INFINITY WORLDあたしと決断
《バレンタインデーキーッス!バレンタインデーキーッス!》
「チョコの特売ですよ〜買わなきゃ損損!」
「これであの子のハートもゲッチュしちゃいましょ〜!」
なぁにがゲッチュだ。真面目に商売やれ。
なんて思いながら歩く二月。今はバレンタインシーズンなので街中では既製品のチョコやチョコ作りには欠かせない材料が沢山売られている。
駅から家のある方向へ歩いていると、帰宅ラッシュの時間で学生から社会人、主婦まで行き交うこの時間帯は店に招き入れる為声を張り上げている店員が沢山いた。寒いのにご苦労様です。
もう直ぐバレンタインかー。今は色んな意味を込めてチョコ渡すもんなー。日本ではだけど女の子から男の子に想いを伝える為が当たり前だったのに、逆チョコだったり友チョコだったり、色んな意味合いが年々出来てきて何が何だかよくわからない事になっている。ドキドキ感が年々減ってない?日本よ、いいのかこれで。
冷え込みが激しくもう防寒具で身を固めているあたしは側から見ればどんだけこの人寒いの状態だ。帽子マフラー手袋耳当てコートブーツ。冬には欠かせない防寒具ですな。
「あ。ちょっと待てよ」
ふと全然関係ないがある事を思い出し携帯を開いてスケジュールを確認する。おっと、危ねえ!
「今日納車じゃん!」
あたしは慌てて方向転換し腕時計で時間を確認した後ダッシュで自動車販売店へ向かう。多少遅れても大丈夫だろうけど、危うくすっぽかすところだった!念願のマイカー買えたのに!バレンタインの事なんか考えてるからこうなるんだ!
あたしは今までの中で最速で現場へと向かった。現場って。
「これがそらさんの車ですか!」
「可愛い!色も形もいい!念願の車ですね」
「まぁねー」
後日。あたしの家に遊びに来たリコぴんとさっちゃんに寒いのを我慢させて駐車場へ行き買ったばかりの車を見せた。既にこれで仕事に行っているがまだまだ綺麗だ。
軽自動車で低燃費っぴっぴーだし、デザインもいい。そろそろ車買おうと思った時に見たCMで流れていたので即決した。値もそこまで張らないし新車で買った。
「でもね、あたし思うのよ」
「「?」」
「あっちゃんとか真ちゃんとかでかい組乗せられない気がする」
「「あー」」
あっちゃんとか絶対頭つくじゃん。寧ろ突き破っちゃうんじゃね?でかいのばっかりは乗せらんないわ。
「もし乗せる事があったら、その時は…」
「レンタカーにしましょう」
「だね」
満場一致の意見です。でかい組乗せる時はレンタカー借ります。乗る機会あるのか知らないけど。
そんな他愛ない話をしながら部屋の中に入り作業に移る。
明日に控えたバレンタインの為にチョコ作りするんです。その為に二人は来たんです。料理が下手だから。おっと口が滑った。
「さあ、やりましょかー」
「「はーい!」」
エプロンを着け、二人が作りたいと言うチョコの作り方が書かれているそれぞれのページを開いて教える。あたしも自分の作りたいのを同時進行で作る。
この一年で何度か一緒に料理やお菓子を作ってきたこの二人。以前と比べれば大分上達したし、あたしの目の届く範囲ではサプリを入れさせないから失敗もない。見てない時は相変わらず悲惨って聞いたけど。
リコぴんは受験生だし志望校の受験はバレンタイン後だが、彼女は頭がいいし問題ないようなので今日一日くらいはと気を抜いているらしい。そんなリコぴんは卒業まで誠凛バスケ部の監督してるんだから凄いわ。四月からリコぴんパパだけど。
「順ちゃんにあげんの?」
「!?ちっ、違いますよ!みんなですみんな!」
「「あーやしーい」」
「桃井さんまで!!」
そんな感じでちょっかい掛けながら作り続けると、部屋の中が甘い香りで充満する。楽園やで此処は。
合宿後、忙しい時期に入り家に来る機会が少しだけ減ってしまって寂しかったが今日は楽しい。リコぴん達三年生は受験だしみんな大学志望だから、日々迫ってきている試験日の為に試験勉強に勤しんでいる。ちなみに一月に学年末テストがあったらしい。勉強尽くしだ。
他の高校生は一月二月は新人大会とか何かそんな感じの大会にちょくちょく出てるらしいし、三月には学年末テストが予定されてるらしい。
大学生組もテストの関係や大学のイベント、サークルのイベントや試験の関係でバタついているらしい。
いーなー。青春いいなぁ。あたしも青春したい。短大時代に戻らせてくれ。
「そらさん、これでいいですか?」
「んあ?あー、オッケーオッケー」
ボケッと別の事を考えていたからさっちゃんに声を掛けられて反応が遅くなったが、生地を確認してOKサインを出す。リコぴんは手を止めてあたしを見つめた。
「どうしたんですか?」
「ん?ああ、いや、青春っていいなって」
何を考えていたのか聞かれあたしが苦笑しながら宙に視線を投げ掛けそう答えると、リコぴんとさっちゃんは顔を見合わせて可笑しそうに笑った。何だ何だ。あたし何もしてないよ。
「そらさんも青春するんでしょ?」
「だからそれ、作ってるんじゃないんですか?」
二人の視線はあたしの手元、ではなくその横に置いてある材料達に注がれている。クッキーや一口チョコを作る傍ら特別に別の手の込んだチョコを作っていたのを見抜かれていたらしい。これだけの至近距離で見ていればわかるわな。
「答えは殆ど冬合宿の時に出たみたいですし、頑張って下さいね。私達はそらさんの味方ですから」
「冬合宿ではあんまり関われなかったし霊の被害にも遭っていい思い出が少ないかもしれませんけど、これからも沢山楽しい事が待ってますよ」
本当あたしの周りの子は察しがよくて助かる。自分の事になると鈍感な子も多いけど。
二人の優しい眼差しと微笑みを見ていると少し恥ずかしくなって何も言わず俯く。何か年下に諭されたというか慰められたというか、変な感じがする。
「ありがとう」
今までも相談に乗ってもらう事や頼る事が沢山あったので、感謝の気持ちを込めて礼を伝えると嬉しそうに二人は笑った。花が咲いたように笑うとはこの事。天使だ。
そんな二人には特別に別のお菓子を作り感謝の気持ちを込めた友チョコとして渡した。二人からもお返しをもらい早速食べると、見守っていた成果か甘くて美味しかった。流石あたしの監視下にあっただけあるな、違うか!
「ハッピーバレンタイーン!チョコもらいに来たよーん。チョコくーださい」
「ハロウィンと勘違いしてない?」
翌日の、バレンタインデー当日の今日は休日。自分の予定はあるものの誰かと遊ぶ予定は入れていない今日、朝からかずやんとザキが訪問してきた。
さっちゃんにみんなの部活日程や今日の予定を聞いているので渡し歩くつもりではあったが、ドアを開けた瞬間にチョコくれと言われたのでこの二人はハロウィンと勘違いしていると思う。
「してないよん。だって欲しいじゃん」
「はいはい。じゃあこれどうぞ」
「ありがとー」
「サンキュー」
二人に渡すと嬉しそうに受け取ってくれたのでこちらも嬉しくなる。
「二人はどっか出掛けるの?」
「息抜きにねー」
「つってもコイツ頻繁に息抜きしてるけどな」
二人に問い掛けるとそんな答えが返ってきて、すっかり受験生だなと微笑ましく思った。どんだけゲスいラフプレーとかしてても学生だな。これからも学生が続けられるのか。羨ましい。
丁度出掛けようとしていたので外出する格好をしているあたしを見て逆に問われる。
「そらさんも出掛けるのか?」
「デート?」
「違うわ。配りに行くんだよ」
あたしはチョコ達が入った袋を持ち上げて言いながら家を出る為鍵を掛けた。車があるって便利。久しぶりに乗ってるけど案外運転の仕方って忘れないもので問題なく乗れている。
家に上げなかった事を詫びるともらったら帰るつもりだったからと言い気にしていない二人とマンションを出る。
「本命は?いるの?いないの?」
外に出ると寒い風が頬を撫でぶるりと体を震わせる。そんなあたしにかずやんは先程渡したラッピングされた小袋をポケットにしまいながら首を傾げて聞いてくる。ザキも同じように見つめてくるのを感じ、あたしは小さく笑うと意味深長な笑みを浮かべて口元に人差し指を立てた。
「ひ・み・ちゅ」
「「キモい」」
「相変わらずのこの扱い」
そんなやり取りさえも楽しくケラケラ笑っていると、背後から衝撃を受ける。
「ふごっふう…!!」
「そらさーん!チョコもらいに来ましたー!」
抱き着いてきたのは内藤さんで、本当に神出鬼没だと思いながらもザキに離してもらった。
「本命は僕ですよね!?」
「そう思える内藤さんの精神の強さに本当感嘆する」
「それ程でも」
照れる内藤さんに溜め息を吐きながらかずやん達に渡したのと同じ物を渡す。余りはあるから、別に内藤さんの為に用意したんじゃなくて言えば餌みたいなもんだ。これで引き付けている内に逃げる的な。
「これあげるから邪魔しないで」
「ええ!これってこの人達と同じじゃないですか!僕はその箱の、」
言う前に内藤さんの腹を殴って気絶させた。余計な事言わんで宜しい。しっかり聞き取ったかずやんとザキはニヤニヤしててうざかった。
まあ内藤さんにも義理チョコは渡したしダウンする彼を放置して二人とも別れ、車に乗り込みエンジンをかけた。
さてと。じゃあ配りに行きますかー。本命チョコも渡しに行かなくちゃだ。
まだ着いていないのに少し緊張してドキドキする胸を押さえながら、あたしはマイカーのアクセルを踏んだ。
END.
中途半端な終わりですが、これより分岐点に入ります。お手数ですが“ENDING”へ入って頂き、複数キャラよりお選び下さい。
後書きも“ENDING”に書かせてもらいます。
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