(side 黄瀬)
 女子に囲まれて恥ずかしそうに笑う響っち。どうもつまらない。
 今まで彼と一緒にいたのが俺だけで、こんな姿を見せなくなったから? それともその顔をさせてるのが俺じゃないから?
 まさか。
 女みたいな変なやつ。何となく興味を持ったから、入学式以降も話しかけてみた。
 最初はいい暇潰しになるだろうぐらいの認識だったのだが、知らないうちに欠かせない存在になってたようだ。俗に言う親友ってやつだろうか。
 確かに反応はいちいち面白かった。しかし最近じゃもう慣れきってしまったらしく、今目の前にいる響っちに懐かしさを覚える。
 あの頃は、俺だけの……。
 っ違う!! 響っちは俺だけのじゃない!
 ハッとして首を振る。
 まぁでも実際、中学に入って初めての友達。それからもずっと一緒にいる友達。特別扱いしたって、別におかしくないよな。
 そう自己完結して響っちを見た。
 でも、どうしても我慢出来なかった。
 響っちの手を引っ張り、無理矢理引き寄せた。その拍子にバランスを崩した響っちが俺の膝の上に乗った。

「響っちが行かないなら俺も止めとくッス」
『りょ、りょりょりょ、うあああ!!?』
「ちょ、うるさっ!!」

 暴れないで!!
 そう言って押さえ込むと大人しくなる。
 耳がキーンてするッス……。

「本当にお前等仲が良いよな」
「羨ましいっしょ?」

 響っちは容姿が整ってるし、頭も良い。だからそれなりに女子から人気がある。本人は全く自覚無しだけど。
 男子からの反応は、知らない。まぁ少なくとも俺よりは良い反応だろう。

「てか、さっさとそこどいて。俺の親友のために空けてたんすよ!」

 しっしと払う動作をすると、はいはいと笑いながらクラスメイトは立ち上がった。
 空いた椅子の上に響っちを座らせる。
 じゃあまた今度ねと手を振って、皆はいつの間にか減っていた人の中に消えた。

『何だか申し訳ないな……』

 クラスメイト達が去った方向を見ながらぽつりと呟いた。
 優しいな、響っちは。
 自嘲気味に笑うと、今日は何食べるッスか? と隣に笑いかけた。

 そう、親友だから、特別なんだ、よな。

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