Prologue

灰骨の向こう側**

世界は、終わろうとしていた。

いや――正確には、終わるべき戦いの最後だった。

第四次忍界大戦。
忍、穢土転生の影、十尾、神のような力。
そして、すべての元凶にして最後の敵。

大筒木カグヤ。

空間が歪み、重力が狂い、空そのものが裂ける。

その中心で、二人の少年が前に出ていた。

うずまきナルト。
うちはサスケ。

忍の未来を背負った二人だ。

その瞬間だった。

カグヤの白い掌が開き、
骨のような槍が現れる。

それはこの世界で最も恐ろしい術。

共殺しの灰骨。

当たれば、肉体は崩れ、存在そのものが消える。

それが、ナルトとサスケに向かって放たれた。

――避けきれない。

ほんの一瞬。
誰もがそう思った。

だが、その前に影が飛び出した。

「……オビト!?」

叫んだのは はたけカカシ。

俺は振り返らなかった。

片目の万華鏡を開く。

神威。

本来カカシに当たるはずの灰骨を、空間ごとねじ曲げる。
だが、もう一本は避けられない。

だから――

俺はナルトの前に立った。

骨が胸を貫く。

身体が崩れ始める。

砂のように、灰のように。

「あー……いてぇな、これ」

思ったより痛い。

けど、悪くない終わり方だ。

ナルトが叫んでいた。

「オビトォ!!」

俺は笑った。

昔の自分が聞いたら、きっと怒るだろう。

世界を壊そうとした男が、
世界を守って死ぬなんて。

でもさ。

結局、俺は――

あの頃のままだった。

火影を夢見てたガキのまま。

ナルトの肩を軽く叩く。

「……ナルト」

目が合う。

あいつの瞳は、まっすぐだった。

だから俺は言った。

最後の言葉を。

「お前は――火影になれ」

視界が白くなっていく。

遠くでカカシの声が聞こえた。

リンの笑顔も、
昔のチームの光景も。

そして。

闇。

完全な闇。



……のはずだった。



「――ぎゃあああああ!!」

俺は泣いていた。

赤ん坊として。

「……は?」

自分の声に、まず驚いた。

小さい。
というか、赤ちゃんだ。

しかも抱き上げられている。

目の前には知らない女。

「元気な男の子ですよ」

産婆らしい。

――いや待て。

ちょっと待て。

俺、さっき死んだよな?

カグヤの灰骨で。

つまりこれは――

転生?

「マジかよ……」

赤ん坊の俺は思った。

そして気付く。

ここは忍の世界じゃない。

建物の様式。
空気。

それに――

この世界には、呪いがあった。



数年後。

俺は小学生になっていた。

黒髪短髪。

名前は――

うちはオビト。

……いや待て。

「裏葉って書いて、うちは?」

親のセンスが強い。

父親は **禪院家**の男。
母親は **加茂家**の女。

大恋愛の末に駆け落ち。

呪術界の名門二家の子供。

つまり俺は――

サラブレッド呪術師。

しかも。

ある日。

公園で遊んでいたら。

白髪サングラスの不審者に声をかけられた。

「ねえ君」

「?」

「呪術師にならない?」

「……は?」

男はニヤッと笑った。

「俺、**五条悟**っていうんだけど」

俺は思った。

やばい奴だ。

そして次の瞬間。

「へえ……禪院と加茂の子供?」

沈黙。

「……マジ?」

そして。

数分後。

俺は――

誘拐されていた。

「いや犯罪だろ!!」

車の中で俺は叫んだ。

五条悟はケラケラ笑う。

「大丈夫大丈夫」

「何が!?」

「だって君さ」

サングラスの奥の六眼が輝く。

「とんでもない呪力してるし」

俺を指差した。

「しかも目、写輪眼だろ?」

「……」

俺は黙った。

そう。

俺の目にはあった。

写輪眼。

しかも――

万華鏡写輪眼。

さらに。

術式まで覚醒していた。

赤血操術。
御厨子。

俺は思った。

「……ちょっと待て」

前世は六道化してた。

つまり。

五行陰陽。

火遁。
風遁。
雷遁。
水遁。
土遁。

そして。

木遁。

全部使える。

しかも。

呪力付き。

結果。

呪術高専。

「特級呪術師」

「……マジ?」

五条悟は笑った。

「うんマジ」

そして俺は――

**東京都立呪術高等専門学校**へ入学した。



同期は三人。

バカみたいに明るい奴。

虎杖悠仁。

クールな影使い。

伏黒恵。

そして。

ハンマー振り回す女子。

釘崎野薔薇。

「ねえアンタ」

釘崎が言った。

「顔いいわね」

「え?」

「割とイケメン」

横で五条悟が笑う。

「それ俺も思った」

「……」

やめてくれ。

俺は忍者なんだ。

呪術師じゃない。

いやもう呪術師なんだけど。



そして。

俺は戦った。

呪霊。
呪詛師。
呪術界の闇。

最大の戦いは。

渋谷事変。

さらに。

死滅回游。

そして。

最後。

人外魔境新宿決戦。

最強の呪術師。

五条悟。

VS

呪いの王。

両面宿儺。

あの戦いで。

最強は死んだ。

俺は歯を食いしばった。

それでも戦った。

特級呪術師として。

仲間と共に。

世界を守るため。

そして――

21歳のある日。

呪詛師の自爆術式。

それが俺を飲み込んだ。

爆炎。

呪力の奔流。

身体が消える。

俺は笑った。

「……またかよ」

これで。

二度目の死だ。

だが。

不思議と怖くなかった。

むしろ思った。

次は――

「平和な人生でもいいな」

そう思った瞬間。

世界がひっくり返った。



次に目を開けたとき。

そこには。

見覚えのある空があった。

木ノ葉の空。

遠くで子供たちの声。

俺は小さな手を見た。

「……またガキかよ」

でも。

今度は分かる。

ここは。

木ノ葉隠れの里。

そして俺は。

ナルトたちと同じ年代に生まれていた。

つまり。

忍者アカデミー世代。

俺は笑った。

「面白ぇじゃん」

今度は。

全部守れるかもしれない。

カカシも。

ナルトも。

サスケも。

未来も。

俺は拳を握った。

「三周目の人生だ」

空を見上げる。

「今度こそ――」

忍者として。

呪術師として。

そして。

うちはオビトとして。



物語はここから始まる。

忍者アカデミー。

問題児三人。

ナルト。
サスケ。
サクラ。

そして――

もう一人。

「俺?」

「そう、お前」

第七班は四人。

先生はもちろん。

はたけカカシ。

運命は。

もう一度動き出した。



〆栞
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