INFINITY WORLD
あたしもついて行く

 ドドドドドド

「アっ…阿呆かアイツは!?」

「流石にそれはないっしょ〜」

「前科あるんスよ実際!!」

「テツならあり得るな…」

「だとしたら信じられん奴なのだよ」

 あれから峰さんがトイレに確認しに行ったが誰もおらず、テッちゃんを探しに六本木のキャバクラに全力疾走で向かっている一行。
 ついて行った可能性が大のテッちゃんを各々が信じられないと口々に言う。

「時々本当に黒子はそらさん同様オレにも予想出来ない事をするね。取りあえず急ごうか」

「何でそこであたしの名前出るんだよ」

 あたしが前にいる緑と赤の頭を見ながら文句を言うと、一瞬シンとしてから全員が勢いよく振り向いた。

「そらっち!?」

「そらちん何ついて来てんの!?」

「馬鹿かお前!!」

「だってテッちゃんが心配。あんな可愛らしい男の子がいたら外国人も手を出したくなるかもしれないでしょうが!!貞操を守る為だよ!!」

「阿呆!!本当に阿呆なのだよ!!!」

 きー君あっちゃんかがみん真ちゃんと順にディスられた。だって気になるじゃん。危ないからってリコぴんとさっちゃん共にお留守番を言い付けられたが、あたしがそんな事守るわけないじゃない。気になるギロッポンをみんなと一緒に見に行くチャンスを無下にするはずがないじゃない。

「そらさん、今からでも遅くないので戻って下さい」

「つかお前よくオレ達について来れるな!?」

「まあね!愛の力だよゼェハァ」

「息も絶え絶え!!もう休んで!!」

 赤君に言われるがツンとそっぽを向いてスルーする。峰さんに褒められたと親指を立てたが実はもう死にそう。喋ってるだけで体力削られるし死ぬ。きー君が哀れな目を向けてきた。

「あ!あの店じゃない!?テッちゃぁああああああん!!」

「「速ッ!!?」」

「キモッ」

 そんな事をしているとリコぴんが言っていた店が見えたのでもう少しだと全力の中の全力で店の中で駆け込むと峰さんの暴言が聞こえたが後で覚えてろよ。

 ガッシャーン!!

「「!!」」

「ッ、ゲホッゴホッゲホォッ!!ゼェハァ…ッ」

「瀕死じゃねえか…」

 店に入った途端聞こえた物が割れる音。あたしは足を止めると今までの疲れがドッと体に出て大きく咳き込んだ。そんなあたしの背中をかがみんが撫でてくれた。何だかんだ優しい。

 するとリコぴんパパの声が聞こえたので、ただならぬ雰囲気を察しみんなで急いで音のした方へ向かう。止める店員をあっちゃんの凄みで引かせた場面は後ろにいたあたしから見ても恐ろしい。

〔猿の主張なんて聞きたかねーんだよ〕

 奥に入ると凄んでいる声が聞こえ、見ればジュニアがテッちゃんの髪を掴んで持ち上げていた。

「黒子!!」

 それを離すようにかがみんが殴り掛かるがジュニアに軽く避けられた。

「大丈夫っスか黒子っち!?」

「テメーら。うちの仲間チームメイトに何してくれてんだよ」

 かがみんと峰さんが先導立つ様子を一瞥し、きー君に支えられているテッちゃんを見つめた。口の端から血が出て顔にも痣がある。沸々と怒りが湧く。それと同時に恐怖心も芽生えた。
 あたしが肩に手を添えハンカチを差し出すとテッちゃんは礼を言って受け取る。

〔…ほー。どうやらお前らが明日の対戦相手らしいな。ちょっとはマシな猿が出てきたじゃねえか〕

 またmonkey。猿って動物しか知らないんじゃないの?と馬鹿にした目を向けていると、ジュニアと目が合った。するとさり気なく遮るように赤君があたしを背後に隠した。い、イケメン。
 ジェイソンのふざけた様子にかがみん達は益々怒りを露わにする。てかアイツ生霊増えてね?え、マジで?この数日で女の人取っ替え引っ替えしたか?

〔けどまあ関係ねぇかもう…やんだろ?此処でよぉ…〕

「…やめろ」

 やる気満々なジェイソン。そこへ一言で止めに入った赤君。

「…赤司君」

「わかっている。お前の事だ。選手ならば決着はバスケで、とでも言うのだろう」

「…はい。お願いします…」

 テッちゃんの意図を汲み取った赤君はかがみんと峰さんに目を向けた。

「此処で殴り合っても無意味なだけだ。行くぞ。黒子の手当が先だ」

 きー君がテッちゃんに肩を貸すのであたしも反対側で肩を貸した。かがみんと峰さんは舌打ちをしながらも素直に引き下がる。
 リコぴんパパが喧嘩にならなくてよかったとばかりに息を吐いたが、あたしも殴り合いにならず安堵する。これ以上怪我する様子は見たくないし。

〔プッ…ハハハハハ!何だそりゃあ!わざわざ下らねぇ事言いに来て蹴りもらってそのまま帰る!?間抜けな上に腰抜けか!!だから猿なんだよ!!明日はチビらねぇように精々替えのオムツを沢山持ってくるんだな!〕

 本当にゲスだな。煽るのがお上手な事で。馬鹿にしている事は容易にわかったが、みんな相手にする事なく睨む。
 人を馬鹿にする事でしか自分の自尊心を持ち上げられない人とかいるけど、ちょっと違うかもだけどコイツも同類だな。

〔黙れ下衆が。お前達こそ首を洗って待っていろ。明日は地べたを舐めさせてやる〕

 やぁん英語。赤君が英語で言い返しているが、短いながらも怒りを含んでいて意味はわからないけどスッキリした。

〔…この間の女。このオッサンと一緒にいたし口答えしてきたから対戦相手チームの中にいるんだろうとは思っていたが〕

 ジュニアの視線があたしの背中に突き刺さっている気がする。アイツ人殺しの目をしてたな…そして何を言ってるかわからん。のでスルーしていると、ジェイソンの声も届く。

〔アイツも帰んのかよ。オレの相手する気になったかと思ったのによォ〕

 何の話かわからないけど笑いを含みながら話す声を隣に並んだ峰さんを一瞥しつつ聞いていたが、その背後ではあたしの方に手を伸ばすジェイソン。その瞬間首根っこを掴まれた。

「ぐえええっ!?」

「「!?」」

 突然の事に支えているテッちゃんからスルリと離れてしまい、分厚い胸板が背中に当たると自分の首に腕を回されて引き寄せられていた。腕が黒い…ジェイソンか!

〔お前この前逃げたよな?今夜は相手してもらうぜ〕

「ゲホゴホォッ!!」

〔うわ汚ェ!?腕に唾飛んだだろうが!!〕

 え、なんかごめん。さっき走ったからまだ噎せやすいんだよね。苦しいのもあって咳き込むと何か頭上で怒られたっぽいから心の中で謝っておく。
 何より嫌なのがジェイソンの背後の生霊達があたしに手を伸ばして触ろうとしてくる事。お守りあるから触れんがな!

〔…離せ、シルバー〕

〔ああ?〕

〔この女に用があんのはお前だけじゃねえよ。だが…〕

 ジェイソンの後ろにいるジュニアが話しながら前に視線を向けた。ら、般若の形相の面々。あたしは飛び上がった。ひい!?

〔…彼女を離せ〕

〔どうやら今この場では邪魔が多い。用を済ませんなら次にしろ〕

〔…チッ〕

 赤君が低い声で唸るように言うと、すんなり手を離された。が、その時ジェイソンはあたしの頬っぺたをべろりと舐めた。
 それに固まるあたし。思考が停止しながら体が勝手に動いた。

「汚えだろうがァァァァ!!」

〔おぐっふぅ…!!?〕

 股間を思い切り蹴り上げた。可哀想なジェイソンの声をバックにあたしが半泣きで走って腕を広げていたあっちゃんに抱き着くと、いつの間にか濡れたタオルを持っていて舐められた場所を丹念に拭かれた。そして連れられその場を後にする。

 後で聞いた話では、あたしが蹴った件で手を出したには変わりないので殴り合いになる可能性もなくはなかったらしいが、アレは衛生的に駄目だとのジュニアの判断でノーカンになったらしい。

 ジュニアよ…潔癖性かな。

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