SPIRIT WORLD
もしも花宮loveなお助けキャラがいたら

 第三資料室探索後、廊下に出た霧崎とあたし一行は三階の別館へと進もうとする。
 が、直ぐに一行の足は止まる。

「…何かあそこでモゾモゾしてんだけど」

 かずやんの言う通り、廊下の隅に何やら黒く小さいモノがモゾモゾと動いている。
 するとその影は反対側を向いていたようでクルッとこちらを向いた。

「市松人形!?」

「うわ、もしかして怪物?」

 ザキと健ちゃんが顔を歪めている。そしてあたしに一瞥寄越すがあたしはそれどころではなかった。

「かっ」

「「か?」」

「かんわいいいいい!!」

「どうした」

 市松人形!でも顔が超可愛い!目がパチクリしてて睫毛長い!ふっくらした唇が堪らんんんん!!

「怪物じゃないのか?」

「可愛いよ!黒い靄も見えないよ!」

「取りあえず落ち着け」

 康ちゃんの質問に答えつつうっひゃうっひゃ言ってるあたしにマコマコがコツンと頭を小突く。普通に可愛く見えるから怪物じゃないと思います。

「…何か花宮ガン見してんだけど」

 かずやんの言葉でみんながガン見すると、市松人形は立ってモジモジしながらマコマコを見つめていた。赤らんだ頬を見るからに照れているのか恥ずかしいのか。
 あたしは市松人形に近付くとしゃがんで目を合わせた。少しビクビクしてて幼稚園児くらいの身長で、間近で見ると更に可愛い。

「あたしそら。君の名前は?」

「…おなまえ、ないの」

 チラチラとあたしに目を合わせながら答えた。可愛すぎる。

「じゃあ市子はどう?」

「何の捻りもねえな」

 煩いよザキ。市松人形は視線を落として一瞬考えていたが、パッと顔をあげるとへにゃりと笑った。

「わたし、いちこ」

「もうあたしを殺して…」

「しっかりしろ」

 可愛さのあまりにあたしは床に倒れた。マコマコにゲシっと足を蹴られながらも起き上がると、持ち帰る意思を示し害がないならと許可を得て体育館に帰る事になった。

「マコマコ気になるの?」

「…う、ん…か、かっこいいねっ」

 抱っこしていこうと思ったがそういう事なら仕方ない。とマコマコに抱っこしてけと命じ、渋々抱っこしたマコマコに市子は恥ずかしがりながらもきゅっと首に腕を回していた。くそかわ。
 探索そっちのけで怒られるかな。いやいや、これは由々しき事態ですからね、幼児を発見したんですから保護しなくてはなりませんので。










「はい、みんなにご挨拶してね」

「い、いちこ…です」

「宜しくね〜」

「「いやいや待て待て待て」」

 体育館に着いてマコマコに降ろしてもらった早々あたしの足の陰に隠れた市子。しゃがんで市子を前に出し自己紹介を促すと恥ずかしがりながらちゃんと挨拶が出来た。
 ニコニコするあたしと呆れている霧崎を見てみんなが状況を飲み込めなかったようで、桐皇のみんなに制止される。

「隠し子?」

「違うし。でも市子なら大歓迎!」

「すっげえ溺愛っぷりなんですけど…」

 ぎゅっと抱き締めると市子もぎゅってしがみ付いてきた。もう死んでもいい。
 経緯はマコマコから話され、赤君は溜め息を吐きつつ害がないならと居座る許可を出した。

「可愛い〜」

「私も抱っこさせて!」

「Too pretty!」

 女性陣が市子を抱っこしようと近寄るが市子はあたしの肩口に顔を埋めてぐりぐり顔を押し付けてくる。耳は赤く照れている模様。

「まだまだ照れ屋なんですこの子」

「「「え〜」」」

「もう親の顔やな」

 翔ちゃんに苦笑されつつ抱っこして立ち上がる。近くにマコマコいたのでマコマコの方に行くか聞くと頷くので渡してあげる。

「別にこっちに来る必要ねえだろ…」

「いいからいいから」

「「……」」

 マコマコにぎゅうっと抱き着く様子を見て和んでいると、周りがじっと見てくる視線に気付いた。ちなみにマコマコは抱っこして満更でもない顔をしている。

「何か…そらさんと花宮さん市子ちゃんがいるから夫婦に見える…」

 さっちゃんの言葉に霧崎全員が吹いた。

「ブッフォ!!花宮パパになったの!?」

「そらさんとお似合いかどうかはおいといて、パパか。新境地だな」

「悪童でもパパになれんだな!ぶっは!!」

「意外といいパパになるかもしれない」

「テメェら黙れ!!」

 かずやん、康ちゃん、ザキ、健ちゃんと順に発言するとマコマコが怒った。あたしはというと、まあマコマコは身長高いし見ようによっては夫婦に見えん事もないんだろうけど、24歳の人とそう見られて何かごめんって気持ちだった。
 いや、美味しい思いはしてますよ?だから照れもするけど、何かごめん。

「顔が赤いですよ」

「!?いいい言わなくていいし!」

 いつの間にかいた赤君にからかわれた。大人をからかうもんじゃないよ。
 マコマコに抱っこされたままの市子は不意にあたしを見ると、マコマコの顔に小さな手を伸ばして、むちゅっとほっぺにキスをした。

「「あ」」

「!?」

「そらママでもマコちゃんはあげないもんっ」

「ぎゃんかわあああああああ!!!」

「そらさん!?」

 全員が声を漏らすと当のマコマコは吃驚して瞠目しており、市子は真っ赤な顔であたしに嫉妬したらしい言葉を告げる。その可愛さにあたしは床を転がり悶え、壁にぶつかるのを見て心配したさっちゃん達に抱き起こされる。ママって言われた…赤ちゃんいる人の気持ちがわかったわ。ありがとう市子を授けてくれた誰かよ。

 その後あたしを心配して市子が駆けてきて、顔を真っ赤にして「はじめて、ちゅうしちゃった…きゃっ」と顔を覆い隠して言っていて吐血した。んでもって以降はあたしの足に引っ付いて照れてかあんまり前に出てこなくなった。

「可愛い〜!」

「あーもう!何でカメラないのよ!」

「おいで〜よしよししてあげるぞ〜」

「こっちにおいでーお兄さんが高い高いしてあげるっスよー」

 何だかんだみんな溺愛じゃねえか。










「りかしつ、いちこいたちかくにあるよ!」

「じゃあ三階だな」

 あれから暫く市子を愛でてひと段落ついた所で再度探索に行けと言われ、霧崎メンバーと向かう事になった。が、市子も行くと言って聞かず連れてきたわけだがマコマコかあたしの近くしか嫌がる為特にザキとかちょっと落ち込んでいた。

 別館の探索と理科室を探している事を市子に言うと別館の方にあると確証を得たので向かう事になった。
 今はあたしの腕に抱かれて移動中の市子。マコマコの方をチラチラと見ては顔を赤らめて可愛いのでいい加減にしてくれないとあたしが死にます。

「おー、あったあった」

 三階の別館に着くと、左手奥に美術室と手前に男女のトイレ、右手奥に理科室と手前に準備室があり、市子の言う通り理科室を発見した。
 お手柄だと健ちゃんが頭を撫でると照れたように笑った。

「でも鍵かかってんじゃん」

「びじゅつしつはあいてるよ!」

 かずやんがドアノブを回すが開かず準備室も開かないようなので、市子の言う美術室を先に調べてみる事になりみんなが美術室の方を振り返ると車椅子に乗った老婆がいた。
 美術室前に佇み俯く老婆。市子が小さく悲鳴を上げてあたしに抱き着くが目が離せないようで、あたしも目が離せなかった。黒い靄が、老婆の足首に取り巻いている。

 サァ 起キナ

 顔を上げた老婆はほぼ骸骨だった。部分部分で少し残った腐敗した皮膚が気持ち悪く、嗄れた声でそう言った。誰に言ってんだ、と思った瞬間。

「ぐっ!?」

「そらさん!」

 あたしの首に市子の手が回され子どもの力とは思えない力で締められる。ザキの声を聞きながら片手で市子を支え、もう片手で小さな腕を掴むが離れない。

「いっ、ちこ…っ!」

 ヤ ダ ヤダァッ!

 市子の綺麗な黒の目が赤に変わっていた。瞳孔が開き殺気を放っているが市子は泣きそうになりながら嫌だと言って首を締める。
 ガクッと力が抜けて座り込むと康ちゃんが支えてくれて、マコマコが市子の体を掴み離しに掛かる。

「市子!!離せ!!」

 マコマコが焦ったように怒鳴るとビクッと体が震え手を離し、マコマコの手からも逃れて宙返りしながら老婆の方へと逃げた。

「ゲホッ…」

「大丈夫か?」

「ごめん、ありがと…ケホッ」

 老婆は愉快そうに笑っており、市子は俯いていた顔を上げるとまた殺気を放つ。背中辺りまでの真っ直ぐな黒髪がうねり出し、捉えようと伸びてくる。
 あたしを支える康ちゃん以外がナイフで切り落とし防ぐが市子の攻撃は止まらなかった。

 ハハハハハ!! 殺セェ!!

 老婆の耳障りな声が耳につく。最初から市子は怪物の類だったのかもしれない。けど体育館に入れたし悪い怪物ではなかったはずで、今はあたしはどう見ても老婆に操られていると思った。そして市子の泣きそうな顔が離れなかった。

「かずやん!あのババア足首に靄がある!」

「オッケー」

 バットを持ったかずやんが近付こうとすると市子の髪が邪魔をする。しかしマコマコがその邪魔を止める為にかずやんの前に立った一瞬、攻撃が止んだ。
 その一瞬を逃さずかずやんが老婆へ近付き容赦なくバットで足首を殴り付けた。
 近付けないと油断し逃げる事が出来なかった老婆は絶叫を上げて簡単に消えた。しかし市子の暴走は止まらない。

 マ マ

「市子…」

 不意に呼び掛けられ市子を見つめると、微かに笑った。

 凶暴 二 ナッチャウ前二 殺シテ

 同時に市子の胸に靄が見えた。他のみんなには顔が変わったように見えていないのか容姿について何も言わないが、先程より怪物化が進んだように鬼の角のような物が生えて赤い目は白目まで真っ赤に染まっている。
 あたしは怪物だと判断してしまった。

「おいそら、何処だ」

「え」

「靄は何処だつってんだ」

 あたしの前まで来たマコマコは背を向けながら聞く。状況を直ぐに読む辺り流石だと思った。

「…心臓」

「わかった」

 そう言うとザキとか健ちゃんとかずやんに一瞬でもいいので動きを止めるよう指示し、わざと髪を腕に巻き付けるなどして三方向から引っ張り動きを止めた瞬間、マコマコが市子に駆けて行きナイフで心臓を一突きした。

 瞬間、ブワッと風が舞い攻撃していた髪は動きをなくして床に落ち、市子の体がゆっくり倒れる。それをマコマコは正面から受け止めた。
 あたしは康ちゃんに支えてもらいながら近寄り、マコマコの隣に座って市子を覗き込む。
 既に金の粒子を飛ばして消えかけている市子は最初の姿に戻っていた。

「ごめんね…そらママ…」

「市子は悪くないよ。あの怪物が悪くて、もうやっつけてもらったからね」

「うん…」

「市子…ありがとう」

「うん…」

 涙を流し謝る市子の頭を撫でて安心させるように笑い掛けた。泣いちゃ駄目だ、市子ももっと泣いちゃう。礼を言うとふわりと微笑んだ。

「おてつだいできて、よかった…ママ…マコちゃん…だいすき…ありがとう」

 今までで一番可愛くて綺麗に笑った市子はそのまま消えていった。
 みんながバツが悪そうに顔を逸らし、少しだけあたし達から離れた。

 あたしは立ち上がるとぐっと涙を堪えて天井を仰ぐ。市子の為にも、ちゃんと脱出しなきゃ。
 マコマコは俯いたままで、市子を抱き締めていた手をきつく握り締めていた。

「バァカ…」

 そう微かに呟いたマコマコの背中を暫し見つめたあたしは、いつもは上にある彼の頭にポンと手を置いて、優しくくしゃりと一撫でして離した。

「…勝手に触ってんじゃねえよ」

 離れたあたしの手をマコマコに取られ吃驚したが、マコマコは姿勢を変えぬまま掴んだあたしの手を僅かに握る。あたしはそれに応えるように握り返すと、更に握る力を少し込めて握り返された。











 

月夜野様、お待たせしました!
市子があまりお助け出来た感はないかもしれませんが、市子はよく頑張ってくれた設定です。最後は夢主にも美味しい思いをしてもらいました。気に入って頂けると幸いです。
素敵なリクエストありがとうございました!

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