INFINITY WORLD
ワンチャン×火神大我

【火神side】

 部活後、いつもの流れで黒子達とマジバに寄って軽く腹を満たし、みんなと別れたオレは一人帰路についていた。今日もカントクのスパルタ練習をこなした体はクッタクタで、腹はかなり空いていたから結構ハンバーガーを食べたがまだ足りない。
 早々に軽く鳴る腹の音を聞いてそこを摩る。わざと大きく吐き出した息が寒さで白くなるのを見ながら、今夜の本当の晩飯として何か買って帰るか、家にある物で適当に作るか思考を巡らせる。

「かーがみーん」

 不意にオレの変なあだ名を呼ぶ聞きなれた声が耳に入り、あ?と視線を声のした方へ向けると、道端へ停めた車に体を預けたそらがいた。
 あ、あれLINKで言ってた新車か。カッコ付けて腕を組み、足をクロスさせてるそらがフッと笑い親指をクイッと車へ向けた。

「乗ってけよ。マイブラザー」

「ブラザーじゃねえしうっぜぇなソレ」

 人気のない所で何カッコ付けてんだコイツ。慣れたはずのそらのおふざけにすかさずツッコミを入れる。いやオレだってツッコミ入れたいわけじゃねえから。だって見ろよアイツの目。ツッコミ待ちじゃん。ツッコミしてやんねえと可哀想じゃん。










 あれからそらの車に乗せてもらいオレの住むマンションに着いた。家に上がる気で色々と買い物を済ませていたらしく、車内で入室の許可を求められたが断る理由もなく二つ返事で了承した。普通は先に聞くけどな。
 聞けば何か作ってくれるらしい。そらのは安心して食えるから、腹減ってたしラッキー。

「お邪魔しまーす」

 そういえばオレの家の来ることって今までにあったか?と考えながら部屋へと向かい、律儀に挨拶するそらが持っていたエコバッグをキッチンへ置いた。
 車から降ろす際に持つって言ったが大丈夫だと頑なに断られた。カントクなら喜んで持ってもらうところなのに、コイツはそういう奴だったなと、こういうのを謙虚っていうんだよなと思った。
 つか遠慮するならもっと他のところでしろよな。下ネタ連発してる時とかよ。女としてどうなんだ。

 まあそれはさておき、キッチンを借りると言うので好きにしてもらい、その間にそらの促しも受けて先に風呂に入ることにした。

「おーいい匂い」

「早っ!ちゃんとお風呂浸かったの?」

「風呂入れてねえ」

「風邪引くよ!真冬なのに。そんなんじゃ疲れも取れないんだよ〜」

 部活の汗を流し、部屋着を身にまとって戻れば早いと驚かれた。男はこんなもんだろ。そしてお前は母親か。
 まあそらの言う通り、今度たまには湯船に浸かってゆっくりするかと思いながら、キッチンへと入ると漂ういい匂いに鼻を鳴らす。

「まだ出来てないんスよ〜」

「黄瀬みたいに言うな。手伝う」

「さんきゅー。じゃあ肩揉んでもらっていい?」

「何でそっちをフォローしなきゃいけねえんだよ!」

 いやするけど!飯作ってもらってるし疲れてんならするけど!今じゃねえ!
 そうツッコめばそらはケラケラと笑う。本当にコイツは隙あらばボケる…。
 その余力を他に回せと思いながらも、これがなくなったらそらの面白さ半減するか?と思えばこのままがいいのかと感じ、自然と可哀想な物を見る目をしていたらしくそらがオレの視線を感じてこっちを見た。

「何であたし哀れまれてんの?」

「いや何も」

「いや絶対何か失礼なこと考えたよね!?」

「いや何も」

「復唱ヤメテ!!」

 そんなことをしながらもそらの作っている物を聞いて指示を受け、一緒に飯を作る。
 暫く一緒に作っていると、オレが沢山食うのをわかっているので結構な量の晩飯が出来た。

「ん。んめえ」

「でしょ〜!コレこないだテレビでやっててさー。時短お手軽美味いの三拍子!って言ってて一回作ってみたら本当でさー。食べてもらいたくてさー」

「さーさーうるせえな」

「ッサァーーー!!」

「近所迷惑だやめろ!!」

 すぐに調子に乗る!ってオレも母親みてえなこと言ってることに気付いて口を噤んだ。

「あ、あとこれはバレンタインのチョコね」

「今シレッと渡したな。サンキュー」

「それ本命ね」

「あ?そうなのか。………って、オレがもらっていいのかよ?コレ」

「おうよ」

 そして手渡される箱入りのチョコ。女子らしくラッピングしてある。そうかコイツ女子だった、と心中ふざけながらチョコを受け取った瞬間、そらゾッコンの面々の顔が浮かんで悪寒がした。って、え?マジで?本命ってわかって言ってる?と思いながらそらを見ると、そらは俯いて黙り込んでいた。
 どうしたのかと見つめるが、何か考え込むような様子で口を閉ざしている。

 何だ?注意されて黙り込むような奴じゃねーだろ。首を傾げ疑問符を浮かべながらも飯に視線を向け食べ進めると、漸くそらがまた口を開いた。

「…これでいつでもかがみんのお嫁さんになれる?」

「あ?何言って…」

 またいつものおふざけかと視線を上げてそらを見ると、顔を真っ赤にしてオレを真剣に見つめるそら。口に運ぼうとした飯がボトッと皿へ落ちる。

「…は?」

「…ごめん!忘れて!冗談冗談〜!」

 呆けた顔のオレを見てそらは一瞬にして笑うと、止まった空気を払拭するように明るい声で笑い飛ばす。

 …何言ってんだよ。耳まで真っ赤にした奴が言う事かよ。

「…まあ、オレまだ高校生だし。いつでもってのは無理だな」

「だから冗談だっ「近い将来」…て?」

 口元を引き攣らせながら掘り返さないでと言うようにまた冗談だと言うそらの言葉を遮り、オレは一度飯に視線を落としてからそらを見つめた。

「近い将来…数年後とか?はわかんねえよ。案外マジで嫁になってるかもな」

 いつもコイツがするドヤ顔で言ってやるが、顔が熱い。言い切ってみたもののこれは大きく出過ぎたか?と不安が過ぎるが、そらは一瞬目を丸くさせた後吹き出した。

「…あは。かがみん顔真っ赤」

 そういうそらも林檎みてえに赤い。人のこと言えねえよ。
 心臓が煩い。ドクドクと血が体を忙しなく巡ってる気がする。
 今まで周りの奴らがそらに依存してるのを横目で見るだけだったが、これは…夢中になるのも頷ける、気がする。

「もしそうなったら嬉し過ぎるね」

 そらのその一言で更に心臓が煩くなった。あー…全身があっつい。
 近い将来が楽しみ、と笑うそらはいつもより、いやいつもだけど…すっげえ可愛かった。










Taiga Kagami END.
〜鈍感少年へのアタックチャンス〜

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