FOR YOU
オールと直感少女がサバホラ

 ガゴン、と重たい音が響きその音でその場にいる者が目を覚ます。

「…此処は、」

 一番に目を覚ました赤司は床に倒れている体を起こす。周りには洛山のチームメート、その他高校のバスケ部部員。パッと見た感じではスタメンの五人のみのよう。
 そして辺りを見渡してみれば見知らぬ小さな体育館のようで、ステージの真逆の位置に一つだけの扉。その上には電光掲示板があり“15/50-成功”と表示されている。

 赤司は状況を飲み込めないままだが、近くの実渕を起こしそこから芋ずる形式に皆を起こした。
 いる高校は洛山、陽泉、桐皇、秀徳、海常、誠凛、そして霧崎第一。皆顔見知りなので自己紹介は省き、状況整理をする。皆一様に部活で練習をしていたはずで、気付けば此処にとの事。

 唯一ある扉を開けようとするが開かない。電光掲示板の意味も不明。とにかく此処から出る為に体育館内を調べた。

「おい、これって…」

「うわ、本物かよ」

 根武谷と葉山がステージ上にある物を見つけ皆を呼ぶ。布が掛けられているそれを捲れば木箱に入った大量の手榴弾や銃、ナイフなどの武器。持ってみればズシリと重量があり本物だと窺える。
 他にも倉庫の方に食料があったり、トイレや風呂などの設備が整っていたとの事。

「何の為でしょうか」

「…情報が少な過ぎるな」

 黒子の問いに赤司は顎に手を添え考え込む。誘拐され此処に監禁されていると思ったが、しかし武器がこんなにわかり易くある意味がわからなかった。
 すると、開かない扉の方でカタンと音がした。

「「!」」

 皆が警戒し数名が唯一扱えそうなナイフを持って扉に注目をする。開かなかったはずの扉が重たそうにゆっくり開いた。

「!?」

「お、女…!?」

 そこには彼らと同年代と思われる少女の姿があった。
 少女は疲れ切った顔をして扉を開けたが、中から聞こえた声と人の姿に瞠目し、持っていたライフルと思われる銃を構えた。

「だ、誰!?」

「おおおおおい!?撃つな撃つな!!」

「何で人が…っ」

 数人が反射的に手を上げて火神が叫ぶ。少女は怯えたような顔をしてカタカタ僅かに震えながら銃を構えている。
 それを見て赤司がゆっくりと歩み寄り声を掛ける。銃口を向けられたが本人は気にする様子なく落ち着いて話し掛けた。

「僕達に敵意はない。何もしないと約束する。ただ話を聞かせてくれないか」

 淡々とした口調で言われ、少女は少し落ち着いたのか銃を下ろし体育館へと入った。
 一同武器を置いて床に座り敵意なしの意を示すと、少女はかなり離れた所に一人でちょこんと座った。

「…もう少し近付いてくれないと話を聞き辛いんだが」

 赤司が見兼ねてそう言うが少女は怯えた目のまま口を一文字に結んで動かない。仕方ないかと諦めて自己紹介と此処にきた経緯を話した。
 そして少女に聞くと名はみょうじなまえ、正邦高校の一年だと名乗った。ちなみに空手部との事。そこからなまえは自分の経緯を話す。










「…つまり、君は随分前に此処に連れてこられ脱出の為にゲームを強いられていると」

「…はい」

 なまえは日数は定かではないが随分前に一人で此処へ連れてこられた、経緯も彼らと同じで気付いたら此処にいたとの事。その時スピーカーが鳴りモザイク掛かった声でゲームを始めると言われ強制参加させられている事、脱出するにはミッションをクリアしていかなければならない事、ミッションの際にはゾンビ所謂アンテッドなどと呼ばれる怪物を倒す必要があり戦う術として武器が準備されているとの事。

「ミッション数は決まってんのか」

「50あります。今は…まだ15をクリアしたところです」

 ミッションは扉上にある電光掲示板に表示され成功や失敗表示もされるらしい。今は表示が消えているが“15/50-成功”と書かれていた意味を理解した。また生活も此処で送る必要があり設備が整っていた理由もわかった。
 花宮の問いに答え深く溜め息を吐くなまえは至って普通の少女。平均身長くらいで特に可もなく不可もない平凡な顔立ち。服装は用意されているという動き易そうな迷彩のサバイバルスーツ。そんな彼女に大きなライフルは不釣り合いだった。

「僕達が連れてこられた意味は、」

《ゲームを円滑に進める為だ》

 突如鳴ったスピーカーに一同が高い位置にあるそれを見上げた。モザイク掛かった声だ。

《やはり一人だけでは難しいようでね。君達程の身体能力の持ち主ならばゲームをクリア出来ると思い来てもらった》

「目的は何や」

《私が作ったゲーム完成の為だ。新感覚ゲームのね。ミッションをこなす中で微調整など繰り返している、つまり試行の段階だ。クリアしてもらわないと一向に完成しないし、早くクリアしてもらう為に君達には協力してもらう》

「何勝手な事吐かしてんだ!聞いてりゃかなり危険なゲームじゃねえか!」

《生死を賭けたゲームだからね。彼女も此処までよく一人でもったと思うよ。私にも時間がなくてね、トントンとクリアするのを期待しているよ》

「人の時間なんてどうでもいいってか」

《この世界は私が全てだ。では健闘を祈る》

 今吉、日向、笠松の発言に淡々と答えると厨二くさい台詞を吐いた首謀者と思われる人物は放送を切り、体育館に静寂が戻る。なまえはいいように使われている事が気に食わないのか顔を顰めている。

「…状況はわかった。先程の奴と本当に無関係なら君の話も本当だと言える。だが同じ巻き込まれたもの同士だとしても現段階では僕達は君を心から信用が出来ない。言動や行動には慎重にする事だ」

「…こっちの台詞だっつーの」

 空気がピシリ、と固まった。この少女は赤司に言い返したのだ。小声だが。怖いもの知らずというか何というか、とにかく全員がこの空気に恐怖した。

「…何だと?この僕に逆らうつもりか」

 赤司が低い声を出すとなまえはビクリと体を震わせ、ズザザッと壁際まで後ずさった。

「ここここ怖くなんてないんだから!ちょっとビビリで男の人怖いけど私には超当たる直感があるんだから!!」

「「(めっちゃ怖がってんじゃん…)」」

「「(つか自爆してどうするよ…)」」

 一部の者がこの子馬鹿なの?天然なの?と言いたげな目を向けると、原は納得の声を出す。

「だからそんなに離れてたのか。怖くないよーおいでおいで」

「わ、私は犬じゃないです!ひい!?こここ来ないでぇぇぇ!!」

 原は面白がって立ち上がり距離を詰めようとするがなまえは半泣きで逃げ、終いには銃を向けてきたので他の人も冗談では済まなくなると言って止め、一気に騒がしくなった。

 赤司は溜め息を吐き出し、主将を集めてミッション遂行の為作戦会議を行う。その結果、本来なら女子である自称臆病のなまえは連れて行くべきではないのだが、この世界を知っている彼女に案内やミッションのやり方や銃の扱いを指南してもらう必要があり、最初だけでも同行してもらう事になった。

「何でみょうじさんは銃なんか使えるんスか?」

「せ、説明あそこに書いてあったし…あとは慣れ、と運です」

 落ち着いたなまえは黄瀬の問いに離れた位置から武器が収納されているステージ上の木箱を指差し、最初は一番小さな銃から扱い始め今ではライフルまで少しは扱えるようになったと言う。
 空手部現役なので腕力には多少自信があると話す彼女の袖が捲られた腕に、沢山の痣や傷が見えて数人は苦労したんだなと同情した。

「これからはオレが守ってあげるから、安心していいよみょうじさん」

 例えば桃井のように特別可愛いわけではないので森山がいつもの反応を示さないと思っていた海常メンバーだったが、健気だと思ったのか何なのかキラッとした笑みを向け安心させようとした森山を見てドン引きした顔をしたなまえが後ずさったのを、海常メンバー全員がざまあと笑った。










 あの後16個目のミッションが発表され行くメンバーを決めた一行は、武器の扱いを説明書を見たりなまえに聞いたりして武器を装備し、服装も指定されたそれに着替え準備を整えると体育館の扉から出発した。
 最初開かなかったのは装備が不充分であったからとなまえは言う。自分も最初出ようとして開かなかったとの事。

「分かれ道〜?」

「どっちに行けばいいんだ?」

「おい、お前わかってんだろ」

「み、ミッション毎に道や地形が変わるのでわかりません」

 一歩外に出ると、体育館があるから学校かと思えば全く違い何故か森だった。ミッションの関係で洛山、陽泉、秀徳の十五人+なまえと大人数がいるが、なまえ以外一同唖然とした。そして左右の分かれ道。

「赤司どうする?」

「そうだな、」

「み、右に行きましょう」

 福井の問いに赤司が答えようとしたところでなまえが発言する。皆より距離を置いた位置に立っている。

「さっきお前はわからないと言ったのだよ」

「わわわわかりませんけど!勘です!」

 不機嫌そうに緑間が言うとなまえがおどおどしながら答えた。

「私は今まで直感で進んで失敗した事はありません…!」

 その目は男子である皆を怯えて見ているのに反し、真っ直ぐ自分に自信を持った目だった。その目を見て赤司は面白い、と少しだけ笑いなまえの直感で進む事を決めた。
 そして幾度の分かれ道は全てなまえの直感に委ねてみるが、実はハズレの道にはある仕掛けがなく悠々と進めた。

「うっひい!!やっべえマジやっべえ!!」

「うるっせえ!!さっさと撃て撃つぞ!!」

「銃片手に冗談には聞こえない!!」

 ミッションはゴールまでの道のりまでにいるゾンビを全部倒す事という簡単なものだが、仕掛けはなくともゾンビの数が多く皆が苦闘していた。扱った事のない銃の扱いに直ぐには慣れなかった。
 高尾と宮地が言い合うその中でなまえは率先してゾンビに突っ込み、どんどん倒していく。接近戦になると空手技で地に伏していき、ビビりながらも冷静に周りを見て動くなまえに皆が瞠目する。

 同時に女子に負けていられない、守られるなんてあり得ないとばかりに動く皆は、その並外れた身体能力を駆使してゾンビを倒していく。
 そして長時間の戦闘の後、ゴールと書かれた旗が見え走って向かう。

「やっとゴールじゃ!」

 一行がゴールに向かう中で高尾と赤司は背後で何かが動くのを感じ振り返る。するとそこには一際大きなゾンビが口を開けていた。

「うっわ…!?」

「まずい…!避けろ!!」

 二人が声を上げ全員が振り返ると巨大なゾンビ、避けようとするが間に合わない。
 そう思った途端、走り出した小柄な影がゾンビに突っ込み、長細いライフルを縦にして大きな口にガコッと嵌めた。

「!?」

「なっ…みょうじさん!」

 劉と氷室が目を見開く。ゾンビは動かなくなった顎に怯むが腕を振り上げて目の前のなまえを殴り掛かる。

「ひゃあっ!!?」

 ぐいっと後ろに引かれ突然の事で受身が取れなかったが、そんな心配はいらずしっかり支える両の腕がなまえを包む。

「!?」

「無茶はするものではないよ。仮にも君は女子だ」

「ごごごごごめんなさいぃぃぃ!!」

 その人物は赤司で、不敵な微笑を浮かべていた。なまえは至近距離にいる赤司に一瞬フリーズするがボンッと赤面し一気に離れた。

 その合間に黛と大坪、木村が三方向から銃を撃ち見事巨大ゾンビを倒し、そして無事にゴールしミッション成功を収めた。

「なまえ」

「は、はひっ!?」

 ゴール地点で赤司はなまえに話し掛け、彼女はまだ赤面したままで怯えたように飛び上がり振り向く。赤司は相変わらず不敵な笑みを浮かべて言葉を並べた。

「君の実力は充分理解した。君を信用する、だから今後も是非協力を頼むよ」

 その意図に使える者は使うという意味が含まれているのだが、直感で生き抜いてきた彼女自身に興味が出てきたという意味が含まれているのは赤司のみが知る事。
 それを聞いてなまえは脱出出来るなら、とおずおず頷き了承する。
 これから色んな意味でこの目の前の赤い彼に翻弄される事など、なまえには知る由もなかった。











桜様、お待たせしました!
甘はあまり感じられなかったかもしれませんが、きっとこの後みんなと絆を深めていく事と思います。
素敵なリクエストありがとうございました!

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