兄の影

木ノ葉病院。

夜。

廊下は静まり返っていた。

部屋のベッドの上。

横たわるのは
うちはサスケ。

目は閉じられている。

だが。

その意識は――

闇の中にあった。



血。

血。

血。

うちは一族の屋敷。

倒れている族人。

その中央に立つ男。

うちはイタチ。

冷たい目。

その瞳が回る。

万華鏡写輪眼。

「月読」

世界が歪む。

時間が引き伸ばされる。

倒れる父。

泣き叫ぶ母。

繰り返される死。

何度も。

何度も。

何度も。

サスケが叫ぶ。

「やめろ!!」

だが終わらない。

イタチの声。

「弱いからだ」

「お前が弱いから」

「守れない」

世界が砕ける。



サスケが目を開いた。

荒い呼吸。

汗が流れる。

「……っ」

ここは病院。

夢。

だが。

胸の奥の痛みは消えない。

拳を握る。

「イタチ……」

歯を食いしばる。

「絶対に」

「殺す」

その時。

窓の外。

屋根の上。

一人の男が立っていた。

うちはオビト。

静かに病室を見る。

サスケの気配。

荒れたチャクラ。

オビトは小さく息を吐く。

「……月読か」

あれは重い。

精神を直接破壊する術。

サスケの声が漏れる。

「兄さん……」

その声には。

憎しみ。

恐怖。

そして――

執着。

オビトの目が少し細くなる。

「完全に刻まれたな」

復讐。

それは人を強くする。

だが同時に――

壊す。

病室の中。

サスケがベッドから起き上がる。

震える手。

それでも言う。

「待ってろ」

「イタチ」

「俺が」

「お前を――」

オビトは静かに空を見る。

雲が流れる。

「……イタチ」

あいつは。

全部分かった上で。

これをやっている。

オビトは小さく呟いた。

「相変わらず」

「損な役回りだな」

風が吹く。

その時。

別の気配。

病院の廊下。

**春野サクラ**が走っていた。

サスケの部屋へ。

オビトはそれを見る。

「……来たか」

サスケの扉が開く。

「サスケくん!」

サスケが振り返る。

その目はまだ揺れていた。

だが。

奥には。

燃えるような感情。

復讐。

サクラが息を整える。

「もう無茶しないで」

「まだ怪我が――」

サスケは言う。

「関係ない」

その声は低かった。

「俺は」

「強くなる」

サクラは言葉を失う。

窓の外。

オビトが静かに呟く。

「……始まったな」

兄の影。

それは――

弟の運命を大きく動かしていく。

夜の木ノ葉。

静かな空の下。

それぞれの思いが

交差し始めていた。



〆栞
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