INFINITY WORLD
ワンチャン×黒子テツヤ

【黒子side】

「ふぅ…」

 部活後、みんなと別れて疲れた体を引きずるようにして帰路についていると冷たい風が強く吹き思わず身震いする。二月も本当寒い。この寒さで今日雪が降らなかっただけありがたい。

 今日はバレンタインデー。桃井さんが青峰君を連れてわざわざ誠凛までチョコを渡しにきてくれたのは記憶に新しい。彼女のチョコで、毎年見るような真っ黒の物体ではなくちゃんとチョコの形をした物を見たのは初めてだ。聞けばそらさんと作ったらしい。流石だと自然と頬が緩んだ。
 だがその時の桃井さんの表情が気になった。何かを気にするような、張り合うというか何かに燃えるような感じがして、どうしたのか聞いても言葉を濁された感じでその話は終わった。

 そんなことを思い出していると、車の走行音とクラクションが後ろから聞こえて足を止める。何だと振り返れば、横に車が来て窓を開けて顔を覗かせたのはそらさん。にっこりと笑った彼女は口を開いた。

「ハローテッちゃん」

「そらさん。こんばんは」

「部活帰りでしょ?家まで送ってってあげるよん」

「いいんですか?ありがとうございます。ところで、この車が言っていた例の新車ですか」

「うん!いいでしょー。まだ新車の匂いが抜けない感じがいいと思わない?」

 新車の匂い好きなんだよね〜、と言う彼女にそらさんらしいなと思いながら笑みを返して助手席に乗り込む。車内は暖かく、外気にさらされ冷えた体がじんわり温まる。発進し心地いい振動を与える車に揺られていると、今日はバレンタインなのでみんなに配り歩いていた話をし出し、楽しそうに笑うそらさんを見て心も温かくなった。

「僕にはないんですか?」

「ん?ふふー。あるに決まってんじゃん。後で渡すよ」

 そらさんなら僕にもくれる、と変な確信を抱きながらからかうつもりで問い掛けると、こちらに視線を向けて悪戯っ子のように笑った彼女は肯定した。
 するとそらさんは、前を向き直し気を引き締めるように唇を軽く噛んだ。その表情が桃井さんと被り疑問を抱くが、それ以上は問わず窓の外を眺めて電飾に煌めき通り過ぎていく店や家々を眺めた。










「とうちゃーく」

「ありがとうございました。助かりました」

「いいえ〜。あ、チョコなんだけど…」

 僕の家の前に到着したのでシートベルトを外していると、同じくシートベルトを外したそらさんが後部座席に置いていた鞄の横にある紙袋を取る。そして姿勢を直し僕を見ると少し緊張したように口を結んで視線を落とした。
 その様子に、変な期待をしてしまう僕は彼女の口から出る言葉を待つ。

 今まで特定の彼らが彼女を取り合うような光景を目にしてきて、大変だなと傍観しているだけだった。そして彼女も彼らに特別な感情を抱き惹かれていく様子を見て、いつの間にか“僕にも振り向いて欲しい”“僕もそらさんを特別にしたいし彼女の特別になりたい”“他の誰かではなく僕がそらさんを守りたい”という欲が出てきた。
 だからこそ、この様子は僕にとって緊張させるには充分だった。

「これ作ったの昨日でさ。さっちゃんとリコぴんもいたんだよね」

「らしいですね。一緒に作ったと聞きました。今日桃井さんがチョコを届けに来てくれましたよ」

「だよね。言ってたもん届けに行くって」

 そこまで言うと深呼吸して僕を真っ直ぐ見つめた。

「だからね。あたしもテッちゃんに本命渡すって宣戦布告しちゃった」

 言い切るとてへぺろっ!と言って某ミルクキャンディーの女の子のように舌を出したそらさんに瞠目する。宣戦布告?

「テッちゃんはさっちゃんが本気で好きだって当然わかってんでしょ?」

「まあ…」

「でね、昨日作り終わって二人の時にこう言ったのよ」





「えっ…テツ君に?」

「うん。テッちゃんに本命あげる」

「えっと、それって…」

「んー…好きっていうか、何だろう。まだハッキリとはよくわかんないんだけど…毒舌だけど色々気遣ってくれたり話聞いてくれたり…で、今はちょっと気になる感じかな。でもちゃんとしたチョコ渡したい相手考えた時に、最初にテッちゃん浮かんだ」

「そう、なんですね…」

「…さっちゃんがテッちゃん好きなの知ってて応援してたのにね。自分が性格悪いのもさっちゃんが本気で好きなのも知ってる。ごめんね。だからこそさっちゃんに伝えとかなきゃって思って」

「…はい」

「…さっちゃん本気で好きなんでしょ?」

「勿論です!」

「じゃあ正々堂々勝負したいと思ってる、あたしは。まだハッキリ答え出てないけど、答え出た時は…宜しくお願いします」

「…はいっ!いいですよ〜負けませんもん!!ライバルですね!初めてのライバルだ!私のテツ君に対する愛は地球を超えて宇宙にまで達しそれから「あ、うん。今の所愛情の強さが勝ってるのはどう考えてもさっちゃんだもんね。わかったから帰ってきて」






「って感じですな」

「はぁ…成る程…」

 その会話の経緯を聞いて微妙な反応をしてしまったが、そらさんがそんな風に考えてくれたのが嬉しくて口元がにやけそうになり手で押さえて隠す。

「だから、はい。まだ告白出来ないけど、これ渡したいのはテッちゃんだから…受け取るだけ受け取って欲しい、です」

 家から漏れる明かりや街灯で薄暗くなっている車内でもそらさんの顔が赤いのがわかる。こちらにまで熱が移りそうだと思いながらも自然と笑みは浮かび両手で差し出されるチョコの入った紙袋を丁寧に受け取った。

「ありがとうございます」

「うん。…えへへ」

 受け取ってもらえたのが嬉しかったのかにたけるように笑うそらさんは可愛い。僕はその表情を見つめた後口を開いた。

「待ってます」

「ん?」

「答えが出るのを」

 そこまで言うとそらさんは照れ臭そうに頬を掻いて、さっちゃんに負けてらんないねと言った。

「その時には…」

「時には?」

「僕の答えも、ハッキリと出てるかもしれませんしね」

 そらさんは僕のその言葉に疑問符を浮かべて首を傾げた。まだ伝わらなくていい。

 その時が来たら、僕からも答えを伝えますから。










Tetsuya Kuroko END.
〜僕は影だ。けど本来の主人公ですからいい思いもしたいです。〜

2/3
←|→

BACK/TOP
ALICE+