに捨てられた。
だから父親にたくさん殴られた。
酒浸りで碌な父親じゃなくなったのも、わたしがヒトとは違うからだ。








「っぱ角ハイがつよいわ〜〜」

この角がね、やっぱトドメの一撃にいいんだよね〜〜
いいちこじゃこの威力は出ないわ。うん。


わたしには”戦う”武器が無い。
反転術式で治療を主に行う、いわばサポート要員で。

しょうこ先輩みたいに、本来ならばあまり前線には出ないんだけど。
だって、反転術式使いは貴重だし。

でもわたしの術式はしょうこ先輩みたいに完璧じゃない。


半端物が守られる権利なんて無いよね。って。


足元で踏んづけてる低級呪霊を、角ばったハイボールの空き瓶でひたすら殴った。

動けなくなるまで殴った。

わたしはそれしか方法を知らない。




「おーーーい、禰寝〜〜、もうそろそろいい具合だと思うんだけどな〜〜?」
「灰原ぁ!おせーよ!!見ろこの可憐なまでの足止め!!よっし!最後の華はお前に譲ってやろう!さぁ思う存分に祓え!!」
「結局最後は僕かーい」

まったくもー、って困ったみたいな顔で鼻の頭を指先で掻きながら灰原はお祓い南無三ってして、任務は完了だ。



「わーー、もう夜になっちゃうよー!七海と放課後デートしたかったのに〜〜〜!」
「今日は僕と放課後?デートだねぇ、」
「は?灰原ぁ!寝言は寝て言え?」
「はぁい、おやすみなさい起こさないでねカーチャン」

だぁああれがてめぇのカーチャンだばぁか!って一発蹴りを入れたら、骨折れましたー!って騒ぐ灰原。
こつしょしょーしょーか?牛乳飲めよなまったく。

「やれやれ、灰原はわたしが世話しないとほんとだめなんだから」
「言われたくないかな〜」




すっかり暗くなってしまった街を、不服だけど灰原と歩く。

今日の任務はわたしと灰原の二人で、七海は別行動。

さっきは真っ暗に感じていたのに、街の明かりが眩しくて、騒々しくて、羨ましくて






「わ?!なんだあの行列!」
「は?知らないの?世間じゃあれよ、あれ、世のヤングはな、タピるんだよ」
「ヤングって(笑)」


ヒトが気持ち悪いくらいに綺麗な列で並んでて、蟻みたいだなって思った。

糖に群がる蟻。




「…禰寝ちゃんはさ、”ふつうのおんなのこ”ってどういうのだと思う〜?」

なんてことはない世間話みたいな問いで、そうだなぁー…、と私は騒々しくて眩しい”帳”の外の世界をぐるっと目だけで見渡してみた。

灰原と並んで歩く速度は変わらずに、う〜んと首をかしげて考えてみる。


「学校で、友達と笑いあったり。喧嘩したり。一緒にごはん食べたり。放課後はハンバーガーとか食べたり。休みの日は一緒に出掛けたり。なんか、そーゆうの。」
「じゃぁ禰寝ちゃんは普通の女の子だ。」

「え?」

「だってさ、僕達、っても、3人だけだけど。学校で笑ったり、喧嘩したり、一緒にごはん食べたり。まぁ、
一緒に任務とかで出掛けてはいるけど…。なんならほら!休みなんて僕達術師にはあってないようなもんだし!あ!それに、任務してお給料もらってる当たり僕達同じ会社の同僚〜って感じじゃない?」

やば、なんか笑えて来ちゃったな〜!って何を想像してるのか分からないけどご機嫌な灰原に、

「同僚…会社…、社会人…、スーツ…の、七海…。いいっ…!!」

わたしは妄想全開で握りこぶしを握った。




”帳”の外はいつも眩しくて、羨ましくて、痛くて、嫌いで、好き。


無いものを欲しがって、手を伸ばして、火傷して、たくさんの事を学んだ。









「灰原ぁー。」
「んー?」
「わたし、髪の毛染めようかな〜って思うんだけど。どんな色がいいかな〜?」
「え〜…?そうだなぁ。ピンク。」
「ピンク〜〜〜???」


なんとない会話で、思いがけない返事にちょっとびっくりした。ぴんくっておまえ、






華の10代















「なーーーーなーーーみぃいいいいいいい!!!!!!!」ガラガラガシャーーーン!!!



廊下は走っちゃいけませーん

とか

扉は静かに開けましょう

とか


そーゆうのは要らない。


「ねぇ〜〜七海〜〜みてみてみてみて!!超見て!!!たくさん見てぇ〜〜!!!!」



友達100人作りましょう

とか

思い出たくさん作りましょう

とか

そーゆうのは無くていい。


「…全く、何ですか騒々し…い…、おや。」

「似合う〜〜〜?染めたの!」






にんまりと笑ってくるんって回る

かわいいでしょお?って問いかけに、


「そういえば、春でしたね。」

って、


全く会話がかみ合わないお茶目七海だけど。

もうとっくに散った桜の匂いがふんわりと香った気がした。










「ピンクって、派手じゃない…?」
「そうかな〜?ほら、なんかビビーーン!!ってピンクじゃなくて、ほわ〜〜んって感じのピンク」
「なるほど、ほわ〜〜って感じのか…、うん、悪くないかも。灰原ぁ!褒めて遣わす!」
「はいはい、ありがたきしあわせー」









「…七海、惚れた?」
「寝言は寝て言うものですよ。」
「素直に似合ってるねって褒めてあげればいいのに〜」
「…煩い。」







秘儀!!!桜旋風!!!!!!
って可憐なステップ踏んで教室の中くるくる回ってたわたしには知る由もなく。



今日も世界は平和、じゃないで〜〜〜〜〜す!



「待ってろ呪霊どもぉ!!!この桜吹雪禰寝様が成敗してくれよぉ!!」

「うん、やっぱ禰寝ちゃんはピンク似合うね!!!めでたい頭ってかんじで」
「…は?」
「ブフッ…、コホン。」
「え?今七海笑った?え?え?え?」
「わっ!レアだね!七海!」
「酒々井、灰原。いい加減煩い。」


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