試す者と、狩る者
夜。
屋根の上。
(……三、いや四か)
気配を数える。
(一般人には分かんねぇだろうけど)
黒い“歪み”が、いくつも重なっている。
(優先は……人に近い方)
迷わない。
音もなく、踏み込む。
路地裏。
人影の背後に、にじむ影。
「……」
(はいアウト)
指がわずかに動く。
――解。
一瞬。
それだけで終わる。
「……よし」
何も起きなかったように、静まる。
「……静かだな、これ」
(痕跡、残ってねぇ)
視線を巡らせる。
(あと三)
少し離れた位置。
(あっちは人いねぇな)
なら後回し。
「優先順位、大事だからな」
ぼそっと呟く。
その時。
「綺麗だね」
背後から声。
振り向く。
金髪。穏やかな笑み。
波風ミナト。
(……まぁそう来るか)
「見てたんすか」
「少しだけ」
(いや絶対ずっとだろ)
内心で軽くツッコむ。
ミナトは一歩近づく。
「今の、もう一度いいかな」
「……はい?」
次の瞬間。
消える。
(速――)
反射で身体が動く。
最短回避。
風が頬を掠める。
背後。
気配。
(後ろ)
受け流す。
カン、と軽い音。
クナイを止める。
「……」
「……」
一拍。
ミナトの目が、わずかに細まる。
「反応がいい」
「まぁ、そこそこ」
(完全に試しだな、これ)
(まぁそう来るか)
「もう一つ」
再び、消える。
(……空間ごとズレてる)
位置を読む。
そこに、いる。
「……」
ミナトが、ほんの僅かに驚く。
「今の、分かったのかい」
「まぁ、なんとなく」
(なんとなくは無理あるな)
(でも他に言いようねぇし)
肩をすくめる。
ミナトは、クナイを下げた。
「なるほど」
短く。
だが確信のある声。
(……バレたな)
「君は」
静かに言う。
「守る側、なんだね」
「……まぁ」
視線を逸らす。
「放っとくと危ないんで」
「放っておけない?」
「はい」
即答。
ミナトは少しだけ笑う。
「いいね」
「……」
「ただ」
声がわずかに低くなる。
「一人で抱え込まないこと」
「……」
(またそれか)
だが、嫌ではない。
「大丈夫っす」
「手の届く範囲でやってるだけなんで」
ほんの一瞬。
ミナトの目が揺れる。
「そうか」
それだけ。
だが十分だった。
――――
地下。
「報告は」
「はい」
暗部が答える。
「不可解な体調不良や事故の兆候が――」
「すべて、発生前に消失しています」
「……」
「原因は不明」
「痕跡も確認できません」
沈黙。
ダンゾウは、ゆっくりと口を開く。
「結果だけが変わっている」
低く。
断定。
「介入がある」
「対象は」
「絞るな」
即答。
「全てを見ろ」
一拍。
「特に――うちは」
空気が凍る。
「この変化、“自然ではない”」
その目は、完全に狩る側だった。
――――
翌日。
「最近、静かだよな」
「確かに」
教室の後ろで声が上がる。
(……あー)
(それ俺のせいだな)
内心で頷く。
(まぁそうなるわ)
だが。
(被害減ってるならいいか)
「オビト」
カカシが呼ぶ。
「何だよ」
「お前、何してる」
(またそれか)
「散歩」
「……」
(信じねぇよな)
(まぁ知ってた)
肩をすくめる。
――放課後。
帰り道。
「君がオビトくんか」
穏やかな声。
振り向く。
白い髪。
はたけサクモ。
(……濃いの来たな)
視線が合う。
(鋭ぇ)
一瞬で分かる。
“本物”。
「カカシから聞いている」
(共有済みね)
「少し、見せてもらっていいかな」
穏やか。
だが逃げ場はない。
「軽くでいい」
(まぁ、そうなるよな)
「……分かりました」
構える。
少しだけ抑える。
(意味あるかこれ)
(まぁいいや)
踏み込む。
瞬間。
サクモの目が変わる。
(……やっべ)
(やっちまった)
止める。
遅い。
「……面白いな」
小さく笑う。
(バレたな)
「君」
サクモは静かに言う。
「何のために使う力だ?」
「……」
迷わない。
「助けるためです」
即答。
サクモは、それを聞いて。
ほんの少し目を細めた。
「そうか」
短く頷く。
「なら問題ない」
(あ、いいんだ)
少し拍子抜けする。
「ただし」
サクモは続ける。
「自分も大切にしなさい」
「……」
(またそれか)
だが。
嫌ではない。
「はい」
素直に返す。
夕日が、静かに差し込む。
見えないまま。
だが確実に。
評価と警戒が――
動き始めていた。
屋根の上。
(……三、いや四か)
気配を数える。
(一般人には分かんねぇだろうけど)
黒い“歪み”が、いくつも重なっている。
(優先は……人に近い方)
迷わない。
音もなく、踏み込む。
路地裏。
人影の背後に、にじむ影。
「……」
(はいアウト)
指がわずかに動く。
――解。
一瞬。
それだけで終わる。
「……よし」
何も起きなかったように、静まる。
「……静かだな、これ」
(痕跡、残ってねぇ)
視線を巡らせる。
(あと三)
少し離れた位置。
(あっちは人いねぇな)
なら後回し。
「優先順位、大事だからな」
ぼそっと呟く。
その時。
「綺麗だね」
背後から声。
振り向く。
金髪。穏やかな笑み。
波風ミナト。
(……まぁそう来るか)
「見てたんすか」
「少しだけ」
(いや絶対ずっとだろ)
内心で軽くツッコむ。
ミナトは一歩近づく。
「今の、もう一度いいかな」
「……はい?」
次の瞬間。
消える。
(速――)
反射で身体が動く。
最短回避。
風が頬を掠める。
背後。
気配。
(後ろ)
受け流す。
カン、と軽い音。
クナイを止める。
「……」
「……」
一拍。
ミナトの目が、わずかに細まる。
「反応がいい」
「まぁ、そこそこ」
(完全に試しだな、これ)
(まぁそう来るか)
「もう一つ」
再び、消える。
(……空間ごとズレてる)
位置を読む。
そこに、いる。
「……」
ミナトが、ほんの僅かに驚く。
「今の、分かったのかい」
「まぁ、なんとなく」
(なんとなくは無理あるな)
(でも他に言いようねぇし)
肩をすくめる。
ミナトは、クナイを下げた。
「なるほど」
短く。
だが確信のある声。
(……バレたな)
「君は」
静かに言う。
「守る側、なんだね」
「……まぁ」
視線を逸らす。
「放っとくと危ないんで」
「放っておけない?」
「はい」
即答。
ミナトは少しだけ笑う。
「いいね」
「……」
「ただ」
声がわずかに低くなる。
「一人で抱え込まないこと」
「……」
(またそれか)
だが、嫌ではない。
「大丈夫っす」
「手の届く範囲でやってるだけなんで」
ほんの一瞬。
ミナトの目が揺れる。
「そうか」
それだけ。
だが十分だった。
――――
地下。
「報告は」
「はい」
暗部が答える。
「不可解な体調不良や事故の兆候が――」
「すべて、発生前に消失しています」
「……」
「原因は不明」
「痕跡も確認できません」
沈黙。
ダンゾウは、ゆっくりと口を開く。
「結果だけが変わっている」
低く。
断定。
「介入がある」
「対象は」
「絞るな」
即答。
「全てを見ろ」
一拍。
「特に――うちは」
空気が凍る。
「この変化、“自然ではない”」
その目は、完全に狩る側だった。
――――
翌日。
「最近、静かだよな」
「確かに」
教室の後ろで声が上がる。
(……あー)
(それ俺のせいだな)
内心で頷く。
(まぁそうなるわ)
だが。
(被害減ってるならいいか)
「オビト」
カカシが呼ぶ。
「何だよ」
「お前、何してる」
(またそれか)
「散歩」
「……」
(信じねぇよな)
(まぁ知ってた)
肩をすくめる。
――放課後。
帰り道。
「君がオビトくんか」
穏やかな声。
振り向く。
白い髪。
はたけサクモ。
(……濃いの来たな)
視線が合う。
(鋭ぇ)
一瞬で分かる。
“本物”。
「カカシから聞いている」
(共有済みね)
「少し、見せてもらっていいかな」
穏やか。
だが逃げ場はない。
「軽くでいい」
(まぁ、そうなるよな)
「……分かりました」
構える。
少しだけ抑える。
(意味あるかこれ)
(まぁいいや)
踏み込む。
瞬間。
サクモの目が変わる。
(……やっべ)
(やっちまった)
止める。
遅い。
「……面白いな」
小さく笑う。
(バレたな)
「君」
サクモは静かに言う。
「何のために使う力だ?」
「……」
迷わない。
「助けるためです」
即答。
サクモは、それを聞いて。
ほんの少し目を細めた。
「そうか」
短く頷く。
「なら問題ない」
(あ、いいんだ)
少し拍子抜けする。
「ただし」
サクモは続ける。
「自分も大切にしなさい」
「……」
(またそれか)
だが。
嫌ではない。
「はい」
素直に返す。
夕日が、静かに差し込む。
見えないまま。
だが確実に。
評価と警戒が――
動き始めていた。
【〆栞】