FF-D D+S New!夢物語

9 怯まず弛まず


 ザックスはエントランスの敵を一掃すると剣を納めた。神羅製の兵器までもがビルを襲う事態に一時は騒然としたが、後処理が進むにつれてビル内の一般社員達も落ち着きを取り戻し始めている。
 ザックスは入り口近くの受付に向い、受付嬢にポーションを貰いに行った。このビルの受付ではいつもポーションを配っていて、ザックスはエントランスに来るときは必ず寄っている。受付嬢達ともすっかり顔なじみだ。

「おねーさん、ポーションある? 」
「はいどうぞ! お疲れ様です」

 受付嬢の一人が満面の笑みを浮かべてザックスにポーションを手渡す。

「おっ、サンキュー。俺の活躍見た? 」
「すっごくステキでしたよー!」

 別の受付嬢がそう答えると、ザックスは満足そうな表情で笑った。

「まじ? 」

 じゃあ今度デートでもどう? などと軽口を叩きながら、ザックスは受け取った瓶の蓋をキュッと開けた。腰に手を当てるとぷはーっと気分良く飲み干す。飲みっぷりの良さに受付嬢達から歓声が上がると、ザックスもまんざらでもない顔をして、親指を立てて応えた。

「よしっ。充電完了っと」

 空き瓶をゴミ箱に投げ入れると、次はどうしたものかと考える。イヴに電話をしようと携帯を手に取ると、丁度セフィロスから着信が入った。

「八番街でもジェネシス・コピーが目撃された。行くぞ」
「りょうかーい! 」

 ザックスはエントランスを出て八番街に入った。ビルを出てすぐのところでセフィロスと合流する。
 街にはまだモンスターやコピーがうろうろしている。住人は既に屋内へ退避しているのか一般人の姿は全くなく、街は異様な雰囲気に包まれていた。

「こりゃ大変だ! 」
「二手に分かれる」
「了解! 」

 二人はそれぞれ反対方向へ駆け出し、コピーや兵器、モンスターたちを片っぱしから倒しにかかった。



 セフィロスは次々にモンスターを薙ぎ払いながら移動して、彼が通った場所の敵はあっという間にいなくなってしまう。
 八番街で敵を斬りまくっていると、イヴから着信があった。片手で応戦しながら電話を取り、次の司令を聞いた。

「伍番魔晄炉へ行ってちょうだい。アンジールの目撃情報が入ったの。ザックスもあなたの近くにいるから、できるなら連れて行って」
「了解」
「武運を祈るわ、セフィロス」

 イヴはそう言うと通話を切った。しかしそのタイミングで、セフィロスの後方からジェネシスコピーが襲いかかって来た。
 コピーはレイピアをふりあげて斬りつけて来る。コピーは勝ち誇ったような表情だが、セフィロスは素早く携帯電話を仕舞ったその手でファイガを放ち、コピーを一瞬で焼き尽くした。

「ふん。所詮コピーはコピーか」

 その後も次から次へと現れる敵を、顔色一つ変えずに刀で薙ぎ払い続けた。
 人よりも背の高いセフィロスの身の丈ほどもある刀は、通常の刀の3倍近く長い。セフィロスはその刀で、一振り毎に複数のモンスターを一度に斬る。動きや動線に一切の無駄がなく、力の乗せ刀も上手い。時折駆使する魔法も完成されている。息を乱すことも、返り血を浴びる事も滅多とないさまは、芸術的なほど鮮やかで美しかった。

 辺りのモンスターたちを一掃すると、セフィロスは刀に着いた血糊を払った。納刀すると、それまでピリピリとしていたセフィロスの雰囲気がほんの少し和らぐ。その瞬間、息を呑むような声がセフィロスの耳に届いた。

「すご……い」

 セフィロスが振り返ると、少し離れたところにオリビアがいた。セフィロスと、彼の周りで星に還ろうとしているモンスター達に、オリビアは目を見張るばかりだった。
 オリビアも、セフィロスが英雄として名を馳せていることは知っていた。だが、これまでセフィロスの戦い方を見た事はなく、今ひとつピンと来ていなかったのだ。
 だが、軍神さながらの姿を見せらつけられると感動するしかない。セフィロスは見目も良く、ただ立っているだけでも様になる。それがさらに実力も伴うのだから、たとえ本人が迷惑がっても神羅が英雄に仕立て上げたくなったのも今なら分かる気がした。

「オリビア。何をぼうっとしている」

 オリビアはセフィロスの声ではっとした。急に現世に呼び戻されたような感覚を覚えると、セフィロスがじっと自分を見ていることに気づいた。

「ううん。強いな、と思って」

 オリビアは手にしていた銃を納めるとセフィロスに歩み寄る。

「ここは片付いたわね」
「ああ、もう大丈夫だろう」

 オリビアはツォンに電話をかけ始めた。現状報告と、次に向かうエリアを相談しようとしている。だが、セフィロスはオリビアが携帯電話を耳元に当てる前に横からひょいとつまみ上げた。

「何するの? 返して! 」

 オリビアは驚いてすぐに手を伸ばしたが、手足の長い長身のセフィロスから取り返せるはずがない。オリビアはセフィロスによじ登ってやろうかとも思ったが、そうこうする間にツォンに電話が繋がってしまった。

「オリビア、そちらの様子はどうだ 」

 ツォンは応答するが、電話をかけて来たはずのオリビアの声がやたらと遠い。さらに、彼女は返せだのよこせと騒いでいて、まともな通話が成立しない。
 ツォンはオリビアの身に何かあったのだろうかと、少し焦ったような声で彼女に返答を求めた。

「オリビア? 何があった? 」
「……ツォンだな? 大丈夫だ。しばらくオリビアを借りるぞ」
「……は? 」

 セフィロスなのかと問うツォンを完全に無視して、セフィロスは電話を切った。

「ちょっと! 勝手に切らないでよ! 」
「伍番魔晄炉に行くぞ」

 セフィロスはそれだけ言うとオリビアをひょいと片手で肩に担いだ。また大騒ぎしながら暴れるオリビアに取り上げた携帯電話を返すと、今度は自分の物を取り出してザックスを呼び出し始めた。

2020/05/29
ゲームでの進行とはちょっと違いますが、ヒロインがいる都合上便宜を図った……という言い訳。


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