文明の力とは
世界は、意味が分からないもので満ちている。
それが、ここ最近の率直な感想だった。
忍界にも、不思議なものは多かった。
忍術、血継限界、尾獣、輪廻眼。
理屈が通っているようで通っていない力が、当たり前のように存在していた。
だが――
(それでも、ここまでじゃなかった)
これは、別種だ。
まず、足元。
俺の下半身を包み込むそれ。
オムツ。
しかも、“パンパース”とかいう名前らしい。
(なんだその語感)
いや、名前はどうでもいい。
問題は性能だ。
吸収力が異常すぎる。
どれだけ出そうが、一切漏れない。
不快感も最小限に抑えられている。
(どういう仕組みだよ)
忍界にこんな技術はなかった。
いや、あったら戦争終わってる。
医療班が泣いて喜ぶレベルだ。
次に、哺乳瓶。
透明な容器に入った液体。
ミルク。
(これも意味が分からん)
温度が常に適温。
しかも、どこでも供給可能。
母乳と違って場所を選ばない。
戦場でこれがあれば、どれだけ助かったか。
いや、赤ん坊の話だが。
そして。
「ほらオビト、テレビよ」
視界の先。
壁に設置された、四角い板。
突然、光った。
(……は?)
映像。
人が、動いている。
音も出ている。
まるで幻術のようだ。
だが、チャクラの流れは感じない。
(なんだこれ)
じっと見つめる。
画面の中で、人間が笑い、走り、叫ぶ。
別の場所の出来事が、ここに映し出されている。
(……情報の共有か)
理解はできる。
だが規模が異常だ。
誰でも見れる。
どこでも見れる。
しかも、鮮明。
(忍界がバカみたいじゃねぇか)
正直な感想だった。
さらに。
室内。
常に、快適。
暑くも寒くもない。
(なんでだ)
外は季節がある。
だがこの空間だけ、別世界のように一定だ。
冷暖房。
そう呼ぶらしい。
(……結界か?)
違う。
もっと単純で、もっと高度だ。
仕組みは分からないが、確実に環境を制御している。
そして。
「温めるわねー」
綾乃が、箱に何かを入れる。
扉を閉める。
ボタンを押す。
数秒後。
「はい、できた」
開けると。
中のものが、温まっている。
(いや早すぎるだろ)
電子レンジ。
理解が追いつかない。
火も使っていない。
なのに熱が生まれる。
(どういう原理だよ……)
忍術の方がまだ説明がつく。
次。
洗濯機。
服を入れる。
水が回る。
回る。
回る。
終わる。
綺麗。
(いや意味が分からん)
手洗いはどこに行った。
あの地味で大変な作業は。
一瞬で終わっている。
しかも大量に。
(文明、怖ぇな……)
さらに。
スマートフォン。
これが一番意味が分からない。
小さい板。
なのに。
情報が詰まりすぎている。
触ると反応する。
音が出る。
映像が出る。
連絡が取れる。
(何でもありか)
忍界の通信手段とは、比べるまでもない。
そしてタブレット。
でかいスマホ。
いやもう名前どうでもいい。
やってること同じだろ。
「オビト、これ好きでしょ?」
綾乃が、画面を見せてくる。
色とりどりの映像。
動くキャラクター。
(……まあ、嫌いじゃねぇ)
悔しいが、面白い。
視覚的な刺激が強い。
赤ん坊の脳にはちょうどいいのかもしれない。
そして。
電気ポット。
いつでも熱湯が出る。
(意味が分からん)
火はどこだ。
なんで沸いてる。
しかも維持してる。
(どうなってんだよこの世界)
極めつけ。
宗一郎が、何やら機械を持ってきた。
「見ろオビト!新しいの買ったぞ!」
やけにテンションが高い。
画面付きの、謎の装置。
「Nintendo Switch2だ!」
(なんだそれ)
電源が入る。
映像が出る。
操作すると、画面が動く。
ゲーム。
らしい。
(……戦わないのか)
いや、戦ってはいる。
だが、仮想だ。
現実ではない。
それを楽しんでいる。
(平和すぎるだろ……)
思わずそう思った。
戦いが娯楽。
それだけ、余裕がある世界。
音楽も流れる。
今時の曲らしい。
リズムが軽い。
明るい。
どこか浮かれている。
(……悪くねぇな)
素直にそう思う。
重苦しさがない。
忍界とは違う。
空気が、軽い。
だが。
それでも。
変わらないものがある。
視界の端。
黒い靄。
虫。
相変わらず、いる。
家の隅。
窓の外。
天井。
増えている。
(……やっぱいるよな)
文明がどれだけ進もうと。
あれは、消えない。
むしろ。
人が多い場所ほど、増えている気がする。
(なんなんだ、本当に)
だが。
やることは変わらない。
見つけたら。
(潰す)
それだけだ。
血が、微かに脈打つ。
この世界は、分からないことだらけだ。
だが。
それでも。
生きること自体は、案外悪くない。
そう思えている時点で。
たぶん俺はもう。
この“意味が分からない世界”に。
少しずつ、馴染み始めていた。
それが、ここ最近の率直な感想だった。
忍界にも、不思議なものは多かった。
忍術、血継限界、尾獣、輪廻眼。
理屈が通っているようで通っていない力が、当たり前のように存在していた。
だが――
(それでも、ここまでじゃなかった)
これは、別種だ。
まず、足元。
俺の下半身を包み込むそれ。
オムツ。
しかも、“パンパース”とかいう名前らしい。
(なんだその語感)
いや、名前はどうでもいい。
問題は性能だ。
吸収力が異常すぎる。
どれだけ出そうが、一切漏れない。
不快感も最小限に抑えられている。
(どういう仕組みだよ)
忍界にこんな技術はなかった。
いや、あったら戦争終わってる。
医療班が泣いて喜ぶレベルだ。
次に、哺乳瓶。
透明な容器に入った液体。
ミルク。
(これも意味が分からん)
温度が常に適温。
しかも、どこでも供給可能。
母乳と違って場所を選ばない。
戦場でこれがあれば、どれだけ助かったか。
いや、赤ん坊の話だが。
そして。
「ほらオビト、テレビよ」
視界の先。
壁に設置された、四角い板。
突然、光った。
(……は?)
映像。
人が、動いている。
音も出ている。
まるで幻術のようだ。
だが、チャクラの流れは感じない。
(なんだこれ)
じっと見つめる。
画面の中で、人間が笑い、走り、叫ぶ。
別の場所の出来事が、ここに映し出されている。
(……情報の共有か)
理解はできる。
だが規模が異常だ。
誰でも見れる。
どこでも見れる。
しかも、鮮明。
(忍界がバカみたいじゃねぇか)
正直な感想だった。
さらに。
室内。
常に、快適。
暑くも寒くもない。
(なんでだ)
外は季節がある。
だがこの空間だけ、別世界のように一定だ。
冷暖房。
そう呼ぶらしい。
(……結界か?)
違う。
もっと単純で、もっと高度だ。
仕組みは分からないが、確実に環境を制御している。
そして。
「温めるわねー」
綾乃が、箱に何かを入れる。
扉を閉める。
ボタンを押す。
数秒後。
「はい、できた」
開けると。
中のものが、温まっている。
(いや早すぎるだろ)
電子レンジ。
理解が追いつかない。
火も使っていない。
なのに熱が生まれる。
(どういう原理だよ……)
忍術の方がまだ説明がつく。
次。
洗濯機。
服を入れる。
水が回る。
回る。
回る。
終わる。
綺麗。
(いや意味が分からん)
手洗いはどこに行った。
あの地味で大変な作業は。
一瞬で終わっている。
しかも大量に。
(文明、怖ぇな……)
さらに。
スマートフォン。
これが一番意味が分からない。
小さい板。
なのに。
情報が詰まりすぎている。
触ると反応する。
音が出る。
映像が出る。
連絡が取れる。
(何でもありか)
忍界の通信手段とは、比べるまでもない。
そしてタブレット。
でかいスマホ。
いやもう名前どうでもいい。
やってること同じだろ。
「オビト、これ好きでしょ?」
綾乃が、画面を見せてくる。
色とりどりの映像。
動くキャラクター。
(……まあ、嫌いじゃねぇ)
悔しいが、面白い。
視覚的な刺激が強い。
赤ん坊の脳にはちょうどいいのかもしれない。
そして。
電気ポット。
いつでも熱湯が出る。
(意味が分からん)
火はどこだ。
なんで沸いてる。
しかも維持してる。
(どうなってんだよこの世界)
極めつけ。
宗一郎が、何やら機械を持ってきた。
「見ろオビト!新しいの買ったぞ!」
やけにテンションが高い。
画面付きの、謎の装置。
「Nintendo Switch2だ!」
(なんだそれ)
電源が入る。
映像が出る。
操作すると、画面が動く。
ゲーム。
らしい。
(……戦わないのか)
いや、戦ってはいる。
だが、仮想だ。
現実ではない。
それを楽しんでいる。
(平和すぎるだろ……)
思わずそう思った。
戦いが娯楽。
それだけ、余裕がある世界。
音楽も流れる。
今時の曲らしい。
リズムが軽い。
明るい。
どこか浮かれている。
(……悪くねぇな)
素直にそう思う。
重苦しさがない。
忍界とは違う。
空気が、軽い。
だが。
それでも。
変わらないものがある。
視界の端。
黒い靄。
虫。
相変わらず、いる。
家の隅。
窓の外。
天井。
増えている。
(……やっぱいるよな)
文明がどれだけ進もうと。
あれは、消えない。
むしろ。
人が多い場所ほど、増えている気がする。
(なんなんだ、本当に)
だが。
やることは変わらない。
見つけたら。
(潰す)
それだけだ。
血が、微かに脈打つ。
この世界は、分からないことだらけだ。
だが。
それでも。
生きること自体は、案外悪くない。
そう思えている時点で。
たぶん俺はもう。
この“意味が分からない世界”に。
少しずつ、馴染み始めていた。
【〆栞】