バイトマスターHIRANO


「平野藤四郎といいます! お付きの仕事でしたらお任せください」

 桜と共に顕現する一振りの刀剣
 ああ、記憶が流れ込んできた。私は、成り代わってしまったのか。





刀剣男士に成り代わり in平野藤四郎



 かつて、ごく普通の人間でした。私は普通の一般人でした。
 資格をたくさんとって、就職先の希望もなくバイトをダラダラと続けていた普通の人間でした。今思えば私好奇心旺盛すぎて色んなバイトに手出して資格とって…なにがしたかったんだろうか、自分は。
 そんな私ですがバイト先で爆発事故が起きて死亡。転生した結果、私はネット上で流行っていた刀剣ゲームの平野藤四郎に成り代わってしまいました。どうしてこうなったんだろう。

「平野、君?」
「はい。どうぞ平野とお呼び下さい」

 まだ頭が混乱する。死んだと思ったら合法ショタ神様に成り代わっていたとかどういうことだ。幸い平野に関する記憶はあったから良いものの。

「この本丸の審神者です! ようこそおいでくだしゃいました!!」
「ふふ、よろしくお願いします主」

 この話し方からしてまだ新人なのだろうか、この審神者は。
 なんだか微笑ましいなぁとバイト始めた頃の自分や新人を思い出して笑ってしまった、ら、主が突如ドバァっと泣き出してしまった。

「どうなさいましたか、どこかお怪我を」
「あああ主って呼んでくれたああああああああああ!!」
「…へ?」




 鍛刀部屋で、立ったままなのもどうかと思ったので式神さんに出してもらった座布団に座りながら主を慰めつつ話を聞いてみた。
 どうやら、ここの本丸は引き継ぎで新人である主は認められず寂しい思いをしていたそうだ。ってか、剣道の達人な男より漢らしい男性審神者の後任にこんな小娘になんの補助もせず任せるってアホだろ。そらナメてかかられるわ。
 この本丸から僅かに漂う前任審神者の霊力から判断するに、前任よりは霊力が少し多く質が良いと判断できた。この霊力なら大丈夫だろうと適当に任されたのが推測できるな。

「大丈夫ですよ、主。これからは僕がいますから」
「うううわああああああんひらのくんんんんん!!!!!」

 ああ、店長に叱られてばかりな泣き虫後輩を思い出す。だが、これからはこの主が上司だ。ならば、私が全力をもって支えようではないか。
 本丸外の離れに、物の少ない部屋に敷かれた布団へ主を寝かせて私は誓った。
 今まで獲得してきた資格とバイト経験の力で、皇室御物短刀平野藤四郎の名にかけてこの主を自分だけでも支えてみせると。



 朝4:00
 昨日の夕飯がインスタントでここに来てからずっとそうだと語った主に思わず涙が出そうだった。
 まだ未成年の女の子だもの、料理といえば親が作ってくれるし授業で習っている程度では不安があるだろうからインスタントですませていたんだろう。なんて悲しい。
こんな子供に悪い食生活はさせられない。
 まずは食料の確保だ。式神に頼んだが届くのは昼頃だと言うので昼の分はまだ良い。だが大事なのは朝食だ。
 これからも成長するであろう主にはしっかりと朝食をとってもらわなければ。ただでさえ本丸運営に霊力を使うのだからしっかりと栄養をつけて欲しいし、健康にも悪い。
 女性なのだから気になるだろう美容やダイエットも気にするだろうからちゃんとしたものを食べさせなくては。大事なことなので2回言いました。


朝4:30
 ミッション1 朝食を確保せよ
 頼んだ食料が昼にならないと届かないので、朝食の分はこの本丸にある台所からかっぱr…分けてもらわないといけない。
 隠密機動偵察には自信がある。まさかスーパーの万引きを捕まえるために磨いた技術がここで役にたつとは!! おまけにこの超高性能短刀神様スペックだ、体が軽くてなんでもできそう…!!!!
 タッパーを風呂敷にまとめてミッションスタート。制限時間は朝日が昇り他の刀剣が起きてくるまでだ。ちょっとワクワクしてきた。

 まず向かったのは刀装部屋。
 なぜ台所ではなくここなのかというと隠密と機動を上げるために軽歩兵・特上を拝借するため。私はまだ鍛刀されたばっかりで今のステータスには不安があったからだ。そのためにこの金色の玉(略してはいけない)の力でステータスを上げて任務成功率を上げるという考えだ。
 前任が優秀だったからなのかごろごろと軽歩兵・特上があったので1ついただく。こんなにあればバレないだろう。

 刀剣の多いだろう廊下を避けて無事台所へ到着。味噌、米、卵などがたくさんあったのでタッパーに詰めて風呂敷にしまう。二人分の朝食だし、こんなもんで良いだろう。
 魚も欲しかったが、手にはつけない。数が多くいちいち数を数えないものならばバレにくいが魚は数がそんなにないのでバレそうだ。大事なのはバレないこと。バレてしまったら主がなんて言われるかわからない。刀装兵も手伝ってくれたので案外はやく終わった。
 ……これ、やってること完璧に犯罪じみてるよなぁ。


朝4:45
 泥b…食料の調達完了。これより帰還する。
 そろそろ朝日が昇ってきて起きた刀剣がちらほら。安全第一で遠回りしつつ離れへ向かう。
 よし、あとは外靴を履いて…

「そこにいるのは誰だい?」

 ああああああああ石切丸ぅぅぅぅぅうううううう!!!!????
 そうだうっかりしていたこの人平安時代出身な上に朝祈祷するから早いんだなんでとうらぶプレイしてたのに覚えてなかったんだ私!!!!
 来るなら燭台切か歌仙かなーって思ってたのに…そうだ

「おはようございます、石切丸殿」
「ああ、前田君か。おはよう」

 必殺・声真似の術。
 遠目であったし前田と平野はそっくりなのでごまかせるかと思ったが…意外とできた。
 偵察平均な石切丸だからできないかと思ったけど、意外とイケるわ。

「こんな早朝にどうしたんだい?」
「馬小屋のほうから変な物音がしたので様子を見に行くところです」

 そうだったのか、それじゃあね、そう言って祈祷部屋らしき場所へ去って行く石切丸さん。
 靴履く途中で風呂敷下ろしていたから影になっていて不信に思われなくって良かった。
 まさか好奇心でやっていた声優バイトや演劇バイトの演技練習が役に立つとは。
 知らない刀剣だ新任の刀だ追い出そう仲間に引き入れようなんて展開になんなくって良かったわ。
 さあ、主にご飯作らなきゃ。
 あ、ついでに畑から野菜持っていこう。


朝5:00
 無事離れに戻り、ミッションコンプリート。途中ハプニングがあったがまあ良いだろう。
 ご飯ご飯。


朝6:00
 離れに炊飯器とか現代の調理道具があってよかった。ご飯が炊けたところで主を起こしにいく。

「主、主」
「んんぅ…平野?」
「はい、おはようございます。ご飯ができていますので起きて下さい」
「んー……え? ご飯?」
「はい、僭越ながら朝食を作らせていただきました」

 嬉しい!! って顔を輝かせて飛び起きた主に身支度を済ませるように言って、ご飯をよそいに部屋を出る。
 朝食のメニューは白米、味噌汁、卵焼きにベーコン。それだけなのに久しぶりの白米と感動する主に私は涙が出そうになった。一体どれほどの期間をインスタントで過ごしてきたのだろうかこの人は…。




朝7:00
 朝食を食べながら主とこの本丸についてお話する。ちなみに一緒に食べましょうと言ったら一緒に食べてくれるの、とまた泣いてしまった。寂しかったんだろうかわいそうに。
 前任者は剣道やってて霊力はそんなに無いものの優秀な審神者だった。だが歳には勝てずに引退。その後にやってきたのがこの主だ。
 前の主が忘れられずについ後任を拒絶してしまっているんだそうだ。主を転々としていた鶴丸は協力的で宗三などは中立的。逆に若い刀剣(堀川派の刀剣や新選組の刀など)が出て行け主を返せとダダをこねて…はあ。マジでか。
 で、言うこと聞かずにヒキニートな刀剣ズ。主(前任)じゃなきゃヤダヤダなもんで日課任務できずひたすら鍛刀とかできることやっていたら私が来た、と。
 ちなみにこの本丸には平野・博多・虎鉄上下・明石意外全員いるんだとか。わーお。

 食べ終わった頃に鶴丸殿が来て挨拶しました。腰ほっせえなこの人。




朝9:00
 働きたくない? なら放っておけ。
 元カレが忘れられずにジメジメしてる刀剣はひとまずおいといて、主と鶴丸殿と私でお仕事しましょう本丸の刀剣は今は諦めましょうと言ったら主はなんだか安堵したような表情を見せた。
 きっと、刀剣をどうにか立ち直らせなければという思いと任務をこなさなければという思いで押しつぶされそうになっていたのだろう。若い刀剣からは酷いことを言われたこともあると鶴丸殿から聞いて悲しくなった。

まずは日課任務と書類仕事をどうにかせねば。
まだ私の練度は少ないというか1なので遠征などは鶴丸殿にまかせる。今までは二人しかいなくて本丸で主を守る刀がいなくってできなかったが、今日からは私がいる。

 朝10:00
 頃合を見て休憩を挟みつつ書類仕事。
 
 主はどんな風に書けば良いかわからず何回もやり直しを言い渡されていたので書類仕事がたくさんある。
 だけどもう大丈夫。私が深夜審神者部屋に忍び込み過去の書類や手記を見て学び、主に教えながら仕事をしていたために、たまっていた書類は夕食までには終わりそうだ。
 ワープロ検定を受けてブラインドタッチなんぞ楽勝。データ入力や書類作成なんてお手の物。主から「これが神様…!!」と感動されました。ただのバイト技術ですよう。




 昼12:00
 鶴丸殿が遠征から帰ってきて食料も届いたので、昼食に。
 主はインスタントばっかで麺類は飽きているだろうと思うので献立はオムライスとサラダ。鶴丸殿も絶賛してくれました。
 かつて料理屋でバイトしていたし、両親が共働きのために兄弟によく作っていたものですからこれくらい余裕余裕。




 昼1:00
 腹も膨れたところで出陣しましょうか。
 本丸に主置いていくのも不安なので三人で行くことに。
 弱い敵がいる戦場で、一人が戦い一人が護衛という形で進むことに。
 まずは練度上げのために私が戦っていたのですが意外と敵弱い。
 力仕事の必要なバイトで鍛えられ、スタントマンのバイトで養った身体能力とスーパーで身に付いた強盗撃退術駆使したら意外といけた。
 主だけじゃあなくって鶴丸殿も褒めてくれたから常時桜が舞うわけだから更にいけた。
 神様スペックすげー。




 夕方4:00
 疲れるまでやってみるかとの予定だったがもう帰ろうと言われたのでそれに従う。
 あんまりにも映画のように軽々と動けるもので楽しくってガンガン行っていたら検非違使まで倒していたらしく、帰る間際に気づけば主と鶴丸殿に化物でも見るかのような目で見られました。解せぬ…と思ったがいつのまにか鶴丸殿の練度に追いつきそうになってた。
 でも、皇室御物ですよ? これくらいできなくってどうします?




 夕方6:00
 お夕飯の時間です。
 私の作ったお昼ご飯を見てからこっちで食べたいと言い出したので今日は三人です。
 あっちでのご飯は良いのだろうか、と尋ねればあっちはあっちで葬式みたいでつまらんとのこと。そんでもって、刀剣にとって食事は娯楽であり足りない霊力補給の手段のようなものだから普段から食べない奴もいるとのことで怪しまれないだろうと。
 お夕食は生姜焼き定食にしたけど……本当にこの二人はおいしそうに食べるなぁ。
 こんなに美味い料理が作れるだなんて驚きだ、の声をいただきました。
 なんだか、成り代わる前の弟達を思い出してしまった。




 夜
 私のご飯が気に入ったので明日からここで食べたいとのお言葉を頂いたので、明日からは三人分を作らねば。
 出陣記録などの簡単な書類仕事をして、主は就寝。
 私は明日の準備をしてから寝た。



翌日
朝6:00
起きた主と鶴丸殿と一緒にご飯食べたあとは書類仕事をさせる。昨日教えたしメモしていたのである程度は私がいなくても大丈夫だろうと判断し、本丸のほうへ。
……この本丸、汚いなぁ。
離れも少し汚かったけど主が住んでいて最低限の綺麗さはあったし、掃除の仕方なんかも教えれば主はすぐに覚えたし。うん、良いお嫁さんになりそうだ。
 だけどこの本丸は汚い。廊下の端や障子をよく見ればホコリがつもってるしひどいところでは髪の毛がふつうにおちている。汚い。
 前任の審神者が引退して落ち込んでいるのはわかるし時がたてば気持ちの整理ができるだろうと思ってたけどこれは駄目だわ。
 こんなに汚ければ良くなるものもなんともならんわ。
 主と鶴丸殿からこの本丸状況について聞いたので遭遇してもまあ大丈夫だろうと思っていたけど、自分だけではこの本丸掃除は難しい。
うーむ……。




 昼1:00
 演練は一週間に一回。今までは鶴丸殿だけでは心もとないので参加していなかったそうだが今回は参加させてもらった。
 刀剣の練度を安全に上げるのも大事だが、他の審神者と交流するのも大事だ。
太刀と短刀だけでは不安だろうが別に勝たなくても良いんだし。

 なんでも主は演練には初参加だそうで。お上りさんみたくキョロキョロする主について会場へ。
 色んな審神者がいたが、比較的優しそうな審神者さんにロックオンして演練を申し込むように主へ助言する。

「あああの、ははじめましてよろしくお願いします!」
「はは、新人さんかな? こちらこそよろしく」

 緊張しすぎだ、主。
 さてさて、こちらも集中せねば。
 相手は中堅だったらしくなかなかに練度の高い刀剣ばかり。
 弱音を吐いている鶴丸殿の尻をはたいて(位置的にはたきやすかった)叱咤激励。
 相手は、こちらが二人だけでしかも一人は短刀で練度が低いからと油断している。
 五車の術の哀…とでも言おうか。
 確かに、私平野藤四郎は実戦よりも警護やお付きだったことのほうが多いし戦いは好みではない。

 でもね、もぐり込んでしまえば、僕の間合いですよ


演練開始の合図が出された。

幻術で作られた戦場に立つのは8振りの刀剣。
一方は、歌仙兼定を部隊長とした小夜左文字、太郎太刀、次郎太刀、御手杵、蜻蛉切の六人部隊。
一方は、平野藤四郎を部隊長とした鶴丸国永の二人部隊。

誰もが勝利を手にするのは数が多い部隊のほうだと思うだろう。
だが平野の目にそんな意思は感じられず、哀れに思うものさえ出ていた。


まず初めに動いたのは歌仙だ。投石兵を使い敵を一掃して終わらせるつもりだったのだろう。だがその考えは甘く、平野が銃兵を使い投石全てを撃ち落とし、余った弾で練度が高い蜻蛉切を撃破。
さすがの蜻蛉切でもヘッドショットの威力には耐え切れず倒れてしまった。
唖然とした会場。だが平野はここでは終わらない。


「鶴丸殿、短刀と打刀を任せました」
「わかった」


 短い言葉で指示を出し、平野は駆ける。狙うは槍の御手杵。大太刀も驚異的だが貫通力のある槍のほうがもっと恐ろしい。
そう判断した平野の行動は早く、重い槍で突かれぬよう斜めに避けつつ足の間にもぐりこみ地を蹴り、振り返りに首を一閃。これであと4振り。
御手杵の体を蹴り上げ、近くで仲間ごと斬ることができずにいた次郎太刀に一突き。あと3振りというところで小夜左文字がこちらへ向かってきたが鶴丸が立ちふさがり相手取ったので問題はない。
 平野が地に降り立つ頃には歌仙は鶴丸に打ち破れ、戦場に立つのは小夜左文字、太郎太刀、平野藤四郎、鶴丸国永の4振りのみ。

だが、小夜左文字は今鶴丸に力の差もあり倒され、とうに1対2の状況に。


ここまでほんの一瞬の出来事だ。まだ決着はついていないもののここまで追い詰めるとは誰もが想像していなかっただろう。


「鶴丸」
「ああ」


 刀を構え真正面から太郎太刀へ向かう鶴丸。だがこの3振りの中では太郎太刀が最も練度が大きく鶴丸とかなりの差がある。無茶だと誰もが思ったが、鶴丸の背を踏み走り飛ぶ平野を見てそれは陽動だと知る。


「もぐり込んでしまえば、僕の間合いです!」
「くっ、薙ぎ払う!」


平野を暴風のような大太刀が振り落とされ叩き落とされるものの、太郎太刀は膝をつき崩れることとなる。
鶴丸がすでに、太郎太刀へ一撃をおとしていたのだ。
平野からの攻撃を避けるために太郎太刀が刀を振り下ろしたは良いが、すぐに鶴丸の攻撃が下からせまり来ていたのだ。


「予想外だったか? ガラ空きだぜ!」


上の平野を見ながら下の鶴丸は見れない。その上、太郎太刀の刀は重く攻撃を受けるために持ち直すことで隙ができてしまうので、そこを突かれたというわけだ。


戦場には、2振りの刀剣。
勝者は平野率いる部隊のS勝利で終わった。


*   *   *   *   *


午後2:00
演練後
 うむ、初戦にしてはやりすぎた感があったけど良い出だしだったでしょう。日課分やってなかなか良い戦績ができた。流石にカンスト部隊には負けたけど。
 勝つ度に鶴丸殿がすごいすごいって高い高いしてくるのは解せぬ。でも楽しいから許す。あと、他所の短刀とかがキラキラした目で見てくるのはなぜかしら。不思議。


 主も慣れない場所で色んな人に会って疲れただろうし、今日はもう帰ることにした。
 鶴丸殿よ、抱っこしたまま帰るのはやめてくれ。自分で歩ける。……嫌? 解せぬ。




午後2:30
 ここがあの刀のハウスね!! なんて、どっかで聞いたことがあるような台詞を脳内でほざきながら粟田口部屋の前で仁王立ち。
 にちゃんねるがあれば安価するんだけどなーとか安価したらどんなのが指定されるかなー考えながら私がとった行動は。

「こんにちはーーっ!!!」
「「「!!!??」」」

 襖スパーンと豪快に開けてーの挨拶でした。挨拶大事。

「ひ、平野!??」
「さあ、皆さんお掃除しますよ」
「…は?」




 午後3:00
 みんなで仲良く大掃除。
 ご挨拶も簡単に済ませて掃除すると言ったら皆が( ゚д゚)ポカーンとした表情は非常に愉快でしたが、この本丸が汚いってことといつまでもイジイジしてんなそれでもタマついてんのかってのを八つ橋に包んだ上にオブラートで包んだ説得をすれば皆掃除をしてくれるようになりました。病は気からって言うし、いつまでも落ち込んでいるより何か行動して気を紛らわせるほうが良い。
 後からやってきた蛍丸や愛染とかもいたけど、

「あれ、平野? どうし「初めましてお掃除しましょうか」

 で、ゴリ押しした。
 皆さ、今頃本丸が汚いって気づいたからお掃除してくれました。素晴らしい。
 成り代わる前にいた弟なんて全然掃除してくれなかったぞオニイサン嬉しい。




午後5:30
とりあえず、一通りお掃除は完了。皆もスッキリした表情をしていて、別人に見えた。初めて彼らを見たときは幽霊かと思うくらい暗い表情をしていたのに。
皆神様だもんね、住んでいる場所に大きく影響されちゃうもの。
あー、疲れた。流石に疲れた。



午後6:00
お夕飯作って、主が作成した書類を軽く見直してみる。疲れただろうと調理を手伝ってくれた鶴丸殿に感謝。
なかなかに飲み込みがはやく仕事は全て完璧にできており、担当さんにも良くやったと褒められたのだそうだ。私からも褒める。私は褒めて伸ばすタイプなのだ。

午後7:00
書類をまとめて、あとは提出するだけ。
疲れたから風呂入って寝るかと思ったら鶴丸殿に連行された。なんだよ裸のつきあいか? 疲れてるし適当にまかせるか。
着痩せするタイプかと思ったらそんなんでもねーわ細いです鶴丸殿。
頭洗ってもらった。




翌日
朝6:00
朝起きたら隣に鶴丸殿がいて思わず蹴り上げてしまいました。驚いたか、じゃない。心臓が口から出るかと思った。何にもないですよ、お互い服着たまんまだったし。
……なにもないってば。

朝食作って食べて、朝のお仕事。主も仕事のコツがわかってきたので私だけで簡単な遠征に行ってくる。ゲームでは遠征って簡単な説明だけでなにするかわかんなかったから、楽しみだ。


朝9:00
時代は江戸の記憶、公武合体運動。内容は合計レベル50以上の部隊を自由に編成し、見回りを行おう! だ。
遠征時間は1:30。
本当に見回りだけだった。大雑把に言うと幕末の政治運動の見回り。ピリピリした空気が印象的だったが、こうして過去の出来事を見ることは新鮮だった。
あ、小判めっけ。



午前10:30
小判初めて見たけどすんごいピカピカ。主褒めてくれるかな。
本丸へ帰る途中に、寂れた祠があった。
なんだろう、これ。
簡単に周りを掃除して、枯葉を払って礼をし、帰る。

本丸の面倒事が解決しますように。




午後1:00
本丸の地理を覚えるために歩いていたら、燭台切さんに会いました。身長とか眼帯とかも相まってガチ怖い。なんだこの人やくざ? 見下ろしてくんのも怖い。
プルプル僕悪い刀剣ジャナイヨー

「ああ、こんな所にいたんだ」

 優しい声でわざわざ屈んで目線合わせてくれましたイケメン。
 おい誰だこの人やくざなんて言った奴は。……私か。
 なんでも、鶴丸殿から私の作るご飯が絶品だと言うことと、本丸大掃除を言いだしたのが私と言うことで接触に来たのだとか。ほう。
 すごく助かった、と言う礼と交流のために料理を教えてくれないかとのことなので、夕飯作りを手伝うついでに教えることに。

午後2:00
 離れに向かうとわちゃわちゃしている我が兄弟と+@。気持ちの整理ができて新しい審神者と向き合うことができたので、まずは相手を知るために交流に来たのだとか。
 見たところ仲が良さそうだし、一兄も遠目ではあるが観察をし、主たりえる人物かと見て判断しようとしている。ま、大丈夫でしょ。
 皆のために、おやつでも作りますかね。

 午後3;00
 材料は簡単。お水とアガーという粉だけ。
 お水とアガーを鍋でよーく混ぜて、加熱。途中でこちらの様子を伺っていた五虎退と前田に手伝ってもらい、主に特付けお祝いに買ってもらった無印の製氷シリコンカップに注入。冷蔵庫で1時間冷やせば完成。
 お皿に分ける頃には、五虎退や前田の他にも主や一兄などギャラリーが増えていてビビった。

「わあああ!! すっごくキレイ!!」
「水晶みたいにキラキラしてます!」
「プルプルしてるー」

 あとはきなこと黒蜜をかければ、はいそうです。水信玄餅のできあがりです。
 これ、山梨県にあるお店で作られた夏限定スイーツ「水信玄餅(みずしんげんもち)」を真似してまして、水晶のような美しさと想像を超える食感でおいしいんですよね。
 ちなみにこの水信玄餅は最近作られたもので、女性考案。名前もお客様から応募されたものを採用したようです。
 前世でこれ食べたかったけど遠かったから買いにいけなくってネットで作り方検索したのが始まりだったなぁ。見て楽しめる。食べても楽しめる。良いお菓子ですよこれ。

 物陰で羨ましそうに今剣が見ていたのでわけてあげた。花が咲かんばかりの笑顔でお礼言われて、前世での末っ子思い出して微笑ましくなった。
 今剣におぼん持たせて、後片付けにはいる。今剣には仲の良い岩融や他三条の刀剣がいるから、これでも食べて元気出して欲しいものだ。皆で食べてね。

 ……片付けしようとしたら、薬研達に仕事とられていた。
 え? 昨日から働きっぱなしだからすこし休めって? 誰から……ああ、鶴丸殿が。
 別に平気ですよ常時桜舞ってるんで疲れないから仕事させろ。駄目? ぐぬぬ。

 八つ当たりに鶴丸殿の膝を借りて昼寝してやった。夕飯時まで。起きた頃にはすんごい痺れていたとさ。突っついたらすんごい反応したのが楽しかったです。



 午後9:00
 昼あんなに寝たんだから眠れないだろう良ければ一緒に寝ないかと鶴丸殿がやって来ました。修学旅行の夜かよ。
 だけど私はここでピンときた。昼の仕返しに怪談話でもして余計に眠れなくさせる気だな? と。前世で弟がそんなんだった。
 ふはははは残念だったな鶴丸よ。現代で生きて怪談話を暇潰しに読んできていた私にその手段は通用しないのさ!!
 先に部屋に行っててくれと言い、軽い仕事をして屋根裏から押入れに入り寝た。青い狸の影響で、押入れで寝るのが夢だったんだ。
 翌日、鶴丸殿にどこ行ってたんだとか言われたけど、私はこの部屋で寝たと言いましたよ。嘘言ってないもん。




 翌日
 昨日見た祠が気になって、ちょっと出かけてみた。
 粟田口の刀剣達も遊んでくれるしお菓子もくれる優しい主に心を許しているので、私がいなくても大丈夫だろう。昨日、一期と薬研だけを呼び出して主を見ていてくれるように頼んだら当たり前だと言われた。うむ。
 昨日の出来事やら今までの努力が認められたらしい。主、良い人だもの。これからの成長が楽しみだし、長い目で見ていけば良いと気づいたのだろう。

 出かけるために門へと向かおうとしたら、主も一緒に行くとのこと。たまにはお散歩がしたいのだそうだ。



 この祠は、本丸を司る屋敷神が住んでいるんだそうだ。
 審神者だけの霊力だけでは本丸運営ができず、この神様の居る屋敷(本丸)に住むことで霊力を高め清めるんだとか。神の住む場所に神の司る屋敷をあてがうことで心地よい生活ができるから、とも。
 普段から戦場で良くないものと戦うために、それらを払ってくれる存在です、と教えられた。

 なぜこんなにも寂れているのかと問えば、屋敷神を審神者研修で習うようになったのが最近だから前任は知らなかった故にこうなっていたのだろうって。
 主と一緒に祠を改めて掃除してお供え物をして、礼をする。


 午前9:00
 主と手を繋ぎながら本丸へ戻る。
 門に太郎太刀がいて驚いたが、屋敷神に挨拶をしていたと言えば今度は太郎太刀が驚いて、本丸の中へ戻って行った。なんだったんだろうか。


 午後11:00
 日課のための鍛刀をしましょう。主と近侍の私とで。
 3人の鍛刀式神にALL50で頼む。できた刀剣は私の連結素材だ。
 主は刀剣ができるまで、隣にある連結部屋で連結の仕方を式神から教わるということで、私は一旦退出させてもらう。お仕事の邪魔にならないよう外で待機させてもらいます、と。




 さて、何か御用でしょうか。同田貫正国殿。


*   *   *   *   *


 俺らは武器なんだから、強ければ良い。

 以前の審神者は、そりゃあ強かった。剣術に長けて戦況を理解してよく俺を戦場に出してくれた。歳で引退しちまったのが残念なくらいだ。まだあの審神者は現役だっただろうに。
 次に来た審神者は女で、刃物すら握ったこともなさそうなひょろい奴だった。こんなんで指揮をとれるのか? まともに戦わせてくれんのか? 全てが不安でしかなかった。


 だが、それは全て杞憂だった。





 前の審神者が呼べなかった短刀を見ればわかる。
今の審神者が呼んだという平野藤四郎は子供のような見た目に反し、強者の放つ覇気を持つ素晴らしい刀剣だと見ただけで理解できた。
まだあいつが顕現されて一週間もたっていないと言うのに、この練度の差は一体なんだ。隙を一切見せない身のこなしはなんだ。

 戦ってみたい。



 あの短刀と戦いたい。戦って、実力を知りたい。
 あの短刀を呼び出した審神者の裁量を知りたい。

 一度そう願ってしまえば行動は早い。平野を探せば鍛刀部屋から出てきて、まるで最初から解っていたかのように、あえて俺に問う。



「さて、何か御用でしょうか。同田貫正国殿」
 ああ、良い目をしていやがる。


*   *   *   *   *


午後12:00
 なんでも同田貫殿は私との手合わせをご所望のようだ。はいはい。
 まあ、私を通して主はどんな裁量をするのか、鍛え方や戦わせ方などからどんな人物かを判断するために私との手合わせを頼んだんでしょうね。ほらアレだよ、ジャンプみたいなのによくある殴って友好を深め合うみたいな。そんなんだと思う。


 了承の意を示せば、道場で待つとの言葉を受けこの場を去っていった。
 主―もう大丈夫ですよーやくざみたいに怖いオニイサンはいませんよー戦闘不足で今にも首寄越せとか言いそうな怖いイニイサンはいませんよー。大丈夫だってばー。

 お昼は何にしよっかなー。え? オムライスって鶴丸殿いつにまに。オムライス食べたばっかじゃあないですか。……主もオムライスが良いの? しょうがないなぁ。




 午後1:00
 同田貫殿と手合わせするために道場へ。なんで鶴丸殿がここにいるんですか。あ、当番だったんですか失礼しました。
 挨拶もそこそこに、木刀を手にすれば掛け声をあげて真っ直ぐ突き向かってくる同田貫殿。そんなバカ正直に向かって来たら、太刀筋を読まれてしまいますよ?


 ああ、ほら。








 カラン、と背後から乾いた音がした。
 目の前には木刀を弾き飛ばされ、首筋を僕に充てがわれている同田貫殿。

「私はまだ顕現されて5日とたたん新参者です。だが主の采配によって、私は君よりも練度が高くなりこの本丸でもなかなかの強者と相成った」
 これからに期待すると良いですよ、きっと。

「……あんた、本当に短刀か?」
「短刀だからこそ、ですよ」



 午後2:00
 鶴丸殿に高い高いされるは偶然見ていた主にも高い高いされるわやめてええええはしゃいじゃうのおおおおおなひと時でした。子供の体って恐ろしい。
 同田貫殿に怪訝な顔された。なぜだ。


 午後3:00
 キレイなお庭の見える縁側で、主からもらったお団子を食べながらお茶を飲む。ふぃー。
 穏やかだなー暇だなーと思っていたら、背後から和泉守が現れた。


「チッ」

 おおう舌打ち。

「あんな女にベタベタしやがって」
「……」
「剣も握ったことの無いようなガキに務まんのかねえ」
「……」



 和泉守の長い足を払い倒れさせ、眉間スレスレに鋭い団子の串を充てがう。





「若造風情が。身の程を弁えろ」
 彼は、まだ若い。
 まだ知らないことが多すぎる。
「女だからとどうした。剣術の心得が無いからどうした。幼いからどうした」

 ならば、年上の者が教えてやれば良い。

「今の時代審神者に性別など関係無し。自ら戦う訳でもないから剣術なんぞ無くて結構。若いのだからこれからを期待すれば良いだろう」
「一番大事なのは我々刀剣を上手く扱えるかどうか、それだけだろう?」


 小さく「わるかった」との声が聞こえたので良しとするが、言う相手が違うだろうと言えば離れへ向かって行った。
 もともとの持ち主が荒い性格だったためにしかたないか。他の刀剣は様々な人間の所を転々としているので慣れてはいるが、若く新選組での思い出が強い和泉守はついあのように反発してしまっていたのだろう。子供の反抗期のようなものだと思われる。前世でも、兄弟があんなふうになっていたしなぁ。



 君も大変だったね、堀川君。お茶ありがとう。







 午後6:00
 よければ一緒に食べようよ。と、燭台切さんに誘われました。主と一緒に。




 ああ、見れば主は加州殿と仲が良さそうにしている。良いことだ。
 兄弟から聞くに、他の刀剣が強く主を反発してしまっていたから仲良くしようともしにくかったとのこと。だけど、主は私が出陣などでいない間にも刀剣を説得したりして、無事主と認めてもらえたのだそうだ。よかったよかった。

 私と燭台切さんと歌仙さんで作ったご飯は美味しかったです。作ってる最中に、あの雅な菓子を今度教えてくれと言われ、何のことやらと思ったけど水信玄餅のことだったようで。良いですよ、と言ったらはにかんでくれて天使、いや天女のようだと思いました。流石刀剣男士うつくしい。


 兄弟と一緒にご飯を食べて、いつもより賑やかで。前世を思い出す。親がいるからお金は大丈夫だろうけど、兄弟は今元気だろうか。コンビニ弁当ばかり食べさせられてないだろうか。それなりに料理を教えていたが、すこし不安だ。

 ちょっと涙目になりかけて、一兄に頭を撫でられた。よく頑張りましたね、って。涙見られたかな恥ずかしいと思いつつ撫で返した。一兄も頑張りましたねーって。適当に。ロイヤルスマイルふつくしい。
 なんです鶴丸殿、貴方も撫でて欲しいと? しょうがないですねぇ


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