取引

夜。

町外れの古い神社。

月明かりの下、二つの影が向かい合っていた。

一人は――
綱手。

もう一人は
細い笑みを浮かべた男。

大蛇丸。

その少し後ろに立つのは
薬師カブト。

綱手は腕を組んでいた。

「……で?」

「わざわざ呼び出して何の用だ」

大蛇丸はくすりと笑う。

「相変わらず短気ね、綱手」

綱手の目が細くなる。

「用件を言え」

大蛇丸はゆっくりと腕を持ち上げた。

だが――

その腕は。

震えていた。

指が、うまく動かない。

「あなたなら分かるでしょう?」

大蛇丸は言った。

「私の腕を――治してほしい」

綱手の表情が変わらない。

「断る」

即答だった。

大蛇丸は肩をすくめる。

「冷たいわね」

綱手は鼻で笑う。

「お前の腕がどうなろうと知ったことじゃない」

「それに――」

視線が鋭くなる。

「木ノ葉崩し」

「お前がやったんだろ」

大蛇丸の笑みが深くなる。

「さあ、どうかしら」

綱手は吐き捨てる。

「ふざけるな」

静かな沈黙。

その沈黙を破ったのは
大蛇丸だった。

「もし治してくれたら」

ゆっくりと言う。

「あなたの望みを叶えてあげる」

綱手の目がわずかに動く。

「……何?」

大蛇丸は言った。

「死者を――生き返らせる」

空気が凍る。

綱手の瞳が揺れる。

弟。

加藤ダン。

恋人。

血の匂い。

崩れた身体。

あの日の光景が蘇る。

大蛇丸は続けた。

「あなたの弟」

「そして恋人」

「二人とも」

「私なら蘇らせることができる」

綱手は黙った。

拳が、わずかに震えている。

大蛇丸は静かに笑う。

「三日」

「三日待つわ」

「その間に答えを出しなさい」

背を向ける。

「来なければ」

「取引はなしよ」

大蛇丸とカブトは闇の中へ消えていった。

その場に残された綱手は――

ただ、立っていた。



その頃。

町外れの森。

木々の間で叫び声が響く。

「くそーっ!!」

地面に座り込んでいるのは
うずまきナルト。

手には水風船。

その前に立つのは
自来也。

「だから言っただろ」

自来也は腕を組む。

「チャクラは回すんだ」

ナルトは風船を睨む。

「回してるってばよ!」

風船が膨らむ。

だが。

破裂しない。

ナルトは歯を食いしばる。

「くそっ……!」

自来也は空を見上げる。

(あのガキ……)

木ノ葉にいる少年。

うちはの名を持つ。

オビト。

(あいつはあっさりやったな)

第七班の修行の日。

あの時。

チャクラの回転を教えた時。

オビトは言った。

「こうですか?」

次の瞬間。

手のひらのチャクラが――

渦を巻いた。

自来也は苦笑する。

(ナルトは真逆だな)

「くそーっ!」

ナルトはまた風船を握る。

チャクラを流す。

回す。

回す。

回す。

パンッ!

風船が破裂した。

ナルトの目が見開く。

「……割れた」

自来也が笑う。

「第一段階クリアだ」

ナルトが拳を握る。

「やったってばよ!!」

その様子を。

遠くの木の上から見ている影があった。

眼鏡の奥の目が光る。

薬師カブト。

「なるほど」

静かな声。

「九尾の人柱力」

「思ったより面白いですね」

カブトは静かに笑った。

「それに――」

視線が細くなる。

「もう一人」

「興味深い少年がいる」

うちはオビト。

血を操る術。

異質な回復力。

カブトは呟く。

「ぜひ会ってみたいものです」

闇の中。

眼鏡が月光を反射した。



〆栞
PREV  |  NEXT
LIST
#novel#