INFINITY WORLDあたしの差し入れ
後日。あたしは今日も今日とて仕事を終えて練習場所へ向かった。
ちなみに、保育関係者にはこの前の出しゃ張りがあたしだったとは一切バレていなかった。兎に角よかった。ネット上では“トイレネタが好きな人が猛反発”みたいな感じでわけわかんない記事書いてあったけど、まあ悪口っていう悪口は挙がっていないっぽいのでよしとする。
先日マンションの管理人さんである高橋さんから沢山レモンをもらったので、それでレモンの砂糖漬けと蜂蜜漬けを作ったのでそれを持ってきている。いつも以上に美味しく出来たのできっと喜んでくれる事でしょう。
「お疲れー」
「あ、そらさん」
「お疲れ様です!」
入って早々声を掛けてくれたテッちゃんとさっちゃん。丁度休憩に入ったらしく、みんな汗だくでドリンクを煽っていた。いいねえ青春。
秋に入ったとはいえまだ日中暑さが残るので、動いていると余計に暑いよねと思いながら荷物を下ろす。
「今日の差し入れよん」
「わーい!そらちんの差し入れはちゃんと食べられるから嬉しい〜」
「ちょっとムッ君!?」
「失礼ね!食べられたでしょ!?」
「でも不味かった〜」
「「ぐっ…」」
毒舌を吐くあっちゃんにさっちゃんとリコぴんが食い付くが、軽くあしらわれて撃沈していた。可哀想に。
今日の栄養補給にと持ってきたらしい栄養ドリンクとゼリーが(不評の為)まだ余っているとの事なのでゼリーを試食させてもらう。
「……不思議なお味ダネ」
「え〜そらさぁ〜ん…」
「これゼリーなのに和洋中の味するって…ある意味凄いわ。何入れたの?」
「「あった調味料を全部少量ずつ。サプリは使ってません!」」
「何でドヤ顔なの間違ってるからね」
可愛いけども!ドヤ顔撮りたいくらい可愛いけども!色々間違ってる。
「リコぴんパパ…花嫁修業の時はうちに来させていいからね」
「誰にも嫁にやらん!!」
いや、順ちゃんの方睨むの止めなさい。順ちゃんビビってるから。リコぴんは嫁にやらない発言に対して怒ってリコぴんパパを蹴っていた。父親の扱いについて。
「いつも美味いけど今日の一段と美味いな」
「安心して食べられるのだよ」
「ミドリンまで…」
かがみんと真ちゃんに好評価を頂く中で、さっちゃんがシクシク泣いていたので頭をよしよししておく。
「若ちゃんや、もっとお食べよ」
「え、ちょ、オレ今汗だくだから」
「気にしないって。一人だけちょっと離れた所にいてさ〜照れんなって」
少しだけ食べてみんなの輪に入っていない若ちゃんの姿が視界に入りしゃがんでいる事をいい事に肩に腕を回してズルズル引きずってくると、やや面倒臭そうな顔をしながら恥ずかしそうに頬を僅かに染めてされるがままに連れて来られた。
そして調子に乗ってレモンをあーんしてあげるが流石にそれはと顔を真っ赤にして遠慮された。相変わらずウブだな。
「じゃあオレが。あーん」
「あ。コラ指まで食うな!」
若ちゃんから離れると不意に背後から腕が回ってきてレモンを摘んでいる手首を持ち上げられた。あ、と言った時には既に犯人であるタカ君に指ごと口に含まれていて、ふに、と柔らかく温かい感覚が指先から伝わった。そして甘さを逃すまいと指先をねっとり舐められる。
え、エロい…。
「ちょ、指、指」
「オレにも絡んでー」
「自分で絡みに来てるくせに」
離されると口から覗く赤い舌が見えて気恥ずかしくなって視線を背ける。スリスリと髪に頬を擦り寄せられ何だこのデレデレと思っていると赤君によって引き剥がされる。
「高尾、やり過ぎだ」
「そらちんにベタベタし過ぎ〜」
「おおっ?おおおおお!?怖い怖い怖い!!落ちるうううううう!!」
そしてあっちゃんにひょいと持ち上げられ、そのままタカ君から逃げるようにあたしを頭上に掲げながら走って逃げるあっちゃんの頭上で絶叫した。怖過ぎ。
そんな感じでてんやわんやした日からまた時は経ち、あの日から六日が経った。
明日はいよいよ本番。ジャバ達を屈服させる為の試合が控えている。
今日は仕事が休みなので、朝から付き合っているが、勿論ボーッと眺めていたわけではない。ドリンクを作ったりモップ掛けをしたり洗濯したり、マネージャー業を主に手伝いました。応援だけじゃないんですあたしって偉い。
「おーし終わりだ!!後は明日の本番のみ!!絶対勝つぞぉ!!」
「「おおう!!」」
体育館内の空気を入れ替えるようにドアを開けた。ロビーの窓から外が窺えるが、外はすっかり日が落ち暗くなっている。明日は快晴らしいので、試合日和になりそうだと思いながら体育館へ戻り片付けを手伝う。
「じゃー後はたのまぁ…」
「あ、うん」
「…六本木行ってくる…」
「…頑張ってね」
連日見続けたジャバが屯する六本木のキャバクラへ向かうリコぴんパパの後ろ姿。日を追うごとに廃人になっていく後ろ姿は苦労が尽きない様子。ヨロヨロと歩いていく姿に同情した。今日が一番白い。
「…ん?」
今テッちゃん出てった?体育館を見てもいないのでやはり出て行ったようだ。トイレかな。出て行くの静かだったからう◯こ我慢してたのかな。
体育館内では各々がまた少し練習したり片付け帰る準備をしたりする様子がある。さっちゃんがきー君とかがみんにオーバーワークにならないようにと注意していた。
「ふう…」
「お疲れ様でした」
「ああ、いや。赤君こそお疲れ」
今日も終わったな〜と思いながら息を逃すと疲れた溜め息と思われたのか赤君に声を掛けられる。
ドリンクは持っているがタオルを持っていないので、綺麗なタオルを頭に掛けてあげる。
汗すら美しいってどうよ。こんなに汗だくなのに汗臭いとは縁のなさそうな雰囲気ってどうよ。クソ羨ましい。
「おーい。テツ何処行ったか知んね?」
「カゲトラさんが出た直後にいなくなったのだよ」
「カゲトラさんが…?」
「…え?じゃあ一緒に行ったとかそーゆー事っスか?」
「…いやいや、ねーだろーそれは…」
「っスよねー」
「あれ?トイレじゃないの?」
峰さんと真ちゃんがそう尋ねるとかがみんときー君が目を瞬かせている。あたしも出てった事とトイレなのではと尋ねると、かがみんときー君が固まった。
「うおおい!!(まさか…)」
「ええ!!?(あん時と同じパターンっスかぁー!?)」
ぐりんと外の方に顔を向けた二人の可笑しい様子に、みんなが疑問符を浮かべた。
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