18 何とか言えよ
「で、セリスはどうしたっつってんだよ。あ゙ぁ? 」
セッツァーは怒りに任せてロックの胸倉をつかみ上げた。そのままロックを壁に押し付けると、その衝撃で壁から落ちた埃が辺りを舞っている。
ロックは黙ってセッツァーから目を逸らし、何も話さない。
追ってきた帝国軍を退け、一行はゾゾへ向かっていた。
ゾゾへ行くまでの間、セッツァーにこれまでのいきさつを話すことになり、順を追って説明していた。先ほどまでの魔導研究所のことやティナのこと、そしてリターナーについてだ。
セッツァーは飛空挺を操りながら仲間の話に耳を傾けていた。しかし、セリスの離脱の話にさしかかると、彼も黙ってはいられなかった。操縦をエドガーに押し付け、ロックにつ詰め寄っているところである。
「ハッ。黙りかよ。あれだけ俺が守る守ると五月蝿かったってのによ! コソ泥の上に詐欺師とは見上げたもんだな! 」
「……なんだと! 」
それまでじっと黙っていたロックだったが、彼も反撃に出た。拳を握りしめ、セッツァーの顎を狙う。
殴り合いになり互いに一発ずつ入れた所で、マッシュが割って入った。
「おい、お前たち。いい加減にしないか。仲間割れは止めてくれ。それに、エルがびっくりしているぞ」
2人がエルを見やると、丸い目をぱちくりさせていた彼女と目が合った。お互いに気まずさからそっと目を逸らす。
「……セリスはどうした」
セッツァーはロックから手を離し、鋭い視線を男たちに送りつける。
「私が話そう」
エドガーが名乗りを上げ、ベクタでの事を語り始めた。
魔導研究所に潜入し、そこでシドという研究者に会った。彼はセリスを古くから知る者の1人だ。エルが会いたいと思っていたのもこの人物である。
シドは、セリスがリターナーに潜入し、新しい部下を連れて帰って来たと思ったと言った。そして、そこに現れたケフカはセリスをリターナーへのスパイとして扱い、裏切り者と呼んだ。
セリスは当惑し否定した。だが、疑いの空気は一瞬で広がり、ロックは彼女に疑いの言葉をかけてしまう。
ケフカの出現により、一行は逃げ場を失った。だが、セリスはテレポという移動魔法を唱えて、ケフカと共に姿を消した。「これでわたしを信じて……」という言葉を残して。
セリスの機転で何とか脱出に成功し今に至る、と言うことだった。
「テレポですって? 何て危ないことを……! 」
「何だって? 」
エルが叫び声を上げると、他の者の視線が全て彼女に集まった。
「すごく危険な魔法よ。1つ間違えると、次元の狭間に迷い込んで戻れなくなることだってあるの! 攻撃への応用もされているくらいなんだから! 」
エルは拳を握りしめて、唇を噛んだ。ロックはそれまでよりも一層悲痛な表情をし、壁にうなだれた。
「そんな……! セリス……」
「セリスもケフカも魔法には長けているから、まず大丈夫だとは思うけど……」
全員をぐるりと見渡し、エルは続ける。
「セリスは命を賭けたのよ。信じてあげて」
エルは最後に、もう一度ロックを見た。
ロックは酷く険しい顔をして、歯を食いしばっている。深い後悔に苛まれているかのような顔だった。
「……すまない……俺は……。セリス……」
ロックが小さく呟くと、セッツァーは大きく舌打ちをしする。重苦しい雰囲気に耐えかねて、マッシュが溜め息ついた。
エルがちらりとエドガーを見上げると、彼は優しく、困ったように微笑む。そして、その大きな手を、ポンとエルの頭に置いた。
ゾゾに着くまで、誰も口を開かなかった。
セッツァーは黙々と、黙って飛空挺を操縦する。その足元で、黒魔導師の服を着た小さなウサギがムグムクと口を動かしながらセッツァーを見上げていた。
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