2. 嚆矢
兄の葬儀はごく質素なものだった。もともと親戚も少なければ知り合いもあまりいない。きちんと弔えて見送れれば十分である。
親戚たちはあからさまに狼狽えていた。打ち切れたはずの援助がまた必要になるからだ。親戚達だって、決して大富豪ではない。気持ちはわかる分、いたたまれなかった。
葬儀を終えるまでの記憶が乏しく、わたしはいつのまにか家に戻っていた。余りにも目まぐるしすぎたせいだ。自分が空っぽの器にでもなったような気分だった。
葬儀を終えた晩、わたしは兄の衣装箪笥を開けた。真新しい軍服が、一番取り出しやすい所にしまってある。本当なら明日兄はこれを着て軍へ入り、神皇猊下にお仕えするはずだった。
目を瞑ると兄の顔が蘇る。入隊が決まった時は誇らしげに笑っていた。殿下にまた会えるように出世しなければと言っていたのは、つい最近の事ではなかったか。
ふと壁にかけられた鏡を覗いた。虚な自分の顔が映っている。よく兄と間違えられたこの顔が、今はとにかく悲しい。兄がそこにいるようで、その実それは自分なのだから。
鏡を見ながら、軍服を自分の肩と合わせてみた。兄がそれを着ていたら、もう少し逞しく見えただろうか。
そこでふと考えた。兄は入隊式を楽しみにしていた。せめてもの供養に、わたしがこれを着て代わりに出よう、と。後は適当にトンズラしておけば良い。兄はもういないのだから。
そうと決まれば、わたしはすぐに支度を始めた。まずはこの髪だ。まとめていた髪おろし、兄の短髪を真似てバッサリ切った。鏡を見ながら整えると、自分のと同じくらい見慣れた顔が現れた。軍服を取り出して衣装掛けに広げ、手頃なブーツを探し出す。
明日は早く起きなければ。そう思ったら、意外なほど早く寝付く事ができた。
明くる朝、わたしは神妙な気持ちで兄の軍服に袖を通した。如何にも上等な生地が肌を滑るのが心地よい。これから大それた事をする緊張感と、久しく行くことの無かった場所へ行く高揚感とで手が震える。
愛チョコボに跨り、わたしはいよいよ神皇宮へと出立した。
2023/07/10
ここまででも既にやりたい放題。
公式の2人の馴れ初めはいつ出るんや。出ないなら今のうちに作っちゃうもんね!なんて。
FF-D D+S New!夢物語
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