INFINITY WORLD
あたしがガン飛ばす

「じゃあお疲れ様。筋肉修復する為にいっぱい食べてゆっくり休んでね」

「ああ」

「そらさんも気を付けて帰れよ」

 あの後、Strkyの五人が気になって荷物置き場までついて行った。何をする訳でもなく話してただけなんだけど。
 どうやら元洛山マネの子は樋口君というらしい。そうそう、そんな感じの名前だったなと納得したのは記憶に新しい。

 今から五人で食事に行くとの事なので、あたしも誘われたが五人で話したい事もあるだろうと遠慮した。
 会場を出て少しの所で別れる。ゆっきーと清ちゃんの言葉を背に歩き始めたところで、言っておきたい事をちゃんと言ってなかったと振り返った。

「そうそう」

「「?」」

「みんながバスケしてる姿大好きだからね」

 話をしている中で頑張ったねとかしか言っておらず大切な事をちゃんと言葉にしていなかったので、目を見て伝えると一様に目を丸くしていた。

「リコぴんパパが赤君達にリベンジさせるって言ってたからきっと勝ってくれるよ。だからこれからも笑ってバスケ続けてね」

 また試合する時は楽しみにしてると伝えると、みんなくしゃりと笑って頷いてくれた。

 さて。マジで頼むよ現高校生達よ。










 それから数時間後。
 あたしはリコぴんパパから聞いた練習場所へ来ていた。

 どうやらリベンジマッチはキセキの世代+α(かがみんとか)でチームを組むらしい。素晴らしい判断だな。
 っていうかまさかキセキの世代がまたチームを組んだ試合が見られるなんて…幸せ。しかも生で。あーもう幸せ。

 リコぴんとさっちゃんはコーチ補佐とかサポート役とか色々やるから参戦するらしいし。これは練習風景も見に行かねばと思って来ました。勿論手ぶらじゃござーせんよ。差し入れ持ってきました。差し入れあったら入れてくれるかなって単純な思考からですね。

 そろっと体育館のドアを開けて中に入ると、みんな集合していてゴール前に集まっていた。

「『VORPAL SWORDS』始動だ!!」

「「おおう!!」」

「おーう!!」

 気合を入れた中であたしも気合を入れると、全員の顔がぐりんとこっちを向いた。

「お邪魔してまーす」

「「そらさん!?」」

「差し入れ!応援に来たよん」

 あたしが袋に入った食べ物や飲み物を掲げると、それをさっちゃんが受け取った瞬間に誰かに突進された。しかもでかい二人。

「ぐおっふう!?」

「そらっちぃぃぃいいいい!!」

「そらちん!!何やってんのさ!!」

「え?何が?差し入れ駄目だった?」

「「差し入れは駄目じゃないけどあの会場で!!」」

「…ああ!」

 あれテレビで流れてたんだっけ。って事はあたしのあの出しゃ張りがテレビで流れて……あれ、これマズイ?保育園関係者見てたらマズイ?でも帽子被ってたしグラサン掛けてたからなぁ。
 あれ?じゃあ何でこの子ら気付いたの?何か怖い。

「だってムカついた。ムシャクシャしてやった」

「だからって無鉄砲過ぎるっスよ!」

「どっかの犯人みたいな言い訳すんなし〜。もし殴られてたらどうすんの?それかあんな公衆の面前でピーーーやピーーーとかピーーーされてたらどうすんの?」

「放送禁止用語妨げるのにピーしか聞こえません耳が痛いです。っていうか公衆の面前でするか!流石にないでしょ。…いや、あの黒人ならあり得る…のか?」

 あり得ない話を聞いてあり得るのではと思うようになり、今更ガクガクと震えるときー君が慌て出した。

「大丈夫っスよ!これからはオレがちゃんと守るっス!」

「ちょっと黄瀬ちん励まさなくていいし。ちょっとは怖い思いしないとまた同じ事しちゃうじゃん。今は甘やかしはいらないし〜」

「紫原の言う通りだな」

 きー君の優しい言葉を跳ね除けるあっちゃん。グサッと胸に刺さりながらダメージを受けていると、凛とした声が聞こえて更にギクッとなる。

「そらさん。景虎さんがいたからあれで収まったものの、あの後で何が起こっていたかわからないんですよ?もう少し自重しましょう」

「ぐっ…返す言葉もございません…」

「でも怒る理由はわかります。言っている意味は大半が猿の発言に対する事でしたが、ああやって面と向かって反論してくれた事はみんなが少しでもスッキリしたと思います」

 トホホと肩を落としていると赤君がフォローしてくれた。パアッと表情を明るくして顔を上げ見つめると、赤君は優しく微笑んでいた。

「あとはオレ達が勝って鬱憤を晴らします。ですからそらさんは見守っていて下さい」

 これだからイケメンは狡いよね。あたしがコクコク頷き惚れ惚れする中で、きー君やタカ君がオレがそれを言おうとしたのにとか何か言ってるけどもう遅いわとスルーした。










 その後練習が始まりあたしは邪魔にならない所で練習風景(みんなのカッコいい姿)を見ていたが、仕事でやっておかなくてはならない事を思い出しその日は家に帰る事にした。
 明日からも仕事終わりに行ける日は差し入れを持っていく事を約束して体育館を出たが、冷蔵庫の中身があまりない事を思い出し買い物をしていく事にした。何処で買い物しようかな。

 此処から自宅までは些か時間が掛かる。此処は六本木が近い所だ。そういやジャバ達を日本に引き留める為にリコぴんパパが六本木のキャバクラで遊ばせてるらしいな。
 ギロッポンか…何かイメージではお高い感じがして近寄れない。でも気になる。今度こっそり連れてってもらおうかな。

 そんな事を考えながら駅に向かって歩いていると、前から大きな人が歩いてくるのが見えた。

「ん?」

〔あ?〕

 はた、と動きを止める両者。コイツは…見覚えがあり過ぎる。

「銀ゴリラ」

〔猿女〕

 お互いに母国語でディスる。その瞬間お互いが読み取り青筋を浮かべた。

〔んだとこの女!!流石にそれはわかるぜ!?誰がゴリラだカス!!〕

「What is your name!?Nice to meet you!!(あなたの名前は何!?宜しくね!!)」

〔何でここで宜しくなんだよ!!馬鹿かテメェ!?〕

 すみませんね、簡単な英語しか喋れないもので。つい勢いで名前聞いて宜しくしちゃったよ。

 目の前にいるのは、確か…名前…。

「13日の金曜日」

〔ジェイソン・シルバーだボケが〕

 コイツ中々やるな…日本語わかるのか…わからないと思って言いたい放題言ってやろうと思ったのに…。
 しかしジェイソンか。金のジュニアに銀のジェイソン。覚えやすいな、うん。覚えてなかったけど。てへぺろりん。

「で、何で君此処にいるの?キャバクラは?」

〔あ?何言ってんだ…キャバクラ?ホステスバーの事だっけか?じゃあ女がいるあそこの事か。…オレは夜の相手させる女探しに散歩だ〕

 …質問したものの何て返事が返ってきたかわからんばい。えらいこっちゃ。
 うーんと唸っていると、ジェイソンがニタリと笑った。

〔別にお前でもいいんだぜ?乳はねえしちんちくりんではあるがオレらと同年代くらいだろ。カラダは出来てんだ、相手くらい出来るだろーが〕

「あ゛?誰が貧乳だゴラ」

〔(コイツ英語わかってねえっぽいのに何でそこだけわかるんだよ!!)〕

 絶対コイツ悪口言ったよね?貧乳的な事言ったよね?悪口って小声で言ったり違う言語で言ったりしてもわかるんだからな。

「ああ、あたし忙しいんだった。じゃ」

〔ちょっと待てよ。そりゃねーだろ?相手しろって〕

「あのね」

 相手英語だし何話してるかわからないし肩に乗ってる生霊達がうようよ鬱陶しいので面倒だし帰ろうと横を通り過ぎようとするが、ジェイソンが手を伸ばして腕を掴もうとしてくる。もし此処で捕まったら絶対力で勝てる訳ないから、捕まらないようにスルリと避けた。
 っていうかあたし買い物あるのよ。仕事もあるのよ。帰らなくちゃならないのよ。
 こんな人を見下してばっかりの奴にこれ以上構ってたら面倒な事になると冷静に考えて、あたしはジェイソンを見上げた。

「日本人ナメんなよ」

 ジェイソンの馬鹿にした笑顔見てると昼間の腸が煮えくり返るあの出来事を思い出す。あたしは自然と眉間に皺を寄せながらそう吐き捨てるように言うと、ポカンとしているジェイソンを放置してスタタターと走ってその場を去った。
 ここで追い掛けられたら一瞬で追い付かれるな、なんて思ったけど杞憂だったようだ。振り返ったけど後を追ってくる様子もなく一安心し、無事に帰路に着いた。勿論買い物はしました。
 明日の差し入れは何がいいかしら。










「…That woman will have a good eye.(あの女、いい目するじゃねえか)」

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