10 確かに歩み続ける
ザックスは八番街でモンスターを倒していた。初めは群がるようにして襲って来たモンスター達も気が付けばその数はまばらになり、遂に見当たらなくなった。
ザックスはあたりを見回した。いつ敵が現れても対応できるように、ピンと気を張り詰めながら気配を探る。だが、もうそれらしい物は何もいそうにない。彼がこの場所はそろそろ良いか、と思っていると電話が鳴った。
ザックスは片手で剣を握りしめたまま、空いた反対側の手でそれを取り出す。画面にはセフィロスと表示されていた。
「八番街が片付いたら伍番魔晄炉へ来い」
「何か分かったのか? 」
「アンジールの目撃情報だ」
ザックスの心臓が大きく跳ねた。思わず口を一文字に閉ざすと、セフィロスへの疑いがムクムクと沸いてくる。上官であるセフィロスの目的が抹殺だとしたら、自分はそれに従えるだろうかとザックスは唇を噛んだ。
脈打つリズムはいつもより早い。自分の身体でないような感覚に、ザックスは携帯電話を取り落とさないように握り直した。
「見つけて、抹殺か? 」
ザックスは当て付けるように乱暴に話した。険のある目で、何もない空を睨みつける。
よりによってジェネシスとアンジールの親友だったはずのセフィロスの口から、たとえ命令でも抹殺などという言葉は聞きたくなかった。
「軍が本格的に動くまで わずかだが時間がある。それまでに俺たちでやつらを見つけ出し――」
「どうするんだよ! 」
ザックスはイライラし始めていた。思わず大声が出てしまった事に気付いたが、ザックスはむしろこれで良いと思った。もしもこの英雄が本気で抹殺を考えているとしたら、ザックスは今後のセフィロスとの付き合いを考え直そうとまで考えている。
けれど、セフィロスの返答はザックスの考えていた事とは、全くの逆方向を向いていた。
「抹殺に失敗するのさ」
「……まじ? 」
あっさりと言ってのけたセフィロスの言葉を理解するのに、ザックスは3秒ほど集中して考えねばならなかった。
「ああ。まじ、だ」
ザックスの顔付きはみるみるうちにいつもの明るさを取り戻した。今にも踊りだしそうなほど、ザックスの心は浮き立っている。
「最高! かもしんない! 」
高揚した声でそう言うと、ザックスは満面の笑みを浮かべた。
通話を終えたセフィロスは電話を切ると、満足そうに微笑んだ。うまく行くかどうかは分からないが、軍に任せるよりもよほどいい。携帯電話を懐に仕舞うと、伍番魔晄炉へ向かう足をさらに早めた。だが、今度はオリビアが黙っていなかった。
「 ねえ、伍番魔晄炉に行くんでしょ? わたし歩けるから、下ろして」
オリビアは不満そうに頰を膨らませて、セフィロスの肩の上でプリプリ怒っている。セフィロスは一瞬目をぱちくりさせると、一人で納得した。彼は自分で担いでおいて、電話している間オリビアの存在をすっかり忘れていた事を思い出したのだ。
オリビアがいくら暴れようが騒ごうが、セフィロスはびくともしなければ全く気にも留めなかった。そのうち電話まで始めたので、オリビアはすぐに抵抗を諦めた。無駄な体力を使うのは止めておいた方が賢明だろうと思ったからだ。
セフィロスはオリビアを肩に担いだまま猛スピードで走っていたのだが、オリビアの言うことも最もだと思い直して足を止める事にした。
「それにしても、ずいぶん遠くまで来たわね」
セフィロスは八番街から伍番街まで走って来ていた。オリビアはいつもならヘリコプターか車でも使うところだが、まさか走って来るなどとは考えた事も無い。
「交通機関は全て止まっているからな。ヘリの要請をする暇があるなら、お前を担いででも走ったほうが早い」
セフィロスはそう言うと、今度は歩き始めた。もう伍番魔晄炉は目と鼻の先の所まで来ている。下ろされたオリビアも歩き始めると、セフィロスと並んだ。
「何でわたしも連れて行こうと思ったの? ザックスがいるなら、わたしよりもよっぽど戦力になるのに」
「伍番魔晄炉にホランダーの隠し研究室があるらしい。調査しているんだろ? オリビア」
「知ってたの? 」
「ふん。俺を誰だと思っている」
セフィロスはニヤリと笑いながらオリビアを見下ろした。オリビアは丸い目をますます丸くしてセフィロスを見上げている。
「それに、ジェネシスに謝らせてやると言ったろう。オリビアの首を締めた事を」
オリビアは思わず首に手を当てた。すっかり治って色も元通りだが、あの苦しさを忘れることはない。
オリビアは正直なところ、もうジェネシスには会いたくなかった。仕方なくついて歩くものの、気は進まない。
「でも、目撃情報はアンジールなんでしょ? 」
オリビアはセフィロスから視線を逸した。すっかり
人気のなくなった街は、普段の活気が嘘のようにがらんとしている。モンスターやコピー達との戦いで傷ついたのか、あちこちの建物の損壊が目立つ。
「そうだな。だが、あいつらは幼馴染で親友同士だ。共に神羅を抜けた今、アンジールがいるならジェネシスもそこにいるだろうと思ってな」
セフィロスは足を止めた。目の前にそびえる魔晄炉をどこか遠い目で見つめると、大きく息を吐き出した。その時オリビアには、やはりセフィロスはひどい孤独に苛まれているように見えた。
2020/06/02
難しい。
偽物の英登場人物になってない事を祈るばかり……!
FF-D D+S New!夢物語
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