FOR YOUオールと人外夢主ホラー
※名前変換ほぼなし。
とある新築のように綺麗な体育館にて。
そこには誠凛、海常、秀徳、桐皇、陽泉、洛山、霧崎のバスケ部のメンバーが集まっていた。各校スタメン五人ずつ、計35名だ。
一部の者が息切れをし床に座り込んだり壁に背を預けたりして息を整える中、それを心配そうに見つめたり興味なさそうに見つめたりするその他以外の者。
ただ、全員の顔からは疲労の色が窺える。
「ハァッ…ハァ…取りあえず、これで全員揃ったか?」
「ああ、何とかな」
上がる息を整えながら言葉を発したのは日向。それに言葉を返した伊月は安堵したように息を吐き出した。
彼らはいつの間にか、彼らの元いた世界とは違うこの異世界にいた。みんな数名ずつ固まっていたり一人だったり訪れ方は違うが、此処に呼び寄せられ徐々に集まり今こうして時間を掛けて何とか一応全員集合を果たした。
此処に連れてこられた人の確認や此処からの脱出方法を得る為に探索を繰り返し、探索を経てメンバーが此処にいる35名で恐らく間違いない事はわかった。
そして何故此処が異世界なのかというと、この世界は現実では有り得ない事が起こるからだ。
「どうなってんだよ此処…マジで…」
「外は化け物だらけ…何でオレらがこんな所にいんだよ…」
「まるでお化け屋敷みたいですね」
火神と高尾がそれぞれ疲労感を隠さずに愚痴を零し、黒子は淡々と言うが難しい表情をしている。そう、彼らの言う通りこの世界には怪物がいる。それは映画で観るようなゾンビであったり貞子であったり、都市伝説の出てくるような怪物や人食い鬼や妖怪など、遭遇した怪物は数知れず。此処まで生きて逃げられたのが奇跡に近い。
怪物から逃げる為に走りながら集合し此処まで来た。これが息が切れていた理由だ。
真新しいこの体育館に何故全員集合したかと言えば、此処が恐らく安全地帯だからだ。この体育館以外の周りの建物は全て古く、此処だけ空気が違う。確証はないが、直感や頭脳派組の意見により此処に集まったのだ。
その周りの建物というのが木造校舎。年季を感じさせるような古い佇まいで、明らかに“出そう”な校舎だ。
今、彼らはこの建物全体から外には一歩も出られない。
校舎の玄関からも窓からも渡り廊下からも出られず、ガラスを割ろうとしても割れない。体育館からも校舎を繋ぐ渡り廊下がある前の扉以外は開かないのだ。
渡り廊下と校舎の隣接部分より校舎側は怪物の住処であるように怪物が右往左往している。
完全に八方塞がりだった。
現在これといった武器はなく、戦う術はその辺にある椅子や消火器などの小道具だけ。
これまで集まるまでに怪物に襲われ負傷している者もいる。命に関わる怪我ではなく些細なものばかりではあるが、早くこの世界から出るに越した事はない。
次の探索に行くまでに対策を練ろうと集まって話をする事になり、話を始めて数分。
事態が変わる。
「…何の音だ」
不意に花宮が何かに気付いた。その視線は体育館の扉に向けられており、全員が注意を向ける。
すると、閉まっている重たい扉がスライドされ、開かれた。
「「!!」」
「ひっ」
落ち着かせていた腰を上げ身構える。桜井は怯えその場から腰を抜かして動けず、情けない声を漏らす。
そこから見えたのは怪物…ではなく、人より少し小さめの影。だが人型ではなく四つ足で、暗がりの奥から姿を現したのは、
「…お、狼…!?」
鋭い眼は金色に輝き、体育館の光を反射する艶のある灰色の美しい毛並みを持った細身の狼だった。
【なまえside】
気付けば知らない所にいた。
辺りは暗いが夜眼は利くので問題ないが、どうやら木造の建物らしい。でも匂いでわかる。此処は私が今までいた所とは全く別の場所だ。
埃の匂い、人間の匂い、血の匂い…色んな匂いが優れた嗅覚を突く。
私がいる部屋からドアを鼻先で開けて外に出ると廊下だった。成る程、此処は校舎か病院か何かか。
訓練により自然に身に付いた足音を立てずに歩く手法で、暫く廊下を突き進んでいると前方から何か這いつくばってこちらに向かってくるモノに気付く。それからは腐敗臭や血の匂いしかせず、自然と顔に力が入る。
ソレは私を見付けると一瞬動きを止めたが大口を開けて勢いよく近付いてきた。どうやら私を食べるつもりらしい。
血でパリパリに固まった髪と腐敗して崩れた顔、あちらこちらに折れ曲がった手足。明らかな怪物のソレが目の前に迫った瞬間、私は軽い音を立てて跳躍し簡単に避ける。
私の真下を通り過ぎたソイツはキョロキョロと辺りを見渡し、着地した私を見付けるとまた突進してくるが私は口を開けると一瞬大きく鳴いた。軽い衝撃波を出す程の音を間近で聞き、怪物の顔は吹き飛び古い窓ガラスがビリビリと振動を受ける。
腐敗しているとわかっていてわざわざ不味いものを食べるはずがない。私は見た目こそ狼だが知性はあるし人間の言葉もわかる優秀な人外生物だ。絶対に噛みたくなかったから試しに威嚇のつもりでやったら案外脆かった。ピクリとも動かなくなったソレはじわじわと溶けていき床に同化する。私はそれを見送り再び歩き出した。
すると一際人間の匂いがきつくなった。数はわからないが、多い。匂いを辿っていくとドアを隔てた向こう側にある体育館のような大きく綺麗な建物からだった。体育館って事はやはり校舎だったか。
私はこんな臭い所早く抜け出したいと思い鼻先でまたドアを開けると体育館の扉に近付く。すると、中から聞こえていた声が聞こえなくなった。私に気付いたのだろうか。
鼻先では開けにくく前足で開けると新しい事もあってかスムーズに開く扉。中からの光に一瞬目を細めつつ中に踏み込めば、喫驚や畏怖の表情を浮かべた人間の男ばかり。
お、女が一人もいない…だと…。匂いでわかっていた事だが中々のショックだ。うん、ムサい。
私は怪物が入ってこないようにご丁寧にも扉を閉めると後ろで「はぁ!?」と声が上がった。
「お、オイ!今あの狼手で閉めたぜ!」
「厳密には前足なのだよ」
「言ってる場合かっ!」
何やら青のガングロが喚いており緑の眼鏡が一言挟んだ様子。それに突っ込むのはハニーフェイス。何だ、イケメン揃いじゃないか…無駄に。
私が近付いていくと息を飲む音や少しずつ後ずさる音が聞こえた。これは完全に怖がっているな。
まあ何はともあれ、これであの血生臭い空間から外れられた。後は元の世界に帰る方法だが、どうするか。ヒントはやはり向こう側かな…でも臭いから行きたくない。別に怖いとかではない、断じて。わかってはいると思うが、私は普通に強い。
よし。此処はこの場にいる人間に任せよう。絶対彼らも此処に呼ばれた系で脱出する為に色々調べるはずだ。私は匂いでアレなので、此処から動かない。何か確実ないい情報を得たらトンズラしよう。
我ながらナイスアイデアだ。そうと決まれば私は休もう。クルリと踵を返し離れた位置に寝そべる。
「な、何なんスかコイツ…」
「怪物の類じゃねえのか?」
「オレ達を食うつもりはないのか…?」
ちなみに私は生肉より焼肉の方が好きだ。
黄色の奴とそれより小さいガッツがありそうな奴と、残念なイケメン臭がする奴が話す声が聞こえる。
「…どうやら頭のキレる狼のようですね。本当に怪物だったりオレ達を食うつもりだったりしたら既に襲われていても可笑しくない。もしかするとこちらの言葉を理解している可能性があります」
「ただ油断しない方がいいわね。此処は何があるかわからない世界だし、私達に興味を示していないけど隙を突いて襲って来る可能性もなくはないし」
「取りあえず襲って来る気配ないんやったら様子見や。やけど近付くなや」
赤い奴とオネエっぽい奴と眼鏡の喋り方が変な奴が私の事を見て話している。まあ襲う気ないしその見解はあってる。だが利用させてもらっているとまでは流石に気付いていないようだな。
私はそこから眠る事にし目を閉じた。すると離れた位置で話し合いが再度始まり、私を監視しながら作戦を立ててチームを編成し、探索とやらに出掛けていった。
まあ、死なないようには祈ってやろう。
数時間後。目を覚ますと最初に比べて随分と体育館内の血の匂いが濃くなった。負傷者が増えたのだ。
保健室から治療道具は揃えたようでそれで処置はしているが、死にはしなくてもきちんとした所で治療をしないと傷は痕を残す。いくら男とは言え、怪物に付けられた傷を一生負いたくはないだろうな。ふむ、一肌脱いでやろう。一肌だけな。
私は体を起こすと立ち上がった。そして彼らの方に一歩近付くと、不意に何かを投げ付けられる。
「ちょ、今かよ!?来んな来んな!!」
全員が腰を上げて警戒しており、投げたつり目の奴は怯えた顔をしていた。投げたそれはボールで体育館にあった物かと直ぐに理解し、ヒョイと避ける。
そしてのそのそと全体に近付き一番重傷な奴を見極めてその人に近付く。紫の一番でかい奴で、腹に中々深い傷を負っている。周りの人は逃げるように後退ったり獲得したであろう武器の鉄パイプを持って警戒したり、紫の奴の前に立ちはだかったりしているが私からすれば茶番だ。どかんかい。
そう思っていると鉄パイプを振り下ろされたり蹴られたりするが全て簡単に避ける。ふん、チョロいぜ。
紫の奴の前に立ちはだかる片目を隠した奴を見据え、チョイと鼻先を横にずらし“退け”と合図を送る。警戒し睨んでいた彼だが私の真っ直ぐな視線を受けて僅かに身をずらす。
横になって目を閉じて腹を押さえながら少し息が荒い紫の奴の前に座り、傷口に鼻先を近付け体内に蓄えた秘密の力で口から冷気を吐き出した。澄んでいるそれは徐々に傷を癒し内側から修復する。
少しして鼻先を離すと一番深い傷はすっかり癒えていた。これで死人は出ないでしょう。
私は驚く周りの顔を一瞥して元の位置にのそのそと歩いて戻る。すると後ろから声が掛かった。
「待ってくれ!君はいったい…」
片目を隠した奴が呼び止め私は顔を振り向かせると、ブンと軽く尻尾を一振りだけして元の位置に戻った。
私が害のない奴でしかも治癒も出来るし言葉もわかるもしかしたらいい狼かもしれないとわかったのか、若干警戒心が和らいだ気がした。空気で。まあ私って優しいしな。
チラチラ私を見る奴やこれからの行動を話す奴、治療に専念する奴と様々だ。まあ、最悪何にも全く進展しないのなら、私が後々手を貸してやってもいいかな。
ただその時に死人が出ていない保証はないけど。遅くても文句は言うなよ。
月魚様、お待たせしました!
not人型の四つ足獣型と見て最初に浮かんだのが狼だったので勝手にそれを採用しましたが、リクエスト通りの話の流れになっていますか?理解力が乏しい故、意味を履き違えていたらすみません…あと勝手に特殊能力ありにしてすみません…。
こんな感じの話は書いた事なかったので新鮮でした!
素敵なリクエストありがとうございました!
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