聞いてほしい言葉


 工藤新一(小)……もとい、江戸川コナンがうちのクラスに転校してきて1週間とちょっと。彼はうまく小学校一年生の江戸川コナンとしてこのクラスに馴染み始めていた。

 始めは子どもぶるのに苦戦していたようだが、日にちを重ねていくうちに慣れて来たようである。まあ猫かぶり歴=(ほぼ)年齢の私からすればまだまだツメが甘いが、高校生の彼にしてはなかなかいい方だろう。そのかいもあってか未だに他の人には正体を知られていないようだ。

 授業中に酷く退屈そうにしている横顔なんかは油断しているのか、完全に中身が出ている。私としてはそれをこっそり覗き見するのがとても面白くて好きなのだ。油断は禁物だぞ名探偵。こりゃバレるのも時間の問題かもしれんな。

 好奇心の塊である元太、光彦、歩美の3人は転校初日から彼に興味津々で、次の時間の休み時間に早速話しかけて、その日の夜には私も含めて5人で一緒に帰るくらいの仲になっていた。こういう場面を見ると、人と仲良くなるのが格別に上手い彼らが時々羨ましく見える。

 そして今日は5人で米花美術館に「世界秘宝展」を見に来ていた。お宝に目が無い3人はとても浮かれていて、コナンも珍しい品々を見ては感嘆の息を漏らしていた。まあおたぶに漏れず、私もそうなのだが。未知の物というのは私にとって、インスピレーションの宝庫なのである。

 一通り見て回り、美術館から出ながら私たちは口々に感想を言い合う。

「面白かったね!」
「黄金の仮面が凄かったですねー」
「うん! きらきらですごかった!」

 うっとりとした調子でそう言えば、歩美が賛同するように何度も頷いた。世界中にはまだたくさんの財宝が隠されているらしい、とコナンが告げれば、元太が途端に目を輝かせる。

「俺も宝探ししてみてーな!」

 すると、ひらりと私の目の前に何かの紙切れが舞い落ちる。なんだこれ、と思って拾って見ると、そこにはいくつかの不思議な記号と"ORO"の文字。私が紙を見ていることに気が付いたらしい光彦と歩美は、興味津々で覗き込んでくる。すると不意に、歩美が嬉しそうに言った。

「ねえ! これって、宝の地図じゃない!?」
「宝の地図?」

 歩美の言葉を聞いて、コナンが軽く馬鹿にするように「まさか」と笑う。するとそれを聞いた光彦と元太に問い詰められてしまった。「何ムキになってんだ……?」と困ったように笑うコナン。だが歩美は真剣そうである。

「葵ちゃんはどう思う?」
「あおい?」

 もう一度紙切れに視線を落とす。イマイチ法則性の見られないその記号を見ても、別に宝の地図らしさは感じられない。……でもまあ、これが本当に宝の地図だとしたら。子どもが偶然拾った紙切れが、これまた偶然にも宝へと続く道が記されているとしたら……最高に面白い。

「そうだったらおもしろいなーって、あおいも思うよ!」
「だよね!」

 にっこり笑って頷けば歩美は安心したようにはにかむ。「まじかよ葵ちゃんまで……」とどこか呆れ顔のコナンは見てみぬふりをして。

「よーし! 早速宝探しに行こうぜ! 今日から俺たちは『少年探偵団』だ!!」

 元太が声高らかに宣言する。少年探偵団。ふふ。そう名前がつくと本当に探偵になったように心が躍るから不思議だ。歩美や光彦も「かっこいい」と称賛している。コナンだけはどこか呆れたような浮かない表情をしているが。

 団長は満場一致で元太に決まり、さあ宝探しへ!……と思ったところでふと足を止めた。宝の地図だとわかったはいいが、どこに向かえばいいかわからないのである。

「ちょ、ちょっとその紙見せてみなよ」

 不意にコナンがそんなことを言い始める。そうか、彼に見せれば一発じゃないか。だって彼は日本警察の救世主と謳われるほどの名探偵なのだから。

 素直に紙を渡せば、コナンは小さくお礼を言って紙に視線を落とす。そして紙を見せながら一番上の図形を指さした。どこかで見たことあるだろう?という彼の言葉に少しばかり考え込む様子を見せると、数秒後に無事閃いたようである。勢いよくその目的地に向かって駆け出して行った。

 ――さて、面白い展開になって来たな。

 上がる口角を抑えることなく、私も彼らの後を追いかけた。


***


 一番上の図形の場所……東都タワーへ向かうバスの中で、私たちは「宝を見つけたら何をしたいか」について想像を膨らませていた。因みに元太は「世界中のうな重を食べまくる」、歩美は「世界100周旅行」、光彦は「NASAからスペースシャトルを買って宇宙へ行く」、らしい。夢があっていいなあ、なんて思っているとコナンに話がふられる。

「ちょ、貯金かな……」

 困ったように答えるコナンに元太は「おめー夢無ぇな」となじられていた。

「じゃあ葵ちゃんは? 何したい?」
「あおい? うーん……」

 正直それなりに稼いでいるうえに物欲も無いから、そこまで欲しいものもやりたいこともないんだよな……。かといって無難に貯金と答えても面白くない。何と答えようか迷っているその時、立の姿が浮かんだ。正確に言えば、立の運転する白い中古の軽自動車が。

「お父さんに車をプレゼントしたいなーって思うよ」
「車をお父さんにプレゼントですか!」
「おめーすげーな!」
「素敵!」

 私の答えに次々と称賛が巻き起こる。えへへ、と頭を掻けばそれを見ていたコナンが私に尋ねてきた。

「葵ちゃんのお父さんって何やってる人なの?」
「えーっ! コナンくん知らないの!?」

 だが私が答えるよりも先に歩美が口を挟んできた。それに乗っかるように光彦が説明してくれる。

「葵ちゃんのお父さんは、今超話題の覆面作家『生天目葵』の担当編集さんなんですよ!」
「ええ!?」

 見たことないほど驚愕に固まる様子のコナン。余程衝撃だったらしい。「言われてみれば苗字が同じか……」と独り言を呟く。

 覆面作家である生天目葵の代わりに、担当編集である立はよく顔出しの仕事をしていた。そのため、わかる人にとってみればちょっとした有名人なのである。因みにコナン以外の3人と立は何度か顔を合わせたことがあるため、お互いの顔と名前が一致する程度には知り合いなのだ。

「そんなにびっくりした?」
「う、うん。実は僕、その人……生天目葵先生の本好きでさ。新しい本が出るたびに本屋さんで買ってるんだ」

 少し恥ずかしそうに言う彼の言葉に、今度は私が静かに驚く番だった。まさか日本一の名探偵が私の読者だったなんて。覆面作家という都合上、ファンに直接会ったことの無かった私は目の前の少年から素直に零れた「好き」という言葉に胸がいっぱいになってしまった。だが表情に出さぬよう、にっこり笑って「そうなんだ!」と明るく振舞う。

「で、でさ」
「なあに?」

 もじもじと、どこか言いにくそうにコナンは言う。

「葵ちゃんは見たことあるの? その……生天目葵先生」

 見たことあるも無いも、目の前にいる私が本人なんだがな。

 内心そんなことを思いつつも素直に口に出すわけにはいかない。うーんと考えながらもうすっかりいい慣れたセリフを口に出す。

「あおいは見たことないなあ」
「そ、そっか……」

 どこか残念そうな様子のコナンに、静かに胸を痛めた。


***


 あっという間に東都タワーに到着した。出発点に到着したのだから、あとは暗号を解いていくだけである。だが他の記号はどれも不可思議な形をしていて、何が何やらさっぱりだ。元太が月のマークを指さして「東都タワーのこの位置に月が見える場所に宝がある」と主張したが、光彦に一笑されてしまう。じゃあどこなんだよ!と光彦に掴みかかるのを横目に、歩美は不安そうにしていた。

「葵ちゃんはどう思う?」

 メモに視線を落としていたコナンが尋ねる。全くもって検討もつかない私は少しだけ考え込むと、思いつくままに口を開く。

「月のマークがあるから、お月様にかざしたら文字が浮かんだりして」
「でも今昼だよ?」
「夜になってからじゃないと確かめられないね」

 うーんと再び考え込むコナン。そしてふと思いついたように言った。

「これって何かを略した形なんじゃないかなあ?」

 そうして順番に図形を指さしていく。2番目の図形は帽子。その下は下着。その下はワンポイントマーク。

「そしてこれらを結ぶものと言えば……」
「「「洋服屋!!」」」

 3人の声がぴったりハモる。そしてコナンの話をすべて聞かぬうちに大慌てで駆け出して行ってしまった。

「ちょっとー!」

 コナンが呼びかけるが3人はもう前だけに夢中らしい。さて私も追いかけるか、と思ったところで、コナンがある方向を見つめていることに気付く。その視線の先には外国人らしきスーツ姿の男たちが数人立っていた。しばらく見ていると、コナンも見られていることに気付いたらしい。

「ごめんね葵ちゃん。すぐ行くよ」

 そう言って何事も無かったかのように3人を追いかけ始める。若干心残りに思いながらも、私もその後に続いた。


***


 あれから5人で一緒になって様々な洋服店を探し回ったが、お宝らしきものは一切見つからなかった。それどころか店を荒らしたおかげであちこちから大目玉を食らってしまい、正直もうぐったりである。

 結局、暗号が指し示しているのは洋服屋ではなかったとわかり、振り出しに戻ってしまった。日はだんだんと暮れはじめてしまっている。お腹が空いたから何か食べようか、という歩美の提案に賛成しようとするとコナンが咄嗟に遮った。

「ねえ、本屋に寄ってかない?」

 本屋じゃ何も食えねえぞ、と元太に言われつつもコナンはどうしても本屋に寄りたいらしい。とりあえずみんなで本屋に行くことにした。
 3人は真っ先に漫画コーナーへ向かい、漫画の立ち読みをしているようだった。私はそこまで漫画に興味ないしな……と思い、なんとなくコナンについていく。

「葵ちゃんもマンガ読んでていいんだよ?」

 暗に『あっちにいけ』と言われているような気がしたのでにっこり笑って「あおいのことは気にしないでー」と言えばコナンは拍子抜けしたような顔をする。彼が真っ先に向かったのは辞書コーナーだ。なるほど、紙切れに書かれていた"ORO"について調べるらしい。そして調べた結果、"ORO"はイタリア語で"金"だということがわかったのである。

「じゃあ、これってもしかして……」
「本当に宝の場所を……!?」

 コナンと目を見合わせ、共に紙切れに目を落とす。そして3人を連れて本屋を出ると、駆け込むようにハンバーガーショップに向かった。だが彼は注文したものに手を付けようともせず、真剣な顔つきでペンを走らせている。どうやら暗号解読に本気を出し始めたらしい。3人はそんなコナンを見て不思議そうにしていた。しばらく静かにしてあげようよと私が言えば、3人は小さく頷いてその成り行きをじっと見守っている。

「あークソ!」

 苛々と頭を掻きむしる。あまりはかどってはいなさそうだな。そんな時、窓の外を見ていた歩美がふと何かに気付いて窓に近づいた。

「あー! 見てみて! もしかしてあれじゃない? あの看板! 2番目の図形にそっくりよ!」

 歩美の言葉に、私たちは窓の外に視線を向ける。歩美の指さした先にある看板は確かに、2番目の図形と酷似していた。ということは残りの図形も、どこかの看板を指示しているのかもしれない。店を出て、看板の形を改めて2番目の図形と照らし合わせた後、元太は嬉しそうに言った。

「じゃあ、ここに書いてある看板の形を辿って行けば宝に……!」
「でも、これからどっちへ行けばいいんでしょう?」

 次の看板への手がかりを探そうと辺りを見回していると、コナンがタワー横にある月は「月見通り」を意味しているのではないかと言い始めた。その言葉を信じ、私たちは月見通りへと向かう。

 次々と看板を発見し、謎解きは順調かと思われたのだが、どんなに探しても5番目の星形の看板が見つからない。東都タワーから水族館までの間の月見通り沿いにあると踏んでいた私たちは首を傾げていた。もしかして彼の推理が間違っていたのだろうか。そう思って彼を見ると、暫らく紙切れに視線を落とした後ハッとしたような表情で空を見上げた。そこに浮かぶのは大きな三日月。

「そうか! わかったぞ!」

 そう叫び、コナンはもう一度最初の場所に戻ると言って駆け出してしまった。体力が無い私は正直もうヘロヘロなのだが、ついていかないわけにはいかない。なんとか東都タワーまで戻ると、コナンは得意げに説明してくれた。

「この暗号は、ネオンの形を書き並べた宝の地図なんだ」

 そして2番目の図形のネオンを真っすぐに指さす。そこにあったのは紛れも無く2番目の図形と瓜二つなネオンだったのである。

 そこからは実に早かった。私たちは図形と同じネオンを次々と発見していき、ついに6番目のネオンがあるビルまで辿り着いたのである。だが最後に書いてある魚型の図形がどうしても見つからない。まあそれもそうだろう。この辺りは確か住宅街だったはず、ネオンなんてあるとは思えない。近くにある川に行って魚を調べてみたが、特に何か見つけられそうもなかった。

「どうする? コナンくん」

 私が尋ねるとコナンは紙をもって辺りを見回していた。すると、ある方向を見て彼は不意に動きを止める。そして勢いよく6番目のネオンがあったビルを見ると、唐突に笑い出した。そして得意げに言い放つ。

「やっと見つけたんだよ。光る魚をな」

 そして私たちはコナンと共に、6番目のネオンがあったビルを上っていた。他の3人は不平不満を言いながら登っていたが、直前に彼が見ていたもので何となく何が言いたいかわかってしまった私は、期待に胸を膨らませながらうきうきと上っていく。そして最上階付近の部屋にたどり着くと、コナンは窓の外を見て言い放った。

「まあここから外を見てみなよ」

 よくわかっていない様子の3人は、窓の外を見て驚きの声を漏らす。

「水面に橋の証明が映って魚型に!?」
「魚の目は手前のビルのライトね!」

 これで、ここが本当の宝の場所だと言えるだろう。おそらく魚の形が綺麗に見える位置に宝があるだろうと、コナンが紙を見ながら一歩ずつ下がっていく。何歩か下がると、コナンが何か小さなものを踏んだような音がした。それから窓付近に天井から垂れていたロープを引っ張り始める。すると、いくつかの金属片が地面に落ちる音が部屋に響く。宝だ!と元太が飛びつこうとした次の瞬間、それは何者かによって拾い上げられてしまった。

「ご苦労だったな、ボウヤ達」

 拾い上げたのは見慣れないスーツの男達。確か東都タワーの前にいた……。私が思い返している間に、元太は勇敢に男にしがみついて拾ったものを返せと声を荒げている。

「それ俺たちが見つけた宝だぞ!」
「よ、よせ!」

 コナンが大声をあげて止めようとしたが既に遅い。元太は男たちによって殴られ、私たち5人はロープでぐるぐると拘束されてしまった。男たちは宝のありかにまだ気が付いていないようで、部屋中を探し回っている。

「何なんですか? あの人たちは……」
「おそらく、イタリアの強盗団だよ」

 コナンの言葉を聞き、歩美と元太は驚きの声を上げる。そういえば私もニュースで見た気がするな。

「じゃあさっきの金貨って……」
「その通り!」
「!」

 歩美の言葉に、男のひとりがニヤニヤしながら答えた。そしてこの金貨はイタリアの銀行から奪ったものだとか、ボスが裏切って日本に逃げたとか、風で飛ばされてしまった暗号を拾った私たちがどんどん解いていくのを見て泳がせていたんだとか、つらつらと聞かれても居ない事を喋ってくれる。そして懐からそっと拳銃を取り出した。それを見た途端に震え上がる3人。銃口は真っすぐ私に向けられる。

「葵ちゃん!」
「葵!」

 焦ったように4人は声を荒げる。男は銃口を私に突き付けたまま、コナンに視線を向けて言い放った。

「さあ言え! 金貨はどこにある! さっさと吐け!」

 さもなくばこのガキの命はないぞ! その言葉にコナンは眉間に皺を寄せて男を睨みつけた。そしてゆっくりと口を開く。

「……魚だよ」
「何?」
「暗号に書いてある魚の図形と、外の夜景が一致する場所に、金貨は隠されているんだ」

 そう言うと男は銃をしまい、紙をもって私たちの傍を離れた。他の男たちに指示を出して、一緒に探すらしい。

「コナン、なんで教えちまったんだよ!」
「宝が見つかったら僕たち、殺されてしまいますよ」

 不安そうに言う光彦。多分どっちにしろ殺されるとは思うのだが、まあ黙っておこうか。それから3人は徐々に気分を落ち込ませていく。そしてしまいには「母ちゃん……」「お父さん……」「ママ……」と俯き、泣き始めてしまった。
 私の頭にも彼らに倣って立の顔が浮かぶが、どちらかというと残してきた書きかけの原稿の方が気がかりでならない。あれを作者死亡による未完のままにするわけには……。

「諦めるのはまだ早いぜ」

 不意にそう言ったコナンの言葉に、3人は涙を浮かべたままきょとんとしている。まだチャンスはあると、コナンは目を強気に光らせていた。どうやら何か作戦があるらしい。私はきっと彼ならやってくれるだろうと心の中で信じていたためすぐに作戦内容を聞き出そうとする。
 だが弱気になった3人は、僕たち子どもだし、と泣き言を漏らしていた。そんな彼らを一括するようにコナンは声を潜めて力強く言いはなつ。

「俺たち少年探偵団だろ!」

 その言葉にハッとする。3人は泣くのをやめ、元の真剣な顔つきに戻ったようだ。

 コナンの指示通りに、まずは男たちに気付かれないようゆっくり立ち上がる。男たちはちょうど金貨の袋がある位置の真下辺りで紙切れとにらめっこしていた。そうして足音を立てぬようこっそり移動し、紐のすぐそばでタイミングを待つ。すると少しして、男たちは真上の金貨に気付いたらしい。その瞬間、コナンが大声で叫んだ。

「走れーー!!」

 思い切りロープを引っ張り、なんとか男たちの上に金貨の袋を落下させることに成功した。男たちは気を失っているらしい。

「「「「「やったー!!」」」」」

 歓喜の声を上げる。少年探偵団、初手柄の瞬間だった。
 それから私たちはすぐに交番に駆け込み、事のあらましを説明。強盗団は無事逮捕された。


***


「へえー、凄いわねみんな! あんな暗号解いちゃうなんて!」

 数日後、私たちはコナンの家である毛利探偵事務所を訪れていた。俺が僕がと得意げに話す光彦と元太の話を、歩美が遮る。

「違うでしょ。暗号を解いたのも、強盗団をやっつけたのもみーんな、コナンくんのおかげだよ!」

 突然話を振られたコナンはきょとんとしている。対する歩美は目を輝かせながら「とーってもかっこよかったんだから!」と言った。それを聞いた蘭がコナンを見れば、途端に照れたように笑いだす。

「コナンくん……ありがとう」

 そう言ってコナンの頬にキスをした瞬間、光彦と元太が崩れ落ちたのを見て、思わず笑ってしまった。コナンは蘭への弁解でそれどころではないだろうが。

 ……ここは私も空気を読んでキスを贈るべきだっただろうか?

 まあ何はともあれ、これで私たち少年探偵団初めての事件は一件落着したのである。