いつか訪れる旅の終点の話
「お前ってなんで人間なの?」
「えっ」
それはキャンプ中の出来事だった。ぱちぱちと燃える焚き火を眺めていたかと思うと、突然トウヤがそういうものだから、なまえはびくりと肩を震わせた。
「じ、人格否定されてます? 今」
「いや、そういうわけじゃないけど」
ならば一体どういうわけなんだ、と内申思いつつ、なまえはとりあえず頷いた。経験上、こういう時は大人しくしておいた方がいいと学んでいたからだ。なまえにとって、トウヤは理不尽の化身だったので。
「なまえがポケモンだったらさあ、ここにしまっていつでもどこでもずっと連れ回せるじゃん」
「はい……?」
「でもほら、なまえって人間だし。モンスターボールには入れらんないから。異世界人のくせに」
「それ、関係あります……?」
「ある。なんでモンスターボールに入んないの?」
いやそれは人間だからですよ……という当然の突っ込みをなまえは飲み込む。異世界産だからって身体の構造は同じだ。宇宙人でもあるまいし。流れる血の色も、骨の数だって一緒だ。多分。
トウヤはそっとなまえを見遣った。焚き火の炎で、少し橙に染まった瞳がじっとなまえを見据えている。
「なまえさあ。あんまり俺から離れるなよな」
「か、帰れるまでは……善処します」
「帰れるまで、ね」
意味深に目を細めたかと思うと、トウヤはそこでにこりと笑った。なまえは少しだけトウヤから距離をとる。さっきから少し、トウヤが怖かった。
「帰れたらいーね。帰れたら」
あーあ。なんで本当にお前って人間なワケ?
空のモンスターボールをぐりぐりと押し付けられながら、このままこの人と旅をしてていいのかな、となまえは不安になった。