FOR YOU
緑間が高尾幼馴染みに嫉妬

「でさー、その時友達がねー」

『ははは!そりゃないわー』

 いつになったら終わるのだよこの電話は。
 そう思いながらオレは目の前で三十分以上も電話する恋人を見つめ、今日のラッキーアイテムであるリアルバナナ君のクッションを両手で握った。彼氏であるオレが目の前にいながらよく電話長々出来るのだよ。

 オレはなまえの家に遊びに来ている。勉強を少し教えてもらいがてらお家デートをしようなどと言って誘われた。
 用事があって電話してきたのはわかる。だが用件が済んで全く関係ない話を長時間するのはいい気はせん。

 学校でもそうだ。オレより高尾とベタベタと引っ付き視線だけで会話をして以心伝心を披露する。意思疎通は長年一緒に過ごしてきた上で出来るようになった事だと思うので致し方ないとして、幼馴染みとは言え限度というものがあるとオレは思う。
 …まあ、高尾がなまえを紹介してくれたからこそなまえとこうして付き合っているのだが。あの時はバスケに集中していたし、まさか付き合う事になるとは思わなかったのだよ。

 って、そんな昔話を懐かしんでいる場合ではないのだよ。
 また違う話題に移ろうとしているのを感じ取り、なまえの手から携帯をヒョイと横取った。

「あ!」

「高尾」

『あ、やっほー真ちゃーん!ごめんなー、電話長かった?』

「…わかっているなら遠慮するのだよ」

『ワリーワリー。つい話が弾んで弾んで』

「…切るぞ」

『へーい!また明日な!』

 通話終了ボタンを押してなまえに返す。少し申し訳なさそうな顔をしているので、自覚はあるらしい。
 オレはなまえの目の前に座ると、顔を近付ける。距離を詰めるとなまえは少し顔を反らし、後ろのベッドに頭を付ける。
 オレの手を同じようにベッドに付けた。

「今目の前にいるのは誰だ」

「え、と。真ちゃん」

「…わかっているなら何故オレを見ない」

「え、んっ!」

 なまえの目に映るオレの目がギラリと光った気がした。答えを聞く前にその柔らかい口を塞いでやるとくぐもった声が漏れた。

 強引にキスをしたものの、キスは数える程度しかした事がないので一瞬どうしようか迷った。だが薄っすらと開いた視界から入ったなまえの表情に頭がクラッとし、自然と体が動く。
 啄む口付けを交わした後、呼吸の仕方が下手ななまえは息を止めて苦しくなり薄く口を開いた。その先は進めた事がなかったが、興味が勝りぬるりと薄い唇の隙間へ舌を忍ばせると歯列をゆっくりなぞる。

「ふ、ぁ、…んっ」

 そして舌を絡め取る。その柔らかさにぞくりと鳥肌が立ち、歯止めが効かなくなりそうだとぼんやり他人事のように考えた。
 暫くそうしていたが、呼吸が続かなくなっている様子を見受けて名残惜しく唇を離す。

「ちょ、まっ…ん、待って待って!」

 そのまま濡れた唇を頬に寄せ、少しずつ下へ降りていくとなまえの制止が入る。
 ピタッと動きを止めたオレは、この後何をしようとしていたのだと己の行動を振り返り、少し血の気が引いた。…調子に乗り過ぎたかもしれん。

 顔を離しなまえに視線を向ければ、なまえは顔を真っ赤にして上がった呼吸を整えながらオレを見つめていた。

「…オレが普段どれだけ我慢していると思っているのだよ」

「え?」

「高尾の事だ」

 オレはなまえの肩口に額を置いてそう呟く。素っ頓狂な声に嫉妬の相手の名を出せば、そこで気付いたように声を出す。

「し、真ちゃん…もしかして、嫉妬してたの?」

「……」

 二人の間に変な間が空く。オレは何を言っているんだコイツはと思いながら白い目を向けると、なまえは慌てたように話し出す。

「い、いや…真ちゃん見た感じだと気にしてないように見えたから…」

「……」

 高尾や宮地さんには言われた。仲良くしているのを見て顔を顰めていたようで、オレの反応はわかりやすいと。その時になまえが鈍感である事も知らされた。オレが顔を顰めているのを見て何を怒っているか理解出来ず、腹痛かなと話していたらしい。
 直接今まで言わなかったオレにも非はあるかもしれんが、全く気付いていないなまえもどうかと思う。

「…寧ろ逆に、お前こそ気にしていないように見えるのだよ」

「え!?そんな事ないよ!真ちゃん変だけどモテるんだから私はいつでもヒヤヒヤしてるよ!」

 その言葉を聞いて、今までそんな事を考えていたとは知らなかったと言葉を飲み込む。変は余計だが。

「…そうか」

「…うん」

 また変な間が空く。そしてぎこちない雰囲気になっていると察し、近付けていた体を離す。

「ちょ、ちょっと待って!」

「な、何なのだよ」

 離そうとしたところで、なまえの腕が首に周り抱き着かれる。体重を掛けられ先程と同じ体勢になった。

「真ちゃんが嫉妬してくれてたのはわかったし、私も嫉妬してたのはわかったよね?じゃあ、その…仲直りの…ちゅー」

 そう言って次はなまえが答えを聞く前に彼女から唇を重ねてきた。

 結局お互い鈍いので、もう少し互いをよく知ろうという話になった。いや、全く見ていないわけではないし寧ろいつも目で追うのだが、互いにどれだけ相手が自分の事を好きか自覚する必要があるなという話だ。











梓様、最後のリクエストお待たせしました!
高尾が緑間に遠慮しなかったのは、大事な幼馴染みが取られてちょっと悔しいからっていう思いからの確信犯な行動だったらいいなと思っています。
素敵なリクエストありがとうございました!

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