忍者アカデミー

木ノ葉隠れの里の朝は早い。

朝日が火影岩を赤く染め、里の屋根を照らす頃、忍者アカデミーの前には子供たちの声が集まっていた。

未来の忍たち。

その中に、俺もいる。

「……三周目か」

俺――**うちはオビト**は、アカデミーの校門の前で空を見上げた。

懐かしい。

この空も、この匂いも。

一度目の人生ではここで忍を目指した。
二度目の人生では、忍ではなく呪術師として戦った。

そして今。

三度目の人生。

「まさかまた忍者になるとはなぁ……」

頭をかく。

前世の記憶は全部残っている。

第四次忍界大戦。
カグヤとの戦い。
呪術師としての人生。

全部だ。

おかげで忍者アカデミーの授業なんて――

正直、退屈すぎる。

「……でも」

小さく笑う。

今回は違う。

俺は知っている。

この時代に何が起きるのか。

誰が死ぬのか。
誰が苦しむのか。

そして。

誰が――世界を救うのか。

「……ナルト」

視線を横に向けた。

そこには、金髪の少年がいた。

教室の隅。

一人で机に突っ伏している。

里の連中は誰も近寄らない。

あいつが何者か知っているからだ。

九尾の人柱力。

でも俺には関係ない。

むしろ――

「おーい」

俺は声をかけた。

少年が顔を上げる。

青い瞳。

そして、ひげみたいな三本線。

うずまきナルト。

「……誰だってばよ?」

俺は笑った。

「隣いいか?」

「え?」

「座る」

ナルトの隣の席に座る。

教室がざわついた。

(え、誰あいつ)

(ナルトの隣……?)

(うちはの奴じゃね?)

ヒソヒソ声。

まあ気にしない。

ナルトは不思議そうに俺を見る。

「お前さ」

「ん?」

「ナルトだろ」

「そうだけど?」

俺は頷く。

「よろしく」

手を差し出した。

「俺はオビト」

ナルトはぽかんとしていた。

そして。

ニッと笑う。

「おう!」

勢いよく手を握った。

「よろしくなオビト!!」

――変わらないな。

胸の奥が少し温かくなった。

その時だった。

「チッ」

舌打ち。

振り向くと、黒髪の少年がこちらを見ていた。

クールな顔。

腕組み。

鋭い目。

うちはサスケ。

「あいつか」

ナルトがむくれる。

「サスケのやつ、いつもあんな感じなんだってばよ」

サスケは視線を逸らした。

俺は少し笑った。

――昔と同じだ。

いや。

まだ子供の頃のサスケだ。

兄を失い、復讐に染まる前の。

「なあナルト」

「ん?」

「サスケって強いのか?」

ナルトがムッとする。

「強いけど!!」

机を叩く。

「いつかオレが絶対勝つってばよ!!」

俺は吹き出しそうになった。

「いいな」

「何が?」

「その元気」

ナルトは首を傾げた。

その時。

教室の前の席から声が飛ぶ。

「うるさいわねアンタたち!!」

振り向くと。

ピンク色の髪。

額に手を当てて怒っている。

春野サクラ。

「授業前なのよ!静かにしなさい!」

「うっ……」

ナルトが縮こまる。

そしてサクラはサスケを見る。

一瞬で顔が赤くなった。

「サ、サスケくん……おはよう」

「……」

サスケは無視。

ナルトが机を叩く。

「なんでサスケには優しいんだってばよ!!」

教室はいつもの騒ぎ。

俺はその光景を見て、ふっと笑った。

懐かしい。

本当に懐かしい。

忍者アカデミーの頃。

俺も、カカシも、リンも。

こんな感じだった。

「……リン」

一瞬、胸が締め付けられる。

でも。

首を振った。

今はまだ考える必要はない。

歴史は変わる。

変えてみせる。

俺がここにいるんだから。



「静かにしろー!!」

教室の扉が勢いよく開いた。

入ってきたのは教師。

うみのイルカ。

「席につけ!」

生徒たちが一斉に座る。

イルカは出席簿を開いた。

「今日は分身の術の実技だ」

ナルトが青ざめた。

「げっ」

サクラが呆れる。

「また失敗するわね」

サスケは腕組み。

俺は机に肘をつく。

分身の術か。

懐かしい。

イルカが言う。

「順番にやるぞ」

生徒たちが次々と術を披露する。

「分身の術!」

ポンッ

煙。

まあまあの出来。

「次、サスケ!」

サスケが前に出る。

印を結ぶ。

「分身の術」

ポン。

完璧な分身。

教室がざわめいた。

「すげー!」

「さすがサスケくん!」

サクラが拍手している。

ナルトは悔しそうだ。

そして。

「次、ナルト!」

「うっ……」

ナルトが前に出る。

印を結ぶ。

「分身の術!!」

ボフン。

出てきたのは――

ぐにゃぐにゃの分身。

「失敗だな……」

イルカがため息。

教室が笑う。

ナルトは拳を握った。

俺は少し眉をひそめた。

……相変わらずだ。

この世界は。

ナルトに冷たい。

「次」

イルカが名簿を見る。

「オビト」

「はいはい」

俺は立ち上がった。

教室の視線が集まる。

(うちはの奴)

(どんな術だ?)

俺は前に出る。

印を結ぶ。

普通に分身でもいいが――

まあ、いいか。

「分身の術」

ポンッ。

煙。

次の瞬間。

教室が静まり返った。

そこには。

十人以上の分身が立っていた。

しかも全部、完全。

「……え?」

イルカが固まる。

サクラが目を丸くする。

ナルトが叫んだ。

「すげえええ!!」

サスケの目が細くなる。

「……」

俺は頭をかいた。

「あれ?」

「やりすぎた?」

イルカが震える声で言った。

「……完璧だ」

教室がざわめく。

「天才じゃん!」

「すげえ!」

ナルトが駆け寄ってきた。

「オビト!!すげーってばよ!!」

俺は笑った。

「まあな」

そして。

チラッとサスケを見る。

サスケも俺を見ていた。

黒い瞳。

鋭い視線。

その目は言っていた。

こいつ、ただ者じゃない。

俺は肩をすくめた。

(まあ、そうだよな)

三周目だからな。



授業が終わり。

帰り道。

ナルトが横を歩く。

「なあオビト!」

「ん?」

「オレさ」

拳を握る。

「絶対火影になるんだってばよ!!」

俺は足を止めた。

そして笑った。

「知ってる」

「え?」

ナルトは首を傾げる。

俺は空を見る。

火影岩。

そこには四人の顔。

未来では。

そこにもう一つ増える。

俺はナルトの頭を軽く叩いた。

「お前ならなれる」

ナルトが驚く。

「ほんとか!?」

「ああ」

俺は言った。

静かに。

でも確信を込めて。

「お前は火影になる」

ナルトは満面の笑みになった。

「よーし!!」

拳を突き上げる。

「頑張るってばよ!!」

俺は笑った。

――ああ。

この世界はまだ始まったばかりだ。

でも。

もう運命は少し変わっている。

忍者アカデミー。

問題児は三人じゃない。

四人だ。

ナルト。

サスケ。

サクラ。

そして――

俺。

うちはオビト。

物語は、ここから動き出す。



〆栞
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