FOR YOU求愛赤司と同級生
「みょうじ、ちょっといいかな」
「ん?あ、何?」
一軍専用体育館でマネージャー業務に勤しんでいると誰かに呼ばれ、振り返ればそこにファイルを持って赤司君が立っていた。駆け寄るとファイルを開きながら前回の練習試合の記録の件で、と要件を話すので向かい合っていた体勢を少し横にずらし横からファイルを覗き込む。何か間違ってたのかな。
すると途端に動きが止まるのでどうしたのかと見上げれば真剣な顔をして見つめてくる彼。
「積極的だね。嬉しいよ」
あ、うん。
「いや、見易いようにって思って」
「そうか」
彼はふわりと微笑むと話に戻し、練習試合の記録でまとめて欲しい点があると説明する。まさか今の照れ隠しとか思ってないよね?違うよね?
「照れ隠しだろう?」
「心読まないで」
それとくっ付かないで、周りの目が気になります。
ちなみにこんなやり取りは毎日である。もう慣れたけど。
思い返せば、いつからだろう。赤司君がちょっと可笑しな事を言うようになったのは。
ちょっと前までは普通だったのに段々と距離が近くなってきたというか、積極的というか強引というか。
赤司君とは中一の時に同じクラスで、部活もバスケ部とバスケ部マネージャーという事もあって話す機会は多かった。今年のクラス替えで同じになって、二年連続一緒だねーなんてのほほんと話していたのが懐かしい。
中二になってから暫くして、赤司君は事ある毎に話し掛けてくるようになった。
「おはよう、みょうじ。寝癖が付いている。きちんと整えないといけないよ。そんなところも可愛いけど」
と頭を撫でられ。
「みょうじ。わからない所があればいつでも聞くといいよ」
と授業でわからない事がある度にお願いする前に言われ。
「今日も一緒に昼食どうかな」
と返事を言う前に引き連れられ。
「みょうじ」
と部活の休憩に入る度に私の所へ直行され。
「今日も送っていくよ」
と忙しいだろうに頻繁に家まで送ってもらい。
それまでも毎日互いに挨拶をして接する事は多かったけど、昼食のお誘いなんて滅多になかった。バスケ部で食べる時はよくご一緒させてもらっていたけども。
勉強はちょっと苦手なので、テスト期間とかよく青峰君と一緒に教えてもらっていた。赤司君は常に学年一位で頭いいからね。だから勉強のお誘いはわかるしありがたいけども、お願いする前に声を掛けてくるあたりエスパーだと思う。
そんなこんなで、周りから付き合ってるの?とか毎日のように言われるようになるくらいには、彼との距離が近いと自覚している。
最初は他の人にもそうなんだろうなーと思っていたよ?けどみんなに、
「赤司君ってなまえちゃんの事よく見てるよね!」
「あーそれわかるっス!常にみょうじっち見てるっスよね」
「赤ちん、なまえちんいない所でもよくなまえちんの事話してるよー」
「…?」
「緑間君気付いてなかったんですか…」
「つーかよく一緒に帰ってんの見てんじゃん。緑間馬鹿だろ」
「お前にだけは言われたくないのだよ!」
と言われ、その日以降赤司君を意識して観察してみるとまあこれが面白い程によく目が合う合う。合う度に綺麗に微笑まれるのでどうも落ち着かなかった。
流石にこれだけ見られていて気付かない程私は鈍くない。だが彼に好意があるのかないのかは明確ではないので、よくしてもらっていると解釈して今は過ごしている。
「遅くまでご苦労だね、みょうじ」
「あ、赤司君お疲れ」
「お疲れ」
今日はマネージャーで分担している日誌当番の為、みんなが帰宅して静かになった部室で部活直後は忙しくて書けなかった日誌を書いていると赤司君が入ってきた。どうやら今まで監督と話していたようだ。主将になったばっかで色々大変だもんね。
電気は点けず夕暮れの明かりを頼りにオレンジ色に染まる部室内のベンチに座り膝上で教科書を台にしながら書いていたが、着替えると思い赤司君のロッカーに背を向けて座り直し日誌を書き続ける。
着替えている人がいてもよくこうやって背を向け、楽しく会話しながら日誌を書く事があるので違和感なくしてしまったが、赤司君は気にするだろうか。少し心配になりチラリと横目で見てみるが、気にした様子なくロッカーを開けているので安堵した。
「今日はみょうじが日誌の当番?」
「うん。片付けに手間取っちゃって書くの遅くなっちゃったんだ」
「そうか」
会話と衣擦れの音が部室内に響く。不意に日誌の上に乗せていた消しゴムが後ろの方へ落ち、拾おうと屈みながら少し振り返れば視界の隅に赤司君が入った。
つい、と視線を上げれば、こちらに背を向けて制服のシャツを着る瞬間の赤司君。
筋肉が程よくついた引き締まった背中が見えてしまい、カッと顔が熱くなるのを感じた。み、見てしまった。綺麗な背中だ。
「…何かな?」
じっと見惚れてしまっていたようで、ボタンを留めながら口元に微笑を浮かべ少し振り返った赤司君と目が合う。
「あっ、えっと!ごごごごめん!!」
慌てて消しゴムを拾い体勢を戻す。ドキドキ煩い心臓を左手で押さえていると、シャーペンを持った右手に自然に力が入る。
後ろでクスクスと上品に、でも少しだけ意地悪そうに笑う声が聞こえる。
「もっと見たかったら見てもいいけど」
「めめめめ滅相もございません!!わ、わざとじゃないんだよ!!」
益々赤くなる顔を押さえながら自己嫌悪に陥る。自分の馬鹿!見るならバレないように見ろよ自分!!ってそういう事じゃない。
咳払いをして気持ちを切り替え、握り過ぎてミシミシ言っていたシャーペンを持ち直し書き進めようとすると、後ろから伸びてきた手にそれが奪われる。
吃驚して振り向くと、意地悪な笑みを浮かべた赤司君が近くにいた。
「えっ?な、何?」
「見なくていいの?」
「え!?」
何を!?え、まだ体の話!?
「オレの事、そろそろもっと見てもいいと思うんだけど」
「え、」
「オレはずっとみょうじを見ているのに」
私の横に座る赤司君。少し古いベンチはギシリと僅かに音を立てた。
「でも気付いてるはずだ、君を見ていた事を。みょうじもオレを見ていたよね?」
「そ、それは赤司君が…!」
「オレが、何?」
ベンチに手をついて、少し身をこちら乗り出す赤司君に対し、私は仰け反る形を取る。目の前の彼は綺麗な微笑を浮かべたままだ。
「っ、」
「…でもオレがちゃんと言葉に出していないから、確証がないからみょうじもどうしていいかわからないんだね」
赤司君は笑うのを止めて目を伏せ自問自答するかのように呟いたかと思えば、ふわりと綺麗に笑って身を離し私の仰け反った体を戻すようにやんわり腕を引かれた。
向き合うように座り直し、真っ直ぐ見つめながら赤司君は静かに口を開いた。
「オレは君が好きだ。だからずっと見ていた」
凄く真剣な、それでいてほんの少し、本当に僅かだが頬を赤らめながら言う姿に、ずっと煩かった心臓は一度大きく跳ねた。
赤司君は、狡い。
目を離せないで見つめていると、また腕を引かれて今度はぽすっと赤司君の腕の中に収まる。
「みょうじもオレと同じ気持ちだって解釈でいいよね?」
そうじゃなかったらいつも目は合わないし、何よりそんなに真っ赤にならない。
そう言われ、やっと自覚した。
赤司君の視線や気持ちには気付いたのに、自分の気持ちには気付かなかった。結局私は鈍かったんだ。
「あ、かし君…」
「…ちゃんと聞かせて。みょうじの答え」
赤司君の胸板から伝わる、私よりは落ち着いていても普通より断然早い鼓動。何でも完璧だと思ってた赤司君もやっぱり一人の男の子なんだな、と思うと少し安心した。
「…好き、」
赤司君が好き、とちゃんと言い終わる前に目の前が赤司君の綺麗な顔でいっぱいになり、言葉を紡ぐ唇を彼のそれで塞がれた。
いつの間にか床に落ちていた日誌に、夕暮れに照らされた重なる二人の影が落ちる。
「好きだよ、なまえ」
ずっと呼びたかった。
そうやって不意打ちする赤司君は、本当に狡い人だ。
金魚様、お待たせしました!
甘々求愛赤司、ご希望に沿えましたでしょうか?
勝手に俺司にしてすみません…。管理人の趣味です…。
素敵なリクエストありがとうございました!
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