写輪眼

忍者アカデミーの校庭。

朝の空気は少し冷たく、子供たちの声が広場に響いていた。

「聞いたか?」

「昨日の木遁のやつ」

「うちはの子だろ?」

そんな噂の中心にいるのは当然――

うちはオビト。

俺は木のベンチに座って、ぼんやり空を見上げていた。

(やっぱ目立ちすぎたか)

昨日の木遁。

さすがにやりすぎだった。

だが。

「おーい!!」

元気な声。

振り向くと走ってくる金髪の少年。

**うずまきナルト**だ。

「オビト!!」

「朝からうるせぇな」

ナルトは興奮していた。

「昨日イルカ先生のラーメンうまかったな!!」

「まあな」

「また奢ってもらおうぜ!」

「無理だろ」

その時だった。

「……オビト」

低い声。

振り向くと黒髪の少年が立っていた。

うちはサスケ。

ナルトがむっとする。

「なんだよサスケ」

サスケは俺を見て言った。

「勝負しろ」

「……は?」

ナルトが目を丸くする。

「いきなり!?」

サスケは真剣な顔だった。

「昨日の術」

「木遁」

「それにお前の動き」

少し間を置いて。

「ただのアカデミー生じゃない」

俺は頭をかいた。

(まあバレるよな)

サスケは続けた。

「確かめる」

「お前がどれだけ強いか」

周囲の生徒が集まってくる。

「サスケが勝負!?」

「マジ!?」

ナルトが拳を握る。

「やれやれ!!」

サクラが叫ぶ。

「ちょっとアンタたち!」

でも止まらない。

俺は立ち上がった。

「いいぜ」

サスケの目が光る。

「本気で来い」

「それはお前次第だ」



校庭の中央。

簡単な模擬戦。

イルカはまだ来ていない。

完全に生徒の自主戦闘だ。

ナルトが審判みたいに叫ぶ。

「よーい!!」

サクラが慌てる。

「ちょっと本当にやるの!?」

ナルトが腕を振る。

「始め!!」

次の瞬間。

サスケが動いた。

(速い)

子供とは思えない踏み込み。

蹴りが飛んでくる。

俺は軽く避ける。

風が頬をかすめた。

サスケが眉をひそめる。

「避けたか」

今度は連続攻撃。

拳。

蹴り。

フェイント。

(さすがだな)

子供の頃からこの完成度。

天才と言われるだけある。

だが。

俺は一歩も動かない。

最小限の動きで全部避ける。

周囲がざわめく。

「すげぇ…」

「サスケの攻撃全部避けてる」

ナルトが叫ぶ。

「オビトすげええ!!」

サスケが距離を取る。

目が鋭くなっていた。

「……やっぱりな」

俺は肩をすくめた。

「もう終わりか?」

その瞬間。

サスケが印を結ぶ。

「火遁・豪火球の術!!」

炎が広がる。

教室の子供たちが悲鳴を上げた。

だが。

俺は動かない。

炎が迫る。

そして。

静かに言った。

「……そろそろいいか」

瞳が変わる。

黒から――赤へ。

巴紋。

写輪眼。

サスケの目が見開かれた。

「!!」

俺は炎の中を歩く。

火遁の流れが全部見える。

軽く手を振る。

風遁。

炎が散った。

静寂。

誰も声を出せない。

サクラが震える。

「しゃ、写輪眼……」

ナルトが叫ぶ。

「うおおおお!!」

サスケは俺を見ていた。

完全に驚いている。

「お前……」

俺は笑った。

「うちはだからな」

サスケは拳を握った。

悔しそうに。

でもどこか嬉しそうに。

「……面白い」

そう言った。

「またやる」

ナルトが割り込む。

「オレも混ぜろってばよ!!」



その頃。

火影岩を見上げる建物。

火影執務室。

窓の前に立っている老人がいた。

三代目火影。

猿飛ヒルゼン。

水晶球の中に映っているのはアカデミーの校庭。

ヒルゼンは目を細めた。

「ほう……」

写輪眼。

そして木遁。

「うちはの子供で木遁とは」

隣にいる暗部が言う。

「監視しますか?」

ヒルゼンは煙管をふかした。

「いや」

小さく笑う。

「見守ろう」

「木ノ葉の子供じゃ」

その時。

ドタドタと足音。

扉が勢いよく開く。

「じいちゃーん!!」

小さな少年が飛び込んできた。

猿飛木ノ葉丸。

ヒルゼンが苦笑する。

「こらこら」

木ノ葉丸が叫ぶ。

「忍者ごっこしようぜ!!」

ヒルゼンは笑った。

「あとでな」

だが。

水晶球の中の少年――

オビトを見て。

少しだけ目を細めた。

(……面白い風が吹き始めたの)



夕方。

アカデミーの帰り道。

ナルトが興奮している。

「写輪眼すげぇってばよ!!」

「まあな」

「オレも欲しい!!」

「無理だ」

ナルトが笑う。

「でもさ!」

拳を握る。

「オレも強くなる!!」

俺は少し笑った。

(ああ)

お前は強くなる。

誰よりも。

世界を救うくらい。

俺は空を見上げた。

三度目の人生。

運命は少しずつ変わり始めている。

その時だった。

木の上から声。

「……へえ」

銀髪の忍が座っている。

はたけカカシ。

ナルトが叫ぶ。

「誰だってばよ!?」

カカシは笑った。

片目だけ細くする。

「君」

オビトを見る。

「面白い目してるね」

俺は一瞬だけ固まった。

(……カカシ)

でも顔には出さない。

カカシは本を閉じて立ち上がる。

「また会おう」

そう言って消えた。

ナルトが叫ぶ。

「なんだったんだ今の!?」

俺は苦笑した。

「さあな」

でも心の中では思っていた。

(……もう会ったか)

俺の元チームメイト。

そして未来の先生。

はたけカカシ。

運命は。

確実に近づいている。



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