紅葉狩りじゃァァ



「いいか、外には連れ出すな」
「はぁ?じゃあなんだ、あの埃くせぇ部屋で毎日おしゃべりしてろってか?」
「そこまでは言っておらんじゃろう。だが、白百合はあの通りじゃ。あの肌は太陽の光だけではなく、すべての光に弱い。
いつも僅かなろうそくの灯りで生活しておる白百合を外へ連れ出せば肌が焼けただれてしまう」
「だったら神楽みてェな傘持たせりゃいいだろ」
「それがね…」
「日輪!」
「ダメだったのよ。一度挑戦してみたことがあったんだけど、普通の傘だけじゃ防ぎきれなくてねぇ…」
「焼けたのか?」
「あぁ、真っ赤になってしまったのじゃ」
「めんどくせェな……」
「銀さん、失礼ですよ。白百合さんだって好きでそうなったわけじゃないんですから」
「そうネ!夜兎はみんな好きでこうなったわけじゃないネ!」
「あぁ〜分かった分かった。じゃあ俺たちが部屋に通えばいいんだろ?」

それから毎日通うことに。

「銀ちゃん、早くするアル!」
「俺二日酔いなんだって〜」
「じゃあ僕たちだけで行っちゃいますよ」
「あぁ〜好きにしろ〜」

神楽とか仲良くなっちゃって毎日通ってる。

「ただいま〜」
「おう、おかえり〜」
「銀ちゃん銀ちゃん!今日ネ!」
その日白百合を話したことをべらべらとしゃべる神楽。
「神楽ちゃん、すっかり仲良くなっちゃいましたね」
「女ってのはそんなもんなんだよ、ちょっと話せばすーぐ仲良くなっちゃって。どんな人が好きなの〜?とかなんとか恋バナばっかしてんだよ。
で、挙句の果てにはうちの上司が最近お酒ばっか飲んでて息が酒臭くて〜とかなんとか愚痴で盛り上がるんだよ」
「じょ、女子って怖いですね…」
「あっ、そういえば」
「あ?なんだ?好きなタイプでも分かったのか?」
「違うヨ!白百合は本名じゃないって言ってたネ」
「えっ、じゃああれって源氏名みたいなものだったの?」
「バカヤロー、水商売とか夜に働く女ってのはなァ、普通別の名前で仕事するんだよ」
「で、本名はなんだって?」
「花蓮って言ってたアル」
「へぇ〜、花蓮さんか〜」
「意外と普通なのな〜」(鼻ほじ)


「外に出たいって言ってたアル」
「ま、待って、それは…」
「じゃあ、出りゃァいいだろ」
「えっ、で、でも…」
「出たかったら出ればいいじゃねェか」
「私、光にあたったら肌が焼ける…」
「神楽ァ、傘貸してやれ」
「銀さん、花蓮さんは傘だけじゃ…!」
「なら一生この暗ェ部屋で雑巾でも縫ってろ」
「銀ちゃんひどいアル!」
「言い過ぎですよ!」
「出たいなら出ればいいだろうが。出たい出たいって言いながらこんなとこに黙って座ってるようじゃァ、いつまで経っても出られねェだろうな」
「!」
「方法がねェってんならまぁ、依頼されりゃなんとかしてやらァ」(名刺を渡す)
「これ…」
「じゃ、あとはお前ら営業よろしく〜」
いなくなる銀さん。
顔を見合わせてにこっと笑う神楽と新八。

それから数日後。
「よ〜し、完璧だ」
「って、強盗犯だろォォォォ!!」
「バカ、違ェよ!こういうファッションなの!」
「江戸ではこういうふぁっしょん?が流行ってるのね」
「ち、違いますよ!こいつの言うこと鵜呑みにしちゃだめですからね!」
「でもこれすごい、顔まですっぽり覆う服なんて初めて着た」
「服じゃないですよそれ!目出し帽って言って」
「これをかぶって銀行に行けばお金がもらえるネ」
「えっ、そうなの?これでお金が…」
「もらえるかァァァァァ!!!」
「花蓮さん騙されちゃダメですよ!銀さんに神楽ちゃんも!ちゃんと本当のこと教えて上げないと、あとで日輪さんたちに怒られますからね!」
「まぁ、とりあえずこれかぶって長袖着てりゃなんとかなるだろ」
「オイィィィィ!だからちゃんと説明しろって!」
「それにこれをかぶってると何だかあったかい」
「私もかぶるアル!花蓮とお揃いネ!」
「ホントだ、神楽とお揃い」
「そんなお揃いやめちまえぇぇぇぇ!!」

目出し帽と長袖長ズボンで外へ。
「神楽〜、傘さすの忘れんなよ」
「はい」
「ありがとう」

「やっぱり外は明るい…」
「大丈夫アルか?」
「う、うん。少しまぶしいだけ…」
それから少しして…
「ハァ……ハァ…」
「花蓮!?」
倒れそうになる。
「だ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫…ふらついただけ…」
「無理はよくないアル!」
「大丈夫。せっかく色々用意してもらったんだし、もう少し歩き、た…」
「おいおい」
「銀ちゃん!」
「客に倒れられたら困るんだよなァ」
「あっ、あの…ごめんなさい…」
「帰るぞ〜」

連れ出したことがバレる。
「銀時!連れ出すなと言ったじゃろう!」
「本人が出たいっていうから連れ出したんだ。俺たちは正式に依頼されて仕事をしたんですぅ」
「な、何!?本当なのか…!?」
「……うん、私がお願いした…だから座敷に上がらせてほしい…依頼金を…払いたい」
「!」(月詠からビンタ)
「いい加減にするでありんす。ぬしらは白百合の価値が分かっておらぬようじゃ」
「過保護過ぎなんだよ。かわいい子には旅をさせろっていうだろ?あんまりかわいいかわいいしてっと社会人になってからうまくやっていけなくなって結局入社してすぐに仕事辞めちゃうんだから」
「銀時、ふざけていると…」
「お前らこそ、いい加減にしやがれ」
「!」
「価値があるだか、貴重だか知らねェが、自分(てめぇ)の人生くらい自分(てめぇ)に決めさせてやれ」
「…っ」
「じゃ、依頼料はきっちり受け取るからな〜。月末までに頼むぜ」
いなくなる銀さん。
「……月詠」
「花蓮…」
「ありがとう。でもね、もういいの。私、自分の脚で日の元を歩いてみたいの。だからお願い、お座敷に上げてちょうだい」
仕方なくオッケーすることに。

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