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祭りの夜のブロンドの君 3



 風に吹かれるぼろ雑巾とはこんな気持ちだろうか。今にも倒れるのではないかと思うほど、俺はショックを受けていた。祭りの夜に出会った麗しのレディが、まさか男だったなんて、と。
 この俺としたことが、とんでもない勘違いをしたものだ。祭りの時には薄暗くて目立たなかったが、よく見れば見事なブロンドはカツラだった。
 

「お。マリア〜今日もその格好で来たんだな〜」

「う、うん、そうだけど……」


 言葉がでないまま壁のように立ち尽くしていると、レオポルドの背後から男が現れた。昼間に見かけた道具屋の出入り業者だ。彼は、レオポルドに話しかけ、レオポルドが返事をしている。


「失礼、マリアとは……?」

「陛下?!し、失礼しました!お話の途中でしたか?!」


 業者の男は、俺と、俺と向かい合うレオポルドを見比べて慌てふためいている。


「いや、構わないよ。気にしないでくれ。それよりも、マリアとはどのご婦人のことかな?」

「陛下の目にいますよ。よくご存じなのでは?」


 業者の男はにっこりと笑った。レオポルドはそわそわとして落ち着かない風に、ただその場に突っ立っている。
 

「彼はレオポルドだろう?」


 男は「はて?」という顔をした。言葉は通じているはずだ。なのに、この疎通の不自由さはなんなのだろう。レオポルドに目をやると、彼はおずおずと話し始めた。


「陛下、私の名前はマリア・レオポルドと申します」

「……何だって?」


 レオポルトがマリア、だと?どういうことだ。彼は男ではなかったのか?


「いや〜普段は色気のイの字もないのに、こんなに化けるんですから女性とは恐ろしいものですよ」

「あんたはどうなの?よけいなお世話だ」


 喋り続ける男を、レオポルドはじろりと睨みつける。


「レオポルドはラストネームで、ファーストネームはマリアだということだね?」

「はい。そうです。私、きちんと名乗っていなかったのですね……申し訳ありません」


 レオポルドはそう言うと、頭を下げた。勢いよく下げるものだから、ブロンドのカツラが床に落ちてしまった。黒く艶のあるショートヘアがサラサラと揺れる。


「あっ……し、失礼しました!」

「いいや、構わないよ。きっと私も聞かなかったのだからね。私は君の性別まで勘違いしていたようだが、つまり、君は……」


 レオポルドは慌ててカツラを拾い上げ、そのまま抱えた。


「はい。女です」

「そうだったか……私は随分失礼なことを言ったね。申し訳ない」

「いいえ、とんでもないことです!陛下のせいでは……」


 レオポルドはぶんぶんと頭を横に振る。キラキラ輝く黒髪も、カツラをキュッと握って頬を染めている姿も、どう見ても女性のものだ。断じて男ではない。なぜこれまで気づけなかったのか。思い込みとは恐ろしいものだ。

 聞けば、レオポルドの友人が城の美容室にいるらしい。その友人と「負けた方が勝った方の言うことを何でも聞く」という条件でビリヤード対決し、レオポルドは負けてしまった。負けの代償として練習台を頼まれ、されるがままになった結果がこの姿だったということだそうだ。
 レオポルドはすぐに着替えたがった。だが、負けの代償はまだ続き、たまたまその日に祭りがあったのでそのままの姿で参加させられてしまったらしい。そこへ俺が出くわし、マリアに声をかけ、踊ったというわけだ。
 とは言え、今日俺が祭りでの事を話すまでは、踊った男が俺だったとは気づかなかったという。さらに、俺に男だと思われていたことを知ったのも合わさって、すっかり動揺してしまったらしい。
 俺のせいで麗しいレディに火傷を負わせてしまった。なんということだろう。
 ちなみに、祭りで踊った男が俺だったと美容室の友人に話したら、友人はさらにノリノリで今日のメイクをレオポルドに施したらしい。なんといい友だろう。


「まさか、陛下だったなんて思いませんでした」

「そうだね。でも、お互い様だな」


 そう言って、お互いに笑い合った。
 この俺が、どうして今まで気づかなかったのか。返す返す、思いこみとは本当に恐ろしいものだ。それと同時に、自分が滑稽に思えてきた。どうにも可笑しくなり、笑いが収まらない。俺は片手を自分の額にやり、ついに笑い始めた。こうなるともう止まらない。


「ふっ、ふふっ。はははは」


 一人で笑い始めた俺を見て、業者の男とレオポルドはきょとんとしている。そうだ、こんなに滑稽なことはなかなかあるまい。いつの間にか出来ていた人だかりもざわついている。


「あ、あの……陛下?」


 ひとしきり笑って落ち着くと、俺は戸惑うレオポルドの目の前にひざまづいた。レオポルドの両手をそっと握り、俺の手を重ねて包み込む。そのままレオポルドの手を俺の頬に寄せると、彼女はぎょっとして俺を見下ろした。


「君は女性なのだから、俺としてはもはや何の問題もない」


 レオポルドは緊張と混乱のまざった顔で、じっと俺の言葉を待っている。左手の包帯が見るだけでも痛そうだ。俺は愛しいその手を優しくなでた。


「レオポ……いや、マリア。君を、私の后に迎えたい」


「は………え?」


「私は本気だよ。もちろん今の仕事は続けてくれて構わない。火傷の責任も取ろう」


 すっかりと観衆と化していた人だかりが、わっと歓声に沸いた。その歓声に紛れるように、俺はマリアにそっと耳打ちをする。


「その格好でここへ来たと言うことは、君の気持ちも同じだろう?昼間はあんなに動揺していたのだし、ね」


 パチンとウインクすると、マリアはドレスと同じくらい真っ赤なをしてコクリと頷いた。


 完
20170122



あとがき言い訳
完結しました
エドガーさんが慌てふためくってなかなかなさそうですが、好き勝手しました
受け入れていただけるでしょうか……オロオロ

ワタクシ、男装の麗人とかお忍びで遊びに行く王様とか姫様とかが好物でして……
詰め込んだらこうなりました
思っていたのとはだいぶ違ったんですけど、なんとかなったのかなーと、(なったのか?)
そもそもこれは男装なのか???
いつか王道の男装の麗人ヒロインを書きたいなと思いつつ、今回はこの辺で



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