最近、あの戦好きのドクタケが全くそれらしき気配を感じさせないので名前は言えないがある城主の依頼で私はドクタケ城に潜入することになった。
タソガレドキの組頭のような手練れの忍者がいないため、あっさり侵入には成功した。
町で流れている噂によれば新しい事務員が入ったらしく、その事務員が頭のきれる凄腕な者らしい。
事務員という言葉に忍術学園の彼を思い出したがきっとあんなへっぽこではないだろう。
気を引き締めていかなくては。
天井裏に忍び込み、中の様子を窺ってみるとドクタケ城主、木野小次郎竹高の姿と自分とそう年が変わらなさそうな女の子が見えた。
「余はアミタケ城と戦をしようと思うのだが、どう思う?」
「駄目です。予算的にも戦力的にも負け戦になるのは目に見えています。第一戦う理由がないじゃないですか」
「気分じゃ!」
「余計に駄目です。戦なんかよりも、ほら、あれです。きっとピクニックにでもいった方が楽しいですよ。殿の馬も野原を駆け回りたいと思っているはずです」
「うむ……よし、では後日ドクタケ忍術教室も合同でピクニックを行う!」
なるほど、これがドクタケ城が戦をしなくなった理由か。
それにしても、あの木野小次郎竹高を丸め込むとは侮れない。どうやら町で流れている噂は尾鰭がついたものではなく、事実だったようだ。
いい話が聞けたところでそろそろ退散しようと思った時、それまで木野小次郎竹高を見ていた彼女の瞳が穴から覗く私の目をとらえた。
しまった、と思った次の瞬間、彼女は何事もなかったかのように視線をそらし「ああ、そういえば」と何かを思い出したかのような口振りで再び話し始めた。
「まだ仕事が残っていますので私はこれで失礼いたします」
「うむ。下がってよいぞ」
ぱたんと静かに襖を閉じ部屋を出て行った彼女がなんとなく気になったのでつけてみると、「ちょろいな」と言って事務室らしき部屋に入っていった。いったいどういうことだろうか。
そんな考えを張り巡らせていると向こうから足音が聞こえた。今日のところは引き上げるか。後ろ髪が引かれる思いがしたが気のせいだろうと言い聞かせドクタケ城を後にした。
しかしおもしろいものが見れた。これは報告のしがいがありそうだ。
依頼主のもとへ行く前に忍術学園に寄って父上にこの話を聞かせてあげよう。きっとあの三人組も目を丸くして驚くだろう。
もしも機会があれば話してみたい、自分らしからぬ考えを胸に風を切り走った。
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