SPIRIT WORLD
包容

「ひ、のちゃん」

 そらさん、また会えましたね。あ、初めまして、有白陽葉です。

 あら可愛い子!そらちゃんのママとパパで〜す。

 呑気に自己紹介する三人にあたしはついて行けなかった。

「な、何で?」

 あたしの力、そらさんの中にまだ残ってるんです。もう案内人ではないですけどそらさんにはまだ不思議な力が残っています。それが癒着して、そらさんの力になった。不思議な力の根源はさっき聞きましたけど、何かの粉の所為だったんですね。

 ひのちゃんはゆっくり近付いてくると、あたしの隣まで来た。

「え、えっと…意味がわからないんだけど」

 ふふ、すみません。あたしが今此処にいるのは、そらさんの中にあるあたしの力が作動しているからです。あたしは勿論ご両親も視えているのは不思議な力があの世界で覚醒して、あたしの力と相成ってそらさんの霊能力になったんです。

「え?って事はあたし一生霊感あり?」

 はい。

 ナンテコッタイ。
 すみませんと申し訳なさそうな顔になったひのちゃん。でもまあ、いっか。

「お母さんとお父さんに会えたからいいや。気にしないで」

 …ありがとうございます。

 ひのちゃんは柔らかく微笑むと、真剣な顔をして両親に向き直る。

 あたしの所為でそらさんを危険な目に遭わせてしまってすみませんでした。

 頭を深く下げた後、ひのちゃんは顔を上げてあたしを見つめた。

 そのお詫びと言っては何ですが、あたしに出来る事が一つあります。皆さんのいる世界に移動させる事です。向かう先はあたしの生まれた世界なので片道切符ですが移動出来ます。但しあたしの力ではこの世界に戻って来る事は出来ませんが…

 あたしは目を見開き、ひのちゃんを見つめた。

 そらさんが望むなら、叶えます。出来るだけ後悔しない方を、選んで下さい。

 ひのちゃんの言葉に眩暈がした。みんなに会える。そう思うと心が揺らぐが、あたしはこの世界の住人であって、帰って来る場所あって。

 何悩んでるの?会いたいんでしょ?行きなさい。

 さっきママが言ったように心は離れないよ。世界を移動する事が違反だとでも思うならそれは間違いだぞ。移動出来るようになってるんだから、移動したもん勝ちだ。

 何そのジャイアン的思考。

 ママとパパはそらちゃんの幸せを願ってる。何処ででもいいから、生きて。

 また会えるよ。そんな気がする。

 そんな両親の言葉に押されてあたしは涙が溢れる目元を拭う。どれだけ拭っても拭っても溢れる涙。悲しい涙から、嬉しい涙に変わった気がした。

「ありがとう、お母さん」

 大好きよ、そらちゃん。

「ありがとう、お父さん」

 強く生きろよ。

 双方に抱き着くと暖かく抱き締め返してくれた。あたしはひのちゃんに向き直ると、頭を下げた。

「どっちでも後悔はすると思う。けど、あたしはみんなの所に行きたい。みんなに会いたい」

 わかりました。

 ひのちゃんが微笑むと、暖かい光で彼女が光り始めた。
 同時に、仏間の障子が開いた。

「お、おばあちゃん。おじいちゃん。ごめん、煩かった?」

 急に来た二人に吃驚するが、視えていないと思うと一人を装わなければ、

「「行ってらっしゃい」」

「…へ?」

 祖父母は優しく微笑んでいた。え、何でそんな事言えるの?

「私達の娘と孫の考える事がわからないはずないでしょう?」

「またおいでね。元気でな」

 ちらり、と視えていないはずの両親の方を見たおばあちゃん、おじいちゃんには驚かされるばかりだ。

「…っ、うん!行ってきます!」

 行ってらっしゃい。

 あたしは泣きながらも精一杯笑顔で挨拶をする。そしてひのちゃんに片手を取られてあたしの体も光り始めた。

「あ、そらちゃん忘れ物!」

「え?」

「無駄遣いしちゃ駄目よ?」

 おばあちゃんに空いている手に握らされたのは通帳と印鑑。二つずつあって、名前を見て驚く。

「お、おばあちゃん…」

「あなたの両親のお金よ。大切にね」

「う、うん!でもおばあちゃん」

「なぁに?」

「何であたしの通帳と印鑑此処にあるの?怖いんだけど」

「そらちゃんの鞄に入ってたの。行くなら必要でしょ?」

 そりゃそうだけど何であるとわかった。入れっぱなしにしていた事あたしでも忘れていたのに。怖いよおばあちゃん。

「でも、ありがとう」

「ええ」

「向こうで使えるといいけど」

 そこまで言って一層あたしとひのちゃんの体は光る。ほほほと笑みを笑うおばあちゃんとにこやかなおじいちゃん、両親の顔を最後に見て、あたし達はその場から消えた。










【花宮side】

 元の世界に戻ってきてから一週間。今日は土曜日で一日練習がある為、部員全員が体育館へ集まった。
 全員あの時のことは覚えてるし、そらの事も忘れちゃいねえ。だが引きずるような性格でもないオレらは普通の生活リズムを取り戻した。

「あーあー、今日も練習かー」

「うっせえ。二倍にすんぞ」

「鬼監督!」

 原の文句を聞きながら体育館へ入り、ランニングやストレッチを始める。

「あの体育館とはやっぱ別物だねぇ」

「そういや花宮もそらさんも急に落ちてきたなー」

 原とヤマが見上げながら宙を見つめて色々ぼやいている。何だかんだ気にしてんだな、と何となく思いながら柔軟していると、ヤマが変な声を上げた。

「ぬぁ!?」

「ああ?」

「キモいよ山崎」

「いやいや見ろってアレ!!」

 健太郎にも暴言吐かれるヤマはいつもなら食って掛かる所を無視して宙を指差す。原も見上げている宙を見れば、そこには見覚えのある穴。
 えっ、と全員瞠目していると考える間もなくそこから人が落ちてきた。

「ふぎゃ!!」

 尻餅ついたソイツは女。黒タイツにショートパンツ。ベージュのニット服を着込んだ女。
 ソイツにも見覚えがあった。

「…そら?」

「え?あ…マコマコ!!」

 ソイツは間違いなくそらだった。そらはオレに突進してくると抱き着いてくる。

「マコマコォォォ!!みんな!!会いたかったァァァ!!」

「そらさん!?」

「うわ、マジ?」

「ミラクル起こったね」

「奇跡だな」

 ヤマと原、健太郎と古橋が各々発言する中で、面識のない他の部員はポカンとしたり急に人が現れて動揺していたり、カオスだった。

「会いたかった…ごめんね、ごめんね…!」

 えぐえぐと泣きじゃくるそら。ふはっすげえ顔。何に対して謝ってんだコイツ。
 全然泣かなかったくせにめちゃくちゃ泣いてんじゃねえか。

「ふはっ!ブッサイク」

「煩いいいい!!だって…だってぇぇぇ!!」

 そらは泣き止むどころは益々泣いて収拾つかない。

「あーあー。花宮泣かせたー」

「元から泣いてんじゃねえか。…チッ」

 俺より年上のくせして泣き虫だな。いい加減泣き止めうぜえ。
 そう思いながらオレは抱き着くコイツを抱き締め返してやった。

「「えっ!!?」」

「!?ま、マコマコ!?」

「あ?抱き着いてきたのはテメェだろ」

 周囲もまさか俺が抱き締め返すと思わなかったのか驚き、そら本人も赤面して見上げてきた。お陰で涙は引っ込んだようだ。単純だな。

「いい加減泣くな。テメェが帰ってきたんなら、他の奴ん所にもとっとと行け。どうせ他の奴にも会いたいんだろ」

「っ、マコマコォォォオオオオ!!」

「うるっせえ!!」

 コイツ何処にいてもうるせえんだな。
 つか原達はいつまでもこっち見んな。

43/45
←|→

BACK/TOP
ALICE+