宝物

「イザナは、どうしてわたしを拾ったの……?」

「あ?」


燦爛と輝く星々の下、涼音は真剣な面持ちでイザナに問いかける。
今だ、と思ったのだ。ずっと聞きたかった答えを知れるのは今しかないと。彼は怪訝そうな視線を涼音に向け、そして星空へ視線を向けた。





「涼音。今日の夜、外に出かけるぞ」


ご飯も食べ終わり、外に遊びに出かける前のほんのひと時の時間。テレビから流れるニュースをBGMに、イザナは悪戯っぽい笑みを浮かべながら告げる。


「いいの…?」

「駄目に決まってんだろ。内緒で抜け出すんだよ」

「……うん、分かった」


しーっと口元に人差し指を当てるイザナに、涼音はキョロキョロと辺りを見渡し、周りに誰もいない事を確認するとこくこくと頷く。その際にしーっと口元に人差し指を当てる事を忘れずに。

二人だけの秘密というのはわくわくするもので、夜になるまで涼音達はそわそわしていた。目が合えばにこにこと笑い合い、頷き合う。周りが二人に怪訝そうな目線を向けているのも気づかず、涼音達ははやる気持ちを抑えられず、その時間までそわそわしていたのだった。



──こちらスネーク、部屋からの脱出に成功した」

「こちらスネーク、……ん、みんな寝てるみたい。誰もいないよ」

「よし、脱出するぞ」

「うん!」


こそこそと物陰に隠れながら行動する二人の気分は潜入工作員のようで。イザナが先頭を歩き、こっちに来いの合図を送る。涼音はそんなイザナについていく──こうして無事、施設から抜け出せた涼音達は


──エマに似てたから」

「……えま?」


ドラマの声に紛れていたけど、確かに聞こえたイザナの声に、涼音は復唱する。するとイザナは、バツが悪そうに「俺の妹」と答えた。


「いつも疲れている母さんに遠慮して、素直に甘える事ができない……そんな優しい俺の妹。

──お前の姿が、そん時のエマにそっくりだったから」


甘えて、もし嫌がられたらって怖がって、部屋の隅で丸くなって。その様子を、わたしを見ていたら思い出したのだと語ってくれた。その時のイザナの瞳は慈しむように細められていて。涼音は呼吸するのを忘れるくらい、その表情に見惚れていた。
きっと、“エマ”が彼の宝物なんだ。彼の瞳がそれを物語っていた。細められた瞳は踏み込むのを躊躇われる程、甘く優しい。

いいなあ、いいなあ。イザナにこんなに想われて。

すごく羨ましいのに、でも嫉妬するのも馬鹿らしくて。そのくらい、イザナにとって“エマ”は大切なんだって思い知らされた。


「会ってみたいな…」


ぽつりと無意識に口から出してしまった欲に、涼音は慌てて口を抑える。わたしは何を言っているんだろう。ただの人形が、彼の宝物を見てみたいだなんて。


「あっ…えっと、違…っ!」

──いいけど」


もう駄目だと思った。慌てて弁解しようと


- 4 -
prev - しおりを挟む - next

back to top