SPIRIT WORLD終始
あれからマコマコ達にお願いしてみんなに連絡を取ってもらった。お願いしないと連絡するつもりなかったらしい。酷い。
部活後に都内にあるストリートバスケに集合という事になって、夕方霧崎の五人に連れて行ってもらう。ちなみにそれまでは霧崎に居座らせてもらった。
ストリートバスケに向かうと既にみんな揃っていた。あたしの姿を捉えて真っ先に走ってくるのはさっちゃん。
「そらさんんんん!!うわぁぁあああん!!」
「うっ!」
抱き着いてきてボヨンとたわわな胸に押し潰されよろける。何とか受け止めて抱き締め返す。
「ううっ、そらさん狡いです!私達だって言いたい事いっぱいあって、謝罪もお礼も何も言わせないでぇぇぇ!!」
「ごめんね、さっちゃん」
「許しません!」
体を離した彼女に泣きながらキッと睨まれて言葉に詰まる。これは本気で怒っている。それもそうか、言い逃げしたも同然だもん。思わず悄然としてしまっていると、さっちゃんはわなわなと肩を震わせた。
「んもう!!可愛くて怒れないいいい!!」
何だそれ。
「落ち着けさつき」
「話が進まないっスよ〜」
峰さんときー君に止められてさっちゃんが離れた途端、みんなが一気に押し寄せ暴言の嵐。
「あの時テメェだけ好き勝手言った事はオレも許さねえ」
「自分だけスッキリして行くとか自己満も甚だしい!」
「別世界から来た事だってオレらに知られて気にしてるくせに、オレらに本心言わせないままで逃げやがって!」
「ちなみに、別にそらさんがオレ達の事最初から知ってようがどうでもいいんだよ。そらさんからしてオレ達は漫画の登場人物でも、助けてくれた事には変わりないんだからあの時礼くらいは言わせるべきだったと思うぜ」
などなど。仰る通りです、はい。
「ごめん、なさい…本当に」
深々と頭を下げるとポンと頭に手が乗った。顔を上げればそこには赤君の姿が。
「え!?あ、赤君、京都なんじゃ…」
「会いに来たんです。陽泉の皆さんもいますよ」
よく見ればあっちゃん達もいてよく気付かなかったなと思った。目立つのに。
「…わざわざありがとう」
「当然です。みんな会いたかったんです、そらさんに」
そう言われてまたまた涙で視界が滲む。
「皆さんの言う事は全員の思いです。充分に反省して下さい」
「はい…」
「でも約束は守ってくれましたね。またオレ達に必ず会うって」
赤君にそっと頭を撫でられて涙が頬に伝った。
「案内人として頑張ってくれてありがとう」
「一人の人間として見てくれてありがとう」
「みんなを受け入れてくれて、ありがとうございました」
「守ってくれて、ありがとうございました」
各々に礼を言われて涙は止まらなかった。勿論嬉し涙で前が全然見えないでいると、さっちゃんが次はそっと抱き締めてくれた。涙で濡れるのを余所に肩口に顔を埋めて、あたしはいっぱい泣いた。
「うっ…みんな狡い…」
「お前に言われたかねーよ」
峰さんのツッコミを聞きながらあたしはさっちゃんにきつく抱き着いた。
「会えてよかった…っ」
「はい。…そらさん、別れてからの事聞かせて下さい。勿論私達の話も聞いて下さいね」
あたしはコクコク頷き、泣き止むまでさっちゃんに抱き締められていた。
その後、こっちでは一週間経っている事、あたしの世界であった事、ひのちゃんはあたしをこっちに送ってから完全に成仏した事などいっぱい話をした。今現在霊感がある事も伝えると哀れむような視線を頂いた。いいよもう、それくらいのオプション気にしないから。
この場にいない三人、アレクさんとヨッシーとにじむーはアメリカらしい。アメリカにいるのにあの世界に呼ばれてたのね。ちなみに灰君もこの場には来ていてちょいちょい尻触りに来る。空気読め。
唯一の所持物である貯金通帳と印鑑二種は、ひのちゃんに移動中この世界にある似た名前の金融機関に変換するのをちょちょいとしてくれたようで使えるそう。もう神レベルにハイスペック過ぎて突っ込む気もないから本人に突っ込んでない。
戸籍は作ってくれたので一安心。何かここまで色々してもらって申し訳なくなってくるが、ひのちゃんは命のかかった世界に巻き込んだお詫びだと言って最後にお礼を残して消えていった。
赤君から聞いた話ではあたしの世界に通じる入り口とかないのか色々調べ、何とかあたしと再会出来ないか働き掛けてくれていたらしい。でも何もわからなかったから自分達からアプローチするのは無理かと諦めていた頃にあたしが来たそうな。調べてくれた事が嬉しくて、あたしがお礼を言うと彼は優しく微笑んでくれた。
「あ、そうだ。あたしにとって嬉しい事一つ発表したいと思います!」
「何なん?急に」
みんなの前に仁王立ちしたあたしはエヘンと踏ん反り返る。スガが怪訝な面持ちで聞いてくる。
「あたし見て気付かない?何か変わったでしょ?」
「胸なら変わってねえぞ」
「青峰」
「ハイ」
あたしが怒る前に赤君に怒られた峰さん。ざまあ。
「ふふふ。実はあたしの今の体は18歳なのです!」
「「…は?」」
「だから清ちゃんとか高3と一緒って事!移動中の反動で若返ったってひのちゃん言ってた。ところでこっちの世界でももう直ぐ春なんでしょ?じゃああたしは社会人一年目だ」
これでみんなとの年齢の差は縮まったね!と喜ぶあたしを余所に、みんなの反応は微妙だった。
「…え?何この反応の薄さ」
「別に前と変わんねえし」
「元からそらさん若かったし」
「外見が若返っても中身は24歳だろ」
そう言われて、あたしのこのアピールの意味…としゃがんで落ち込んでいると、ひょいと誰かに持ち上げられ高い高いされる。
「あっちゃん?」
「じゃあそらちんと年の差埋まったって事で何も気にしなくてもいいってわけねー?」
周りは変わらないとか若かったとか言ってくれるけど、あたしはちょっと年の差気にしてたから嬉しいよ。そう伝えると、笑ったあっちゃんが爆弾発言をした。
「じゃあオレと付き合っちゃおっかー?別に24歳でも気にしないけど、そらちん気にしてたんでしょ?それがないなら安心して付き合えるよねー」
「え」
「ええええええ!!?」
何と!軽く告白された。周りは唖然としさっちゃんだけが赤面して叫んでいた。
「紫原ァァァァ!!」
「アツシ、抜け駆けはよくないな」
「その前にそらさんを降ろせ」
みんなもその絶叫に覚醒して離せやら何やらてんやわんや言い合う。
「やだー」
駄々をこねるあっちゃんはあたしを人形を抱くように抱き締めると走り出す。誘拐かよ。
ストリートバスケ内を走り回るあっちゃんを追い掛ける数名。あっちゃんも楽しそうで笑っている。追い掛けてくる面々を見てあたしも笑った。みんな可愛過ぎ。
「オレ真剣だよー?そらちん飽きないし、ちゃんと考えてね」
笑っているあたしの耳に届いたあっちゃんの言葉に、あたしはじわじわ赤面する事になった。中身24歳が16歳に余裕ないってどゆ事。ずっとそうだったけど。
結局いつまでも続く追い駆けっこは赤君の言葉で終わり、あたしは住む所が見付かるまでリコぴん宅でお世話になる事になった。
今日は一旦解散になり、明日また数人で集まりあたしの家探しをしてくれるそう。赤君が物件を幾つか紹介してくれるらしいけど、お高くないかだけが心配だった。
わざわざ上京してくれた洛山と陽泉のみんなはかがみん家や赤君宅や実家で過ごす模様。来てもらって言うのもなんだけど、部活大丈夫なのかな。
あたしが来て以降数日はバタバタだった。赤君のお陰で格安でセキュリティ万全のマンションを都内で借りられて決まったら即入居、生活物品はこれまた赤君が殆ど揃えてくれてお金を払うだけでかなり楽をした。
あとは携帯や衣類などを購入して、今まで貯めてきた貯金と両親の遺産があるとは言え貯蓄はしたいので、アルバイトで喫茶店に雇ってもらった。
ここまで色んな人が介入して手伝ってくれたお陰で、スムーズに早く生活を整える事が出来た。
リコぴん宅は直ぐお
暇する事になって寂しがっていた。泊まらせてもらった日はリコぴんパパとお喋りしたりリコぴんと女子トークしたりして楽しかったです。めっちゃエンジョイしてます。
テッちゃん達からひのちゃん達の話は聞いた。戻って来て以降調べたら、由暗君とひのちゃん二人共謎の突然死と診断されたらしい。由暗君もひのちゃんも同じ日、テッちゃん達が戻って来た日に死亡が確定されたとの事。多分二人は創造者だから世界が崩壊したと同時に体が仮死状態から死亡に変わったんだと思う。
ひのちゃんのご両親は二人の葬儀など済ませて今は落ち着いたところらしいが、会いには行っていないとの事。相手が神社の者とは言えあたしがいない中で非現実的な話を上手く伝える自信がなかったらしい。
「此処?」
「はい」
そして今、あたしはテッちゃんとかがみんと一緒にひのちゃん宅の前にいる。と言っても、神社なのだけども。
鳥居を潜って(ちゃんと一礼したよ)進むと神殿前に男性の姿があった。こちらに気付いて振り向いたその顔は、何処となくひのちゃんに似ていた。
「初めまして。山口そらと言います。有白陽葉さんの事で伺わせてもらったのですが」
そう言うと男性は瞠目してあたしを見つめた後、父親だと名乗って微笑を浮かべ奥に通してくれた。
通されたのは神社の離れにある自宅。ひのちゃんのお母さんである巫女さんの格好をした女性も現れて、あたし達は事の経緯を全て話した。
突然死と扱われてしまった以上、真実が例え信じられなくても知りたいだろうと思ったから。あたしはこっちに来る時にずっと考えていた事だ。ひのちゃんのご両親に会って事実を全て伝える事を決めていた。
由暗君が原因なのでどうしても悪いように伝える部分はあるが、それでも二人は真剣に話を聞いてくれた。
「突然すみません。急にこんな事を話されても困るとは思ったんですけど…あたしはひのちゃんに助けられました。だからひのちゃんのご両親に挨拶をさせて頂きたかったんです。…我が儘でごめんなさい」
そう言って頭を下げると後ろの二人も頭を下げたのがわかった。
「顔を上げて下さい。ありがとうございました、本当の事を話しに来てくれて」
「突然死が受け入れられなかったんです。けど、これでハッキリしました。二人が成仏してくれているのなら、安心しました」
頭を上げると二人は静かに涙を流していた。
「私は最初あなたを見た時に感じた事のある気を感じました。陽葉のものです。その理由もわかり、胸の中にある蟠りが取れました」
旦那さんは胸の辺りを摩ると涙を拭ってあたし達に向かって奥さんと一緒に頭を下げた。
「由暗君と陽葉がご迷惑をお掛けしました。そして助けて頂き、ありがとうございました」
「あの二人の分も、前を向いて生きて下さい」
あたしは笑って頷きテッちゃんとかがみんと一緒にまた頭を下げた。
「ひのちゃん、由暗君。ゆっくり休んでね」
ご両親にお墓を案内されて、二人が眠るお墓へと足を運びお参りをしに来た。持ってきていたお花や線香、お供え物を添えて三人でお参りする。
「影葉君は、どうなったんでしょうか」
「有白の所に戻れてたらいいけどな」
テッちゃんとかがみんの言葉を聞いて、あたしはお墓をじっと見つめる。そこからは何となく、ひのちゃんと由暗君以外にもう一つひのちゃんに似た気配を感じた。
「…大丈夫だよ、きっと。戻れてなかったらあたしが修行して召喚するわ」
「霊能力極めるんですか?」
「お前保育士じゃなかったっけ」
「こっちでは免許ないから今は保育士じゃないな。霊媒師で金儲け出来ないかな」
「直ぐにお金に結び付けるのはよくないと思います」
そんなやり取りを楽しんで、合わせていた手を降ろす。
「またみんなで来よ。人多いから何部かに分けないとだけど」
「そうですね」
「じゃあ帰るか」
「ん。また来るからね、三人共」
あたし達は手を振ってその場を後にする。墓場から出る直前、ふわりと優しい風があたしの背中を押す。何となく振り返ったその先に、微笑む三つの影が見えた気がした。
「ありがとね」
そう言葉を残すと、先を歩いてあたしを待ってくれている二人に追い付く為しっかりとした足取りで歩を進めた。
あたしはこれから、この世界で彼らの分まで精一杯生きる事を誓った。
END.
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