SPIRIT WORLD夢現
「お前強いな!オレのチームに来いよ」
え?あ、うん。あー、でも…と視線を目の前の人物から逸らすと視界にはクラスメートの姿が入る。そしていつも一緒にいる友人が仁王立ちする。
「ちょっと、そらはうちのチームでしょうが。駄目だよ」
「だってお前、妖怪チームに勝ったじゃん。めっちゃボール当てまくってたじゃん。人間のお前には特別な力があんだよ。だからオレ達のチームに来いって!」
「オレも賛成です。あ、よければこの薔薇をどうぞ」
「お前なら迎えてやっても構わん。強いならな」
あららー?あたしってばモテモテ?
でも次この子らのチーム(命名幽白チーム)と対決だしな…今抜けたらうちのチーム一人減るし。
「うーん…」
正直自分を歓迎してくれているのは嬉しい。ので、ぶっちゃけ幽白チームに入りたい。だって好き漫画のキャラ達が目の前にいるんだよ?今しか会えないかもなんだよ?
腕組みしながら唸るが、顔はきっとにやけている事と思われる。
そうしているうちに視界がぼやけてくる。
あれ…。
深い眠りから意識が浮上し始めた頃。何だか足音のような音が聞こえる気がする。振動も伝わってくる気がする。
薄っすら目を開けると、目の前には木製の壁。
あれ、もしかしてさっきの夢?うそー、マジかあ…。折角久しぶりに二次元の夢見られたのに夢オチかあああ!寝ながら僅かににやけて緩んだ口元に気付いて引き締め、再度目を閉じる。
今更気にしないが、夢診断曰くアニメなどの夢を見る時は現実逃避をしている時らしい。常に現実逃避をしているので納得したのは随分前の事。二度寝をしようと目を閉じたまま欠伸をする。
ふと可笑しな点に気付いた。あたしは横を向いて寝る派だ。今現在も右横を向いているが、見知らぬ壁があった。自分の部屋の壁は確か白のはず。何で木製?そして欠伸で吸い込んだ空気に違和感。部屋の匂いが何か体育館独特の匂いな気がする。部屋の芳香剤は確かハワイアンパラダイスの香りだ。低価格ながらもハワイアンなパラダイスの匂いがする部屋、なはずなのに…?
また目を開けるが変わらぬ景色。寝起きでぼやけ、正常に働かない思考を巡らせ何故かを考える。すると聞こえた複数の声と響く足音やスキール音。体に振動が伝わる。足音?起きる前にも聞こえたような。ってか、え?
ぐるんと顔を左に顔を向けると、見えたのは自室の天井より遥かに高い天井。そして幾つもの大きな電球。眩しさに目を細めつつ視線を少し右に戻すとこの位置からだと袖幕、脇幕、緞帳、そして演台など思われる物が見上げられる。所謂ステージの設備。
そしてこの独特な匂い。間違いない、此処は体育館だ。
あたし部屋で寝てたと思うんだけど。ゴールデンタイムである22時にちゃんと就寝したと思うんだけど!ガバッと起き上がると掛けられていた布がずり落ちる。急に起き上がって頭が少しクラッとしたが気にならなかった。
オレンジの、これは毛布でも布団でもなく、ジャージ?ふと枕を見ると白で、字が見えるが丸められていて読めない。そして自分の下にあるこれまた白のジャージ。ジャージまみれ。何で?
「あ!目が覚めましたか?」
唖然としていると聞こえた女の子の高い声。顔を上げると駆け寄って来る女子が見えた。
桃色の長い髪を靡かせ、スカートを翻しながら駆け寄って来るこの子に見覚えがあり過ぎる。
桃井嬢だ。黒バスの桃井さつき。
「大丈夫ですか?痛い所とかないですか?」
「え?あ、うん」
「そうですか!よかった!」
あたしの目の前に膝をついて座り桃井嬢はふわりと笑う。これが天使ってやつね。視線を少しずらせば、他にも黒バスキャラの面々がいた。おい、結構いるぞ。ヤベェ興奮する。
そうかまだ夢の中か。ははーん、あれだな。夢のまた夢的なあれだな。まさか二重で二次元の夢を見られるなんてラッキー!
と思いながらも、夢とは違う感覚に気付く。意識がはっきりし過ぎているし、音なども鮮明だ。
夢の中で痛かった事や爆笑した事もあるけど、あたしの場合は夢の景色はぼやけているから夢だと認識出来る。他の人がどうかは知らないが。
寝起きから覚醒し始めた意識の中、何となく夢じゃないと思い始めてきた。いや、黒バスキャラがいるから都合よく考えているとかじゃなくてね?まあ少なからず都合よく解釈はしているけども。あれだ、女の勘ってやつ。うん言ってみたかっただけ。
さて、ここで状況を整理したい。夢ではないという方向で。今あたしがいるのは何処かの体育館。あたしはステージの下で寝ていて今起きたばかり。周りには黒バスキャラ。みんなこっちを凝視している怖い。みんなは部活のジャージ姿で、リコ嬢と桃井嬢はいつもの制服スタイル。あ、シューズは履いてるみたい。
そしてきっと此処は黒バスの世界か、或いはあたしの世界でも黒バスの世界とも全く違う空間か、だ。遂にトリップかー。ありがたや。でも最近よく読んでるホラゲトリップだったら笑える。チビる。
ちなみにあたしの格好は運動する時のスタイルである。誰がパジャマから着替えさせたんだろうか。
上下長袖のアディ◯スの金ライン黒ジャージ、愛用のバレーボールシューズ。長ズボンの下にはハーフパンツ。床に座っていてもお尻や足がそこまで冷たく感じなかったのはハーフパンツのお陰みたいだ。更にハーフパンツの下には黒タイツ、くるぶしソックスも履いてる。上はジャージの下にインナーとして黒のTシャツも着用。
そうさこれがあたしの運動スタイルさ。真っ黒でいいだろ中二病っぽいだろ。誰か知らんが忠実に再現していて、大変宜しい。やっぱこれが唯のトリップじゃなくて(可能性の問題として)ホラゲトリップなら最悪の場合に備えて動ける服装がいいもんね。
桃井嬢に声を掛けられてここまでの思考、約2秒。キモいな自分。
「あー…えっと、此処、何処?」
ここでちょっと会話をしてみよう。あたしがみんなを知ってるとか失言しないよう気を付けるべし。
頭を掻きながら目の前の少女に問い掛けると、笑顔から変わり少し真剣な顔をして口を開く。
「吃驚する事だらけだと思いますけど…説明しますね。赤司君!」
彼女の呼び掛けに応え近寄って来たのは、言わずもがな帝王赤司征十郎だった。生の威圧感パネェ!やっぱこれ夢じゃないわ!だって威圧感パネェ!!
彼はその場に片膝ついて座り、あたしと目を合わせる。
「初めまして。オレは赤司征十郎です。名前を聞いても?」
「あ、山口そらです」
「山口さん。順を追って話します。こちらに来てもらえますか?」
あれ?物腰柔らかくね?しかも俺司って事は、WC後?和解したの?
そういって指し示す方向は体育館のど真ん中。そこには数人集まっており、見た感じ主将だらけですね。まるで会議でもしていたかのような。
こーれーはー!やっぱりホラゲ的展開!の予感!夢小説でよく読んだやつ!あかんやつ!
頷いたあたしは立ち上がろうとして複数のジャージを思い出す。
「ごめん、これ誰のジャージ?」
「あ、オレです!」
オレンジのジャージ一着と白のジャージ二着。手元に手繰り寄せながら聞くと声が上がり足音が近付いてくる。見上げるとつり目のHSな彼。高尾和成。成る程、秀徳のジャージね。
「掛けてくれたんだよね?ありがと!お気遣い感謝します」
「いえいえ!風邪引いちゃうと駄目なんで!」
人懐っこい笑みを浮かべる高尾少年。実は笑顔の裏は疑心だらけ〜とか考えないよ面倒臭い。このままストレートに受け止めて深追いはしない。
「あとの二つは…」
「僕と火神君のです」
声がして顔を向けると皆より影が薄い少年、黒バス主人公の黒子テツヤ。そして隣には光の相棒火神大我。この二人か、マジで?早速主人公ズと関わっちゃった。感激。
「ありがとう。ごめんね、頭とか下に敷いちゃって」
「いえ、好きでやった事ですので」
「気にすんな。…です」
一瞬黒子少年は目を見張ったが、直ぐに微笑を浮かべた。儚い系少年ヤベェ。黒子少年は枕代わりにしていたジャージで、火神少年は下に敷いていたジャージ。それぞれ埃を払ってお返しすると嫌な顔一つもせずに受け取った。紳士三人よ、感謝永遠に。
寝起きで重たい体を持ち上げ、赤司少年について真ん中へ移動する。同時に全員を集合させる赤司少年。促されて座ったそこは赤司少年の対面。主将ズ&あたしが円を描いて座り、他の子らが自分達の主将の近くへ周りを囲むように座った。全員集合する意味。この図何か嫌だわ。みんな大きいし。
あたしの両隣聞きたい?左がサトリで右が悪童だよ。何のイジメって思ったよね。あたしを探るっていう魂胆が見え見えというか、隠す様子微塵もないから吹き出して笑いそうなんだけど。笑ったら視線で殺されるからしないけど。
「急な事で混乱しているとは思いますが、あなたが此処に来るまでの経緯をオレ達が見て知っている範囲で教えます」
何を説明されるのか、ちょっと怖いな。何となく予想はついてる部分はあるにしろ、この状況を分析しているようで飲み込めていない自分がいるんだから。
「ですから、山口さんも嘘偽りなく教えて下さい」
交わりのない自分達に関わりない人を疑うのは、ホラゲトリップの定石ですねわかります。
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