1. 在りし日
いつものようにやりたい放題。目的はテランスの代わりに殿下に愛でて頂くこと。そして毎度の事ながら捏造だらけ。いろいろとご注意。
見渡す限りの花畑に、ほうっとため息をついた。青い空に青々とした木々、そして真っ白に咲き誇る飛竜草。いくら眺めても飽きることはない。
10年近く来ていなかったこの場所へ、兄と共にやって来た。数日後には新兵として出仕することが決まっている兄と、久しぶりの遠乗りだ。弁当まで拵えて、ひたすらチョコボを走らせて来た。
目の前に広がるこの景色は、わたしたち兄妹にとって大切な思い出の場所でもあった。何年ぶりに訪れても変わらないこの丘の風景に、わたしはとある人へと想いを馳せた。
神皇宮の中で数少ない同年代の子供として、第一皇子様の遊び相手にと呼んで頂いた事が幾度かあった。あの頃は三人とも幼く、初めはそれなりに身分を気にしていたものの、一度打ち解けてしまえばないのも同然だった。無論、子供同士の時のみではあったが。
三人で駆け回り、転がり、枝を見つけては英雄ごっこをした。花を摘んで花輪を作っていると、殿下に作り方を請われて教えた事もあった。すっかり仲良くなったので、その後もお城へ頻繁に招待頂いたものだ。
しかしそれも今は昔。あれは夢か幻かだったのかもしれないと思うほど、何もかもが変わってしまった。
「エリン、エリン──聞いているのか」
ハッとして振り向くと、兄が私を呼んでいた。少しむっとした顔がこちらを見ている。
「あら、ごめんね。テランス兄さん。昔の事を思い出していて」
「ああ、何度かここで遊んで頂いたな。懐かしい」
すうっと風が吹いた。束ねた黒い髪が靡く。少し丈の足りないドレスの裾が、ふわりと浮いた。
「ディオン様は、わたし達を覚えておいでかしら。もしかしたら、またお会いできるかもね、兄さん」
「どうだろうな。今でもエリンと間違えられるだろうか。それより、ディオン様とお会いするには、まずは出世しないといけないなあ」
そう言って、兄は困ったように笑った。
私たちは昔から顔がよく似ていて、殿下にも、お付きの方にもよく間違えられたものだ。成長によってもっと性差が目立つかと思った。だが未だ成長途中のわたしたちは、今でも時折り間違われることがある。
「さあ、日が暮れる前に帰るぞ」
美しい風景をもう一度目に焼き付けて、わたしたちはこの丘を後にした。
翌日、兄は屋根に登った。出仕の前に、屋根の雨漏りの修理をしておきたいと張り切っていた。しばらく家には帰れないだろうから、と。
本当ならば、大工を雇えば良い。けれど我が家の家計では難しい。食べるのにやっとで、着る物すら同じものを繕いながら丈が合わなくなっても何年も着ているくらいだ。他の事へかけるお金の余裕はない。そう、わたし達はいわゆる没落貴族である。
お城へ出入りしていた頃、両親はそれなりの地位にあったのだろう。幼かったのでよく覚えていないが、そうでないと殿下の遊び相手には選ばれなかったはずだ。
しかし父は戦へ出て帰らず、残された母は病な倒れた。そのうちに城に呼ばれることもなくなり、お金も足りなくなった。数少ない親戚から援助を得てここまで生きてこられたが、厄介者扱いをされているのは言うまでもない。
そんな折、兄の入隊が決まった。これで生活は楽になるだろうと喜んだ。代わりに、親戚からは職を得たのならばと援助の打ち切りを言い渡された。長い間世話になった事に感謝を伝えに、先日兄と挨拶に行ったところだった。
兵隊の給金は決して悪くない。新兵に過剰な期待はできないとはいえ、親戚に何かとお伺いを立てなくても良くなる分だけでも、きっとこれまでよりは楽になる。そう信じていた。
兄があらかた作業を終えた頃だろうか。そろそろ兄のために水でも用意しようと台所へ立った。手よりも少し大きいサイズのクリスタルを手に、グラスへ水を注ぐ。氷の魔法も併せて使うと、ちょうどよく冷えるのだ。その時、外で恐怖に満ちた悲鳴と、ドスンと大きな嫌な音がした。
何やら胸騒ぎがする。慌てるあまり、注いだばかりの水を倒した事にも落ちたグラスが割れた事にも気づかなかった。
扉を開けると兄が倒れていた。とても生きているとは思えない姿で、土の上に横たわっている。足元にはじわじわと血溜まりが広がっている。兄はついさっきまで元気だったのに、とても信じられなかった。
わたしはヘナヘナと腰を抜かして、しばらくその場から動けなかった。
2023/07/09
4がまだ終わってないというのに始めてしまった。わたし別にBLとか特に好きなわけではないけど、ディオン様が素敵すぎてテランスとディオンは永遠に推せる。好き。というわけでやってしまった!
たぶんテランスは普通に貴族のご子息でこんなことにはなってないと思うけど、夢として無理やりヒロインを捩じ込むにあたり他に思いつかなかった。すでに無茶苦茶。
FF-D D+S New!夢物語
- 1 -
start * next
しおりを挟む
MODORU