FOR YOU
緑間と以心伝心幼馴染み

 秀徳高校にて、終業のチャイムが鳴り響く。緑間は授業が終わった途端隣の席でずっと喋りっぱなしの高尾の話を聞いているのかいないのか、返事もせずに淡々と部活に行く支度をしていた。

「Hey,Shintaro.」

「何で英語なのだよ」

「さっき英語の授業だったからさぁ」

 そこに現れたのは別クラスの緑間の幼馴染みみょうじなまえで、自称真太郎の良き理解者。秀徳バスケ部の敏腕マネージャーである。
 当然高尾とも交流があり二人顔を合わせるとにこやかに挨拶をし、緑間に視線を移した。

「ねね、真太郎。こないだのさ」

「…仕方ない。わかったのだよ」

「やった!」

 こないだの?何が仕方ないの?何がいいの?

 話を聞いていた者はみんなそう思い、頭上に疑問符を浮かべた。高尾も例外ではなく見慣れた光景だが苦笑していた。

「(全然本題入ってないのに本当言いたい事よくわかるよな、こいつら。こないだの話って色々あんでしょ。その中からよくピンポイントで言いたい事わかったな)」

 そう思いながら高尾は既に先に行こうとしている二人を慌てて追った。

「ちょ!置いてかないで!」

「高尾君が遅いのが悪い」

「のだよ」

「そこで区切るなよブッフ!!」

 打ち合わせをしていたかのような二人のリズムのよさに吹いた高尾もまた、相変わらずツボが浅い奴である。

「ところでさっきの話、何だったの?」

「ん?ああ、今日の帰りに新しく出来たカフェの限定ケーキの予約に一緒についてきてって話」

「(あの一瞬でそんなやり取りが!?)」

 以心伝心というより既にもう何か別の能力でも備わっているのかと言いたくなる程のエスパーっぷりだった。

 そして部活。容赦ない練習量とハードさに今日も嘔吐する人が何人かいた。入部してから随分と経っているので慣れたが、入部当初はよくもらいゲロをしそうになっていたなと物思いに更けながらなまえは介抱し、同時にマネージャーの仕事をこなす。

「おいみょうじドリンク足んねえぞ!」

「すいません!こっちに予備あります!」

「みょうじ、得点ボードとビブス何処いったかわかるか?」

「用意して向こうに置いてあります!今持ってきます!」

 先輩である宮地の容赦ない言葉にも怯む様子なくしっかり自分の業務をこなすなまえは、先輩(主に宮地)の選手同様厳しい声掛けに対し唯一ビクつかずに対応出来る女子後輩としても知られている。
 なまえは緑間に付き添い中学の時からバスケ部でマネージャーをしていたのでマネージャー業は心得ており、高校では部活量に見合った業務の多さや休みの少なさに折れて辞めていったマネージャーが多く現秀徳バスケ部のマネージャーはなまえただ一人である。
 一人で熟すには大変な量を文句も言わずに着実に行うなまえの様子に、当然周囲は認めている。宮地も厳しいが可愛がる時は可愛がっているのだ。

 そんななまえだが今日は少し調子が悪いようで、最近では業務に慣れたのもあってそんなに指摘を受ける機会が多くなかったのに対し、今日は何かと抜けている所がある。
 部員は違和感を若干感じる程度だが、この男だけは違った。

「なまえ」

「ん?…大丈夫」

「そう見えないから言ってるのだよ」

 休憩中、緑間がなまえに声を掛けたかと思えばそこから睨み合うように無言で見つめ合う二人。その様子を見守っていた部員達は喧嘩でも始まるかと思い固唾を飲んだ。

「…そこまで言うならわかった」

「「(いやそこまでっていう程発言してねえよ!?)」」

「ここまでオレに言わせなくても済むように自己管理くらいするのだよ」

「「(だから何も大して発言してねえって!!)」」

 部員の心が一致した。言葉数少なくても伝わる互いの考え、互いを思いやり適度なタイミングでフォローする様子はいつ見ても感嘆するものだが、大概部員達はこうして心の中で突っ込んでいる。

「(相変わらず以心伝心感ハンパねえ…その能力別に役立てろよ…)」

 この宮地でさえも何も言わず口元を僅かに引き攣らせて見守っている。

「あの、大坪先輩」

「どうした」

「頭痛がするらしく薬は飲んだそうですがまだ治っていないようなので、治るまで少し休ませてやって欲しいです」

 汗を拭う大坪に駆け寄ったなまえが声を掛け本題に入ろうとしたが、それを背後から緑間がなまえの頭に手を置きながら代わりに説明する。なまえは申し訳なさそうな顔をしているが、確かによく見ると顔色が優れない。
 大坪はなまえがそんな事一言も発していないのによくそこまでわかるな…と毎日誰もが思っている疑問を今日もまた思いながら頷いた。

「そうか、わかった。無理せず帰っても構わないが」

「いえ、大した事ないので直ぐ治ります」

「そうか?無理はするなよ。そこで休んでいろ」

「ありがとうございます。すいません」

 なまえが頭を下げると緑間がさり気なく肩を抱いて壁際まで連れて行く。そこへ座らせた緑間は視線を合わせるように膝をついた。

「無理はするな」

「うん。ちゃんと治ってからにするよ。…真太郎」

「…ああ」

 何かをお願いするような視線を緑間に向けるなまえに、緑間は薄っすら笑みを浮かべると慣れた手付きで優しく頭を撫でてから離れた。それに対しなまえは嬉しそうに僅かに頬を赤らめながら微笑んでいた。
 撫でて欲しいとでもお願いしたのだろう。意思疎通で。

「真ちゃん達さ、本当に付き合ってねえの?」

「当たり前だ。なまえとオレはただの幼馴染みなのだよ」

「あれで?」

「しつこい」

 緑間は高尾と言葉を交わしながら肩に掛けていたタオルを置くとボールを手に持ち、なまえを一瞥してからゴールに向かって高くボールを放つ。

「「(ならとっととくっ付け!!焦れったい!!)」」

 長年の付き合いで互いに考えている事がわかる程の関係でありながら、誰が見ても幼馴染み以上の特別な感情を抱いている二人が未だ引っ付かない状況にやきもきした皆が思う事は同じだった。此処も言えば以心伝心だ。

 この後少ししてなまえは回復しいつも通り業務をこなした。部活後の自主練習では緑間が頼む前にボール拾いは勿論テーピングの巻き直し、その他諸々のサポートをこなして二人仲良く部活前に約束していたカフェへ限定ケーキの予約をしに向かっていくのを、高尾は鈍感な二人が引っ付くのはもっと先かなと思いながら見送った。











梓様、大変お待たせしました!
ほんわかという事でしたが、私の文才ではこの程度にしか仕上げられず申し訳ないです…。少しでも気に入って頂けると嬉しいです!
素敵なリクエストありがとうございました!

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