※夢主が妊娠してます
私のお腹に耳を当て、難しい顔をするのは此処最近の中也さんの日課だ。
「何か聞こえましたか?」
「うんともすんとも言わねえ、、」
相変わらず真剣な表情で私の腹部から離れない中也さんに思わず笑いそうになるが、ぐっと堪えた。この人は、いたって本気なんだから。
胎動が始まるのは、妊娠20週目以降だと産婦人科のお医者様は言っていた。しかしまだ私は10週目にも入っていない。お腹だって以前と変わらない大きさで、身体にこれといった変化は見られない。
それなのに、私の旦那様は妊娠が発覚したその日から毎日欠かさず、こうして私のお腹に耳をくっつけてる。最初はこそばゆく感じたこの行為は、今となってはすっかり慣れてしまい、お腹に感じる中也さんの体温に心地よさを感じる。
「中也さん、本当に私働かなくていいんですか?事務くらいならするんですけど」
「んなもん駄目に決まってるだろ。お前と腹の中の子供に何かあったらどうすんだよ」
「ええー。家にいても暇なんですよねえ」
「駄目なもんは駄目だ。首領も休めって言ってただろ?」
私の周りには、何故こうも過保護というか心配性な人ばかりなんだろう。紅葉さんにも「身籠った女子が働くなど言語道断」って言われたし。これではいよいよお腹が大きくなった時、それこそ歩くことすら許されないのではと思ってしまう。
「あー、女。頼むからなまえ似の女になれよ。いや、まて、やっぱ駄目だ。お前に似たら変な虫が寄り付くかもしれねえ、、」
「そんなことはないと思いますけど、、そうですね、私は中也さん似の男の子がいいです。あ、勿論女の子でもいいですよ。ていうかどんな子どもでも嬉しいです」
「当たり前だろうが。俺とお前の子供だぞ?、、でも待てよ、俺に似た男だったら絶対なまえのこと大好きだよな、、そうなると息子といえどライバルだな」
呟く内容と表情とがあまりにもミスマッチで思わず吹き出しそうになったが、中也さんは真面目に悩んでるんだから我慢我慢。ああ、なんて幸せなひと時なんだろう。
今まで、多くの命をこの手で殺めてきた罪深い私が、こんなに幸せでいいものかと自責の念に駆られたこともある。しかし、中也さんは「幸せになるのに資格なんかいらねえよ」と私の悩みをあっさり一蹴してしまった。
愛する人に愛されている、それだけでも怖いくらい幸せなのに、そんな人との子供を授かることができた。マフィアになると決意した時、人並みの幸せはおろか、家庭を築くなんてことは出来ないと覚悟していたのに。
「幸せ者ですね、私は」
「どうしたんだよ急に」
「ふふ、何でもないです」
お腹の中の小さな尊い命には、この会話はまだ聞こえないだろう。でも、この声は届かずともどうか、この愛だけは感じてほしい。
待ってるよ、あなたに会える日を。
愛される未来を
知っている
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