夏が過ぎ、少し肌寒くなってきた頃。イザナから、最近迎えに来てくれたという“兄”の存在の話を聞きながら、日々を過ごしていた。
今日も肌寒くなってきたね…なんて言い合い、ごくごく普通の日常を楽しんでいた。…はずだったのだが。
「こいつ俺の下僕な」
「げぼく」
「んで、こいつが俺の人形」
「に、にんぎょう…?」
イザナに呼び出され、何事かと来てみれば『下僕』を紹介された。独特の呼び名を口にする彼に、涼音も『下僕』もついていけていない。
宇宙に放り出された感覚に陥りながらも、涼音は 人形ですと頭を下げれば、下僕
──鶴蝶も名乗り、頭を下げた。
というか下僕くん、見た事あると思ったら最近施設へやってきた、左目付近に大きな傷がある子じゃないか。あがり症のわたしが自発的に彼に近付く事はなかったけど、そうか イザナが。彼にも何か感じるものがあったのだろうか、わたしを拾ってきた時のように。
カチカチカチ…と時計の針が進む音が耳に届く。自己紹介も終わり、重い空気が部屋を包み込んでいく。この部屋に場違いなくらい明るい光景がテレビから流れているけど、それを見る空気ですらない。涼音達は俯きながら、ただ時間が流れていくのを感じていた。
「鍋……」
ぽつりと呟く鶴蝶の声に、涼音もイザナもテレビに視線を向ける。テレビに流れているのは学生達が親睦を深めようと鍋を囲んでいる光景だ。
イザナはそんな映像を 頬杖をつきながらぼんやりと見つめ、そしてぽつりと呟いた。
「食いてえ」
「……?」
「鍋食いてえ」
突然の発言に、涼音も鶴蝶も目を丸くさせる。肌寒くなってきたとはいえ、まだ鍋は早い