揺れる心

朝。

町外れの森。

「うおおおおお!!」

叫び声が響く。

地面に座り込んでいるのは
うずまきナルト。

手には――

ゴムボール。

その前で腕を組んでいるのは
自来也。

「次の段階だ」

自来也が言う。

「今度はそれを使え」

ナルトはボールを握る。

「なんで風船じゃダメなんだってばよ?」

自来也は答える。

「風船は薄い」

「ゴムボールは厚い」

「チャクラを回転させるだけじゃ破れない」

ナルトの眉がひそまる。

「じゃあどうすんだよ」

自来也は言った。

「回転に加えて――」

「威力だ」

ナルトがボールを見つめる。

チャクラを流す。

回す。

回す。

回す。

だが――

びくともしない。

「くそーっ!!」

ナルトは地面に転がった。

自来也は苦笑する。

(あのガキはここまで苦労しなかったな)

思い出すのは

木ノ葉の修練場。

うちはの少年。

うちはオビト。

「回転ですか?」

そう言って手を出した。

チャクラが――

渦を巻いた。

あまりにも自然に。

自来也は内心驚いたものだ。

(あいつは感覚型だな)

だがナルトは違う。

真正面からぶつかるタイプだ。

「くそー!」

ナルトが叫ぶ。

「絶対できるってばよ!!」



その頃。

宿の部屋。

窓際に立つのは
綱手。

机の上には酒瓶。

だが手は伸びない。

頭の中に浮かぶのは

あの言葉。

――死者を生き返らせる

大蛇丸の声。

綱手は目を閉じる。

血の匂い。

崩れた身体。

泣き叫ぶ自分。

弟。

繩樹。

そして。

恋人。

加藤ダン。

「……」

拳が震える。

「ふざけるな」

呟く。

だが。

心のどこかで――

揺れている。

その時。

扉が開いた。

入ってきたのは
自来也。

「難しい顔してるな」

綱手は振り向かない。

「放っとけ」

自来也は窓の外を見る。

森の中。

ナルトが必死に修行している。

「見ろよ」

綱手が視線を向ける。

ナルトが転びながらも立ち上がる。

何度も。

何度も。

自来也は言った。

「あのガキ」

「三代目に認められた」

綱手の目が細くなる。

「……」

自来也は続ける。

「火影になりたいんだとよ」

綱手は鼻で笑う。

「バカだな」

だが。

視線はナルトから離れない。

自来也が静かに言う。

「それでも」

「前に進む」

綱手は黙った。



その頃。

森の奥。

ナルトが再びゴムボールを握る。

「うおおお!!」

チャクラを回す。

だが。

その背後に――

影。

静かに現れた男。

薬師カブト。

「こんにちは」

ナルトが振り向く。

「誰だってばよ?」

カブトは微笑む。

「ただの通りすがりですよ」

次の瞬間。

カブトの手刀が振り下ろされる。

ドン!

ナルトが吹き飛んだ。

「ぐはっ!」

カブトは眼鏡を押し上げる。

「九尾の人柱力」

「まずはあなたから」

その瞬間。

森の上空。

一羽のカエルが飛び立った。

それは――

自来也の伝書。

向かう先は。

木ノ葉。

宛先は一人。

うちはの少年。

うちはオビト。

自来也の言葉が書かれている。

『少し厄介なことになった』

『来られるなら来い』

森の中。

ナルトが立ち上がる。

「てめぇ……」

拳を握る。

「何者だってばよ!」

カブトは静かに笑う。

「すぐ分かりますよ」

戦いが――

始まろうとしていた。



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