SPIRIT WORLD説明
「まずはみんなから自己紹介を」
赤司少年の言葉で順に簡単な自己紹介をされる。よし、呼ぶ時は勝手にあだ名付けて呼んじゃおう。
一通り聞いて今此処にいるのは洛山、陽泉、霧崎第一、桐皇、秀徳、正邦、海常、そして誠凛。誠凛は部員全員+アレックス、正邦は岩村努と春日隆平と津川智紀だけ、桐皇はスタメン+桃井さつきだが、他の学校はスタメン五人ずつ。偏りが酷いな、特に誠凛と正邦。
あ、スタメン言ってるけどWC後じゃなくてWC時のスタメンね。でも時期がWC後なら引退したはずの3年もいる事にちょい違和感。まあ気にしないけど。
「山口さんお願いします」
「あ、うん。山口そらです。気軽に呼んでね。敬語も無理に使わなくていいよ」
「ほなお言葉に甘えて。女性に失礼やけど、年齢は?」
「24歳。一応保育士の資格あり!」
赤司少年の促しで自己紹介スタート。サトリもとい今吉少年に年齢を聞かれ、職種もついでに答えると数人が目を見張った。何だ、老けてでも見えたか。
「年上だとは思ってたけど…結構離れてたんだ。18から20歳くらいかと思ってました」
「なんていい子なんだ…!ありがとう。みんなは高校生?」
「はい」
若く見えるって言われた!段々年齢が重なる度に老けてないか不安だったけど安心した。
そう言ってくれたのは桃井嬢だ。いい子。
「あんまり保育士っぽくねえな…」
聞こえてるよ火神少年。
「目が覚める前の事は覚えていますか?」
「うーん…22時過ぎに寝て、起きたら此処…だね」
赤司少年が話を戻す。先程も考えた事だが再度腕組みをして考えるものの、やはり目覚める前までの記憶は22時の就寝しかない。
「あえて言うなら起きる前に夢は見たかな」
「どんな夢や?」
「漫画のキャラ達とドッジボールする夢!」
「「………」」
「ちなみにあたしは高校生だった。キャラ達に引っ張りだこだった」
「…夢の話は置いといて」
ニヤニヤしながらやや興奮気味のあたしに対して皆一気に冷めた感じになった。何だよ聞いてくれてもいいじゃん。特に重要だと思わなかったようで、今吉少年に話を区切られた。そして彼からの質問責め。
「じゃあ此処に来たきっかけとかは知らんっちゅうわけかいな?」
「そーゆーこっちゃね」
「此処は見ての通り体育館なわけやけど、見覚えは?」
「全くないな」
「ちなみにバスケの経験は?」
「無に等しいね!学生時代に授業でやったくらいかな。バレーは経験ありだよ、このシューズを見よ」
「…では、オレ達が知っている事を教えます」
トントン拍子に受け答えしていくと、赤司少年が口を開く。
「結論から言うと、オレ達はこの空間に閉じ込められています」
察してます。
「オレ達は約2時間前に此処に来ました。時計がないのでおよそですが。数人ずつバラバラで、この体育館ではなく隣接する校舎の各教室で目を覚ましています」
「学校?」
「中学校かと思われます。あそこにある校歌に中学校との文字が見えますし、校舎内も中学校と推測出来る部分がいくつかあったので」
指差された方を見上げると、ステージ近くの壁に校歌が掲げられている。彼が言うように、燻んでいるが◯△中学校との文字が見える。はーいホラゲ確定。
「此処から出ようとしたんやけど何処のドアも窓も開かへんし、壊す事も出来へん。外も見ての通り変な色して気味悪い」
次いで左隣の今吉少年が説明する。彼が指す方を見ると窓から見える空は淀んだ虹色だった。汚い虹…みたいな…。これぞ異世界って感じ。
「何か脱出の方法はないか各々が探索を繰り返していくうちに次々に集合してって、集合場所を取りあえず此処にしたんや。広いし電気もつくしな」
そして一番聞きたくなかった事を無情にも告げられる。
「一番の理由はバケモンが此処には来れへんって事やねんけど」
「…化け物?」
予想はしていた。が、知りませんでしたと装うように目を丸くさせて復唱する。
「ゾンビや幽霊みたいな奴らが校舎内には
彷徨いとる。言うたら怪物やな。何度かワシら追い掛けられとるんやけど、此処には入ってけえへん。厳密に言うと、校舎と体育館を繋ぐ渡り廊下の校舎側のドアから来やへんねんけどな」
「うへぇ…」
体育館が安全というのも在り来たりな話だ。にしても、本格的なホラゲになるとは…折角キャラに会えるんだったら普通にトリップして会いたかったわ。何で此処やねん。あ、移った。
「此処を集合場所としてからも脱出のヒントを得る為に複数のチームに分かれて探索をしました。幾つかの紙が見付かっていますが、あなたも探索中に見付けられたんです」
「え、何処で?」
「オレ達が校長室で見付けたよん」
赤司少年と交代するかのように声がして、右に顔を向けると花宮少年の向こう側に薄紫の髪が目元まである少年がいた。あれだ、えっと、原一哉。
「校長室のドアが他とは違ってね。可笑しいなって話になって書かれてた暗号解いて開けたらお姉さんがいたんだよん。壁に錠で手足貼り付けられてた」
「何プレイそれ」
そんな趣味あたしにはございませんが。両手両足に枷を掛けられて壁に貼り付けられている場面を想像して顔が引き攣る。体重を支えるのに手首とか痛かったんじゃ…と思い袖をちらっと捲ってみると、予想通り赤くなっている。
おい嫁入り前の体に何て事してくれてんだ。
「見た感じ普通の人っぽかったから取りあえず見付けた鍵で錠を外して、此処に連れてきたってわけ」
「そっか。ありがとう、本当に。でも助けてもらっといて言うのもなんだけど、よく助けようと思ったね」
「まあね」
「もし人間に化けた怪物だったらどうするの?」
ちょっと試すような事を言ってしまった。原少年を見つめると、目は見えないが口元に弧が描かれ、噛んで膨らませていたガムが揺れる。
「殺せばいいから問題ないよん」
そう言うと思ってました。期待を裏切らないでくれてありがとう。
けどあっけらかんと言われたもんだから口が引き攣っちゃったよん。
「そ、だね。うん、全くもってその通り」
怖いな今時の若者は。
「非現実的な事が起こっている此処は、オレ達の住む世界とは違う何処か別の世界だと推測しています」
「まあ、聞く限りそうっぽいね」
じゃあ黒バスの世界でもあたしの世界でもないなら第三の世界って所かな。まあ黒バスも非現実的な部分多いけどね、光を纏うとか人間業じゃない事とか起きてるしね。
「そこで山口さんに質問なんですが」
「ん?」
「あなたがオレ達を此処に連れてきたのではないですか?」
王道の質問。うん、ストレートで正直で宜しい。疑問を包み隠さないところいいと思う。イイネ押す。
あたしはちょっと心中ふざけてたけど、みんな真剣だからちゃんと答えなきゃ。
「違う。けど、何で?」
「此処にいるあなた以外の全員が知り合いです。またバスケ部という共通点もあります。その中であなただけが年齢も違えばバスケという共通点もない。そして此処に来た状況が違う。それにその異様な落ち着きようも疑心が生まれます」
まあ言っている意味は当然わかる。疑われる異質な存在である事は百も承知だ。言ってないからみんなは知らないけど確実にこの子らとは違う世界から来てるしね。
でも違うもんは違うから弁解しないといけない。こういうのからメンタル削られてくんだよね。普通知らない所に急に来たらビビってテンパるけど、あたし自身も吃驚な落ち着き加減だし疑われるのは納得。多分危機感が足りてないだけだけど、上手く回避する為言葉を選ぶ。
「雰囲気で察してたよ。みんな知り合いかなーって。そうなんだよね、あたしだけ仲間外れだから疑うべきはあたしなんだよな。でも胸を張って言おう。あたしが連れてきたんじゃない。あと落ち着いているように見えて結構ビビってるよ」
その言葉に赤司少年はスッと目を細めた。
「あたしは見ての通り平凡な奴だよ。二次元大好きだけどそれだけ。頭は別によくないしこれといった特技もない。此処が何処かは知らないしこれだけの人数を連れて来る技量も技術もないよ」
「口先だけなら何とでも言えます」
「じゃあどうすれば信じてくれるかな?ぶっちゃけあたしからすれば君らが異質に見えるよ。こうも上手く知り合いが揃うもんなのかって」
そこまで言うと赤司少年の視線が少し鋭さを増した。だがあたしも退くわけにはいかん。
「でも君らを疑ってるわけじゃない。見てて君らはあたしと同じで連れてこられた側なんだろうなーって思うし。凄いあたしを警戒してるもんね」
彼らが本当の黒バスキャラである事を信じようと思う。もし全員化け物でした〜だったらあたしに運がなかった事にするし、本物なら本物で運がよかったと思えるし。
「完璧に信用はしなくてもいいけどさ、ちょっとは信用してもらえるように行動するから見て決めて欲しい。あたしもこんなわけのわからない所さっさと出たい、出来れば怪物と会う前に。けど一人じゃ無理なのはわかるから是非とも協力して欲しい。協力し合って此処にいる全員が出られるのがベストだと思うのね。だから、お願いします。出る為なら何でもするから!」
こればっかりはちゃんとお願いしなければ。立場が危ういのはあたしだし、いくら年上であろうともここは下手に出ておくべきだ。
正座して両手を膝上に固めて深く頭を下げる。どうか見捨てないでミスター。
「…わかりました。では、オレ達の監視下で動いてもらいます」
「了解。ありがと」
何とか首の皮一枚繋ぎ止めたぜィ。
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